見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし、リベンジ果たして成りあがる

腰尾マモル

文字の大きさ
上 下
252 / 459

【第252話】不愛想とお節介

しおりを挟む


 グラドから紹介されたシルフィとディザールは薪割り用の斧を地面に置くとそれぞれ自己紹介を始めた。

「はじめまして、私はシルフィと言います。ペッコ村には同年代の女の子が少なくて外から来る人も少ないので仲よくしてくれたら嬉しいです。よろしくお願いします」

「僕の名はディザールだ……話す事は特にない、魔獣討伐の際には足を引っ張るなよ」

 愛想の良いシルフィとは対照的にディザールの挨拶は不愛想で刺々しかった。二人は見た目も対照的で花をあしらったオレンジ色の明るいワンピースを着たシルフィは垂れ目を一層垂らした笑顔で周りを朗らかにしてくれる可愛らしい女の子だ。

 一方のディザールは灰色と焦げ茶色の布がツギハギに縫われたボロボロのローブに身を包み、髪も整えてはおらずボサボサだ。そして顔立ちは中性的でありながらもどこか鋭さと雄々しさがあり、簡単に心を開いてくれなさそうな警戒心も感じる。

 そんな攻撃的にすら見える態度を取るディザールだったが、何故かリーファやシリウスの方を見て話そうとはしなかった。もしかしたらシャイなだけなのかもしれない。

 ディザールの事が気になってずっと見つめていた俺はこの時謎の既視感を覚えていた。異様にざわつく自分の胸に戸惑っていると、記憶の水晶が突然点滅を始めて、映像が一時的に止まってしまった。

 一体どういう事だ? と困惑していると記憶の水晶から突然煙のようなものが溢れ出し、煙は少しずつ色が付き、人の形へと固まり、やがて煙は二十代ぐらいまで歳を重ねたシルフィへと変貌を遂げる。

 煙から生まれたシルフィは魔術師のローブを着ていて、顔立ちは過去と変わらず村娘っぽさを内包した温和そうな感じだが、表情は少し悲しそうで何かを抱えているように見える。

 そして煙のシルフィは止まった映像の中を歩き出して過去のシルフィの横に立ち、この現象についての説明を始める。

「もしかしたら私の事を知らない人も見ているかもしれないので自己紹介をさせてください。煙となって現れた私の名はシルフィ。スキルであり物体でもある記憶の水晶を生成した者です。ここからは煙人けむりびとである私が補足を入れながら自身の過去を伝えていきたいと思います。煙である私はあくまで映像に合わせて自動で喋るだけなので受け答えは出来ません。細かい質問などがあれば水晶を手渡したフィアさんに聞いてもらえたらと思います」

 記憶の水晶にこんな機能まで備わっているとは驚きだ。本当に記憶の保存に特化した作りなんだなぁ、と感心するばかりだ。

 それから煙人けむりびとは水晶に人差し指を向けると水晶は再び点滅を始め、映像を再開した。

 グラドは「はぁ……」とため息を吐くと、ディザールの肩にポンと手を当て、リーファ達に謝り出した。

「リーファ、シリウス、うちのディザールが失礼な態度をとって申し訳ない。でも根は悪い奴じゃないから仲よくしてやってほしい。それに魔術に関しては本当に優秀な奴なんだ、きっと魔獣退治でも役に立つからさ」

 グラドのフォローを受けて、リーファとシリウスは互いの目を見て頷き合うと積極的にディザールへ声を掛け始める。

「私も昔はシャイなところがあったからディザールさんの気持ちが分かるよ。見ての通り私は超が付くほど善良な人間だから気楽に接してね、シリウスはちょっと気難しそうな顔をしているけど、ちゃんと優しい人だから安心してね」

「誰が気難しい顔だって? 僕が気難しいんじゃなくてリーファがアホっぽいだけだろ? まぁリーファはこんな奴だが優秀な神官として名も通っているし、僕もそれなりに剣術・魔術ともに腕に覚えがある、よろしく頼むよディザール」

 リーファとシリウスは息の合った小言を言い合うと、シリウスがディザールに握手を求めた。しかし、ディザールは握手をするでも断るでもなく、ディザールを見つめていた。

 何だかディザールの行動が読めない。リーファもシリウスも映像を見ている俺達も固まっていると、グラドがディザールの行動について説明を始めた。

「あぁ、すまない説明していなかったな。ディザールは目が見えないんだ。と言っても全く見えない訳ではなくてぼんやりとした視界が広がっているらしいから、人が目の前に立っているかどうかの判別は出来るらしい。だから細かい動きや物の位置は視覚を除く五感と魔力の波動で感知しているから日常生活は段々と一人でこなせるようになってきたんだ」

 グラドの説明を聞いた瞬間に俺はディザールに抱いた既視感の正体に気付いた。それと同時に何故か映像は停止してしまった。

 俺は再び煙人が映像を止めたのかと視線を向けると、止めたのは煙人ではなくフィアだった。フィアは水晶から指を離すと神妙な面持ちで俺を見つめながら問いかける。

「ガラルドさん……もしかしてディザールの正体に気付かれましたか?」

「ああ、顔立ちが幼くて声も若いから最初は気が付けなかったが五感と魔力の波動で物を見るという言葉からピンときたよ。ディザールの正体は……アスタロトだな?」

「やはり気づかれましたか。そうです、アスタロトは五英雄ディザールなのです」

 まだ気がついていなかったグラッジやシンは声を詰まらせて驚いていた。だが、驚くのも無理はない、五英雄だった人間が今は大陸の脅威となっているだけでも驚きだし、色々と説明のつかない点が多いからだ。

 フィアは俺が抱いている疑問を先読みすると、ディザールについて語ってくれた。

「映像の中の若きディザールがアスタロトだという事実に皆さん困惑していると思います。何故ディザールが悪に染まったのか、現代では老人になっているはずのアスタロトの仮面の下は何故あんなにも若々しいのか、そして何故アスタロトは緋色の魔力を持つガラルドさんと魔人ザキールを息子に持つのか、その全てはシルフィの記憶が語ってくれます。もう少しだけお付き合いください」

 そう言ってフィアは再び水晶に触れて映像を再開する。映像の中のリーファとシリウスはグラドの説明を受けた後、ディザールの右手をリーファが、左手をシリウスが握り、強引に握手を交わした。

 リーファは今のリリスと全く変わらない笑顔でディザールに言葉を贈る。

「事情は分かったよ。今日からディザールさん達三人は私の大切な仲間であり兄弟だと思って一緒に頑張るね。そして、私は妹フィアちゃんの心臓を治すのと同じようにディザールの目も治せるよう精一杯調べてみるよ。だから一緒に頑張ろうね、ディザール!」

「ぼ、僕は昔から自分の目が治るなんて期待はしていない。余計なお世話だ!」

「余計なお世話で結構! 私が仲間の力になりたいと勝手に動くだけだから気にしないで!」

 元気に言い切るリーファに対しクールなディザールも流石にたじろいでいた。今と全く変わらないリリスの姿がそこにはあった。






=======あとがき=======

読んでいただきありがとうございました。

少しでも面白いと思って頂けたら【お気に入り】ボタンから登録して頂けると嬉しいです。

甘口・辛口問わずコメントも作品を続けていくモチベーションになりますので気軽に書いてもらえると嬉しいです

==================
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~

川嶋マサヒロ
ファンタジー
 ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。  かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。  それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。  現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。  引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。  あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。  そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。 イラストは ジュエルセイバーFREE 様です。 URL:http://www.jewel-s.jp/

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

処理中です...