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【第253話】白銀章

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※別サイトでアップしていた話数もストックが尽きたのでこれからは一日二話投稿から一日一話投稿となります。早い更新を望まれていた方はごめんなさい。今後も【追放者集めの女神】をよろしくおねがいします。


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 ペッコ村のグラドの家に集まった後の五英雄はギテシンを採取しに行くまでの27日間で随分と仲良くなっていた。

 シリウスは最初こそ「グラドはガサツな男だし、ディザールは陰気な奴だ」と愚痴っていたが、互いの強さや心根を理解していく事で徐々に小言が言い合えるぐらいに仲良くなった。

 リーファとシルフィは元々フレンドリーな性格をしているリーファが積極的にシルフィに話しかけたおかげで直ぐに親友レベルまで仲良くなっていた。どうやらこの頃のシルフィは中々の人見知りだったらしく、友達はグラドとディザールぐらいしかいなかったようで、初めて出来た同性の友達にとても喜んでいた。

 どのタイミングか分からないが、いつの間にか五人全員が仲間の事を『さん付け』で呼ばなくなっていて、控えめな性格のシルフィですら『リーファちゃん、シリウス君』と呼ぶぐらいに親しくなっていた。

 そして魔獣退治ではとんでもない強さで敵を蹴散らしていくグラドに尊敬の眼差しを向けるリーファの姿があった。

 リーファはグラドにとても懐いており、グラドに向ける視線がどことなく俺に向ける視線と似ているような気がして何だか嬉しいような切ないような複雑な気分になった。

 一方ディザールはグラド程ではないもののかなりの強さを誇っており特に魔術の腕に秀でていて、五人の中で二番目に魔獣を多く退治していた。

 口数の少ないディザールだったが、それでもリーファにだけはよく話しかけていて心を開いている様に思える。それどころか魔獣の撃破数でグラドと張り合おうとする姿も見せていて、アスタロトの過去だというのに妙に可愛げがあるようにすら思える。

 俺は鈍い男だから色恋なんてさっぱり分からないが、そんな俺でもどことなくディザールはリーファに惹かれているように見えるし、一方でリーファはグラドに惹かれているように見えた。

 そんな姿を見つめる俺の胸はズキズキと痛んでいた、改めて自分のリリスに対する気持ちの膨れ具合に驚かされる……。記憶の水晶にこの想い出を投影したのはシルフィなのか、それともリリスなのだろうか? そんなことを考えるだけでも胸が苦しくなる……自分の矮小さに少し嫌気がさしてくる。



 色々な事を考えている内に映像の中の時間も流れ、気がつけばギテシンが採取できる満月の日まで後二日というところまできていた。

 ペッコ村の村長の予想を遥かに上回るペースで魔獣退治を進めていた五人はその日の夜に村長から広場へ呼び出される。村長の指示に従い五人は広場を尋ねると、そこには村中の人間が集まっていた。

 困惑する五人を前に村長は謎の金属プレートを二つ取り出すと、村人全員に聞こえるような大きな声で話を始めた。

「遠き北方の地から訪ねてくれたリーファ殿とシリウス殿のおかげで近隣で暴れまわっていた危険な魔獣を多く討伐する事ができた。そして、外部から来た二人に刺激を受けたグラド、ディザール、シルフィは戦士として目覚ましい進歩を遂げた。よって五人の栄誉を称えると共にディザールとシルフィにはグラドと同様に白銀章はくぎんしょうを与える!」

 すると村長は手に持っていた金属のプレートをディザールとシルフィに渡した。この白銀章はくぎんしょうについて詳しく知りたくなった俺は早速フィアに尋ねると、彼女は事細かく教えてくれた。

白銀章はくぎんしょうはペッコ村を含む近隣の村や町で使える守り人もりびとのランクを証明する証ですね。大陸北で言うところのスターランクやバードランクに近いですが、階級は7つしかありません。その中でも白銀章はくぎんしょうは最高ランクに属しますね。そして守り人もりびとは魔獣退治専門のハンターみたいなものだと思ってください」

 そんな栄誉ある白銀章はくぎんしょうを貰えただなんて、俺が村人なら手が疲れるぐらい拍手してあげたいところだ。それにしても白銀章はくぎんしょうを既に持っていたグラドはやはり相当な戦士のようだ。

 記憶の水晶が映し出すグラドの戦闘風景だけでも相当な手練れだというのが見て取れる、まだグラドは全力を出していないだろうが、そんなグラドにすら今の俺とグラッジで敵うかどうか分からないほどに強い。

 そう考えると死の山でザキールと戦った時のグラドは相当老いて力を失っていたのだろう、ましてや病気で余命僅かな状態だったのだから尚更だ。

 白銀章はくぎんしょうを貰ったシルフィは飛び跳ねて喜んでいた。いつもクールなディザールですら今までに見せた事のない程に口角を上げた笑顔を浮かべている。そして、そんな二人を見つめるグラドは温かい笑顔を浮かべながら目を潤ませていた。

 村人も彼らの躍進を称え、小さな宴も開かれた。称えられる二人、特にディザールは目のほとんど見えない状態で白銀章はくぎんしょうを授与したこととなり、長い白銀章はくぎんしょう授与の歴史の中で唯一の盲目の戦士と称えられることとなった。

 今、目の前で起きているのは過去の宴なのだが、現代を生きる俺達もいつしか拍手を贈っていた。

 このままずっと5人の楽しかった過去を見続けられればいいなぁと思っていたが、そうはいかなかった。宴を終えたあたりで煙人のシルフィが一度映像を停止した。そしてこれから起きる事件について話し始める。

「村人から白銀章はくぎんしょう授与を称えられた二人でしたが、それを良しと思わない村人もいました。それは彼らと同じく守り人もりびとをしていた一部の村の若者でした。ここから流れる映像は私の記憶とディザールから聞いた話を混ぜ合わせたものなので一部不鮮明な映像もあります、それを踏まえてご覧ください」

 俺達に注意を促すと煙人のシルフィは映像を再開する。

 宴の主役として引っ張りだこだった5人は村人が宴の片づけをしている間もずっと色々な人に話しかけられていた。村長が「そろそろ五人を解放してやれ」と言ってくれたことでようやく家に帰れるようになり、五人は各々の家や寝泊まりする場所へと帰っていった。

 そして事件は帰宅途中に始まった。シルフィがディザールを丘の上にある家まで送ると、玄関の取っ手に1枚の紙が貼ってあったのだ。紙には文字だけではなくディザールでも読めるようにわざわざ点字も刻まれていた。



――――白銀章はくぎんしょうを得たからっていい気になるなよ。いくらディザールの魔術が凄くても陰気で目の見えないお前なんかが俺達の上に立つ資格なんてない。絶対にお前を認めない――――



 短いながらも醜い嫉妬が詰まりに詰まった手紙だった。名を明かさない点や陰気で目の見えないと貶している点も汚い人間性を表している。

 折角宴を楽しく終える事が出来たというのに一気に二人の気分は沈んでしまう。シルフィは何も言葉を掛けられず黙って俯く事しかできず、ディザールは手紙を思いっきり握りつぶしていた。


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