見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし、リベンジ果たして成りあがる

腰尾マモル

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【第251話】若かりし頃の英雄

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 千年樹の洞窟近くにある海岸から上陸した過去のシリウスとリリス改めリーファ達はそのままイグノーラの方へ歩いて行った。

 映像で再生される数十年前のイグノーラはどんな街なのだろうかと楽しみにしながら眺めていると、過去のイグノーラは現代に比べて城壁が低くて薄く、街の雰囲気も穏やかな場所だった。

 これまでにイグノーラはザキールを除けば二回魔人に襲撃されている筈だが、この頃はまだ攻められてはいないはずだから平和だったのだろう。その事もあってか、リーファとシリウスはイグノーラで一泊すると、翌日すぐに街を出て南の方へ歩いて行った。

 そこから記憶の水晶が映し出す映像がスキップし、リーファ達は俺が見た事のない林道を歩いていた。一体どの辺りを歩いているのだろうかと考えていたその時、何かを思い出したグラッジがリリスに質問を投げかける。

「この辺りの林道は若干見覚えがあります! 恐らくカリギュラの北西にある森林地帯だと思うのですが、合ってますかリリスさん?」

「はい、正解です。ここをもう少し西に進むと森に囲まれたペッコという村がありまして、ちょうどその辺りに私の求めていたギテシンが生えているんです」

「なるほど、それでイグノーラでもほとんど休まずに最短ルートでペッコ村を訪れたんですね。あれ? でもこの辺りに村なんてありましたっけ? 今の時代では草木が生えていただけのような……」

「ちょっと私には現代の土地勘がないので分からないです、ごめんなさい」

「こちらこそ変な事を言ってすいません。もしかしたらグラドお爺ちゃんの魔獣寄せの影響で移民したのかもしれないですね、だとしたら心苦しいですが……。あの時代は特に移民や村・町の統合が多かったらしいですからね。あ、それよりも見てください! 過去のリリスさんとシリウスさんが村に到着しましたよ!」

 グラッジに促されて視線を向けると、そこにはこじんまりとした村があった。どこにでもある何の変哲もない村に見えるが、ここにフィアの病気を治す植物があると思うと、それだけで凄い場所に見えてくる。

 リーファとシリウスは一直線に村の中心にある村長の家を尋ねると、挨拶もそこそこに早速リーファがギテシンの場所を村長に尋ねる。

「――――という訳で私の妹の為にどうしてもギテシンが欲しいのです。譲っていただけないでしょうか?」

「ふむ、人命に関わるのなら断る訳にもいくまい、ギテシンの場所を教えてやるから採ってくるがいい。ただし、一つ交換条件がある。腕の立ちそうな貴方達に近辺の洞窟に住み着いた魔獣を掃討してほしいのじゃ」

「魔獣退治ですか……強さと規模を教えてもらってもいいですか?」

「オークロード級に強い魔獣が三十匹以上いて、それよりも格下の魔獣も合わせれば千匹以上いるじゃろうな。とは言っても全てを倒してくれとは言わぬ、27日間で倒せるだけ倒してくれればそれでいい」

「え? 27日間という数字はどこから出てきたんですか?」

「ああ、説明を忘れていたな。ギテシンは満月の夜にのみ成長し、手で触れられるのも満月の夜だけでな。この地の土から離れたら数時間もすると腐ってしまうのじゃ。故に次の満月で蕾から花を咲かせたギテシンを採取したら薬として煎じるタイミングまで凍らせて保存しておいてくれ」

「なるほど、食材と同じで凍らせて腐敗を止めるのですね。家に帰るまでしっかり凍らせ続けないと……それでは早速ギテシンの場所と周辺の地理を教えて頂けますか?」

「ギテシンの場所も洞窟の場所も、向かいの家にいるグラドという青年から教えてもらってくれ。それと狩りに行く際はグラドも連れて行ってくだされ、村で一番腕の立つ剣士ですからきっと貴方達の助けになるでしょう」

 村長からとんでもない名前が飛び出した。まさかここがグラドの故郷だったとは。映像の中のリーファは村長に礼を言うと早速、向かいにあるグラドの家を尋ねた。



「すいませ~ん、グラドさんはいらっしゃいますか?」

 若かりし頃のグラドが見られるのは楽しみだなぁとワクワクしていた俺だったが、リーファが扉をノックしても返事が返ってこない。

「あれ? グラドさんって人は留守なのかな?」

 リーファが首を傾げて呟いていると、家の裏側から若い男の声が聞こえてきた。

「よーし、二人とも上出来だ。薪割りはコツさえつかめば簡単だろ?」

 どうやら男は誰かと喋りながら薪割りをしているようだ、リーファが声に導かれて家の裏側に回ると、そこには裏庭で会話をする三人の男女がいた。リーファは早速三人に声を掛ける。

「すいません、村長さんの紹介でグラドさんという方を訪ねてきたのですけど、いらっしゃいますか?」

「ん? 俺がグラドだが何かようか?」

 三人の中で一際逞しい男が明るい笑顔で答えた。この場には他にもう一人男がいたものの、俺には返事を聞く前に逞しい彼がグラドだと分かった。何故なら顔がグラッジやグラハムとかなり似ていたからだ。

 グラッジやグラハムよりも少し切れ長な目をしており肌は色黒で、筋肉質なうえに短髪だから二人よりワイルドな印象だ。強く血縁を感じさせる容姿にグラッジの祖父グラドは本当に実在したんだなぁと映像を見て感慨深くなった。

 リーファは早速村長と話し合った経緯を丁寧に伝えていた。その間サーシャとリリスは黄色い声で騒いでいた。

「わぁ~! グラドさんってかっこよかったんだね! 流石は五英雄、サーシャびっくりだよ」

「久しぶりに若い頃のグラドさんを見ましたけどやっぱりかっこいいですね! 当時の私も妹みたいに懐いていたなぁ~と思い出が蘇ってきます。それにグラッジさんとグラハムさんに似ていて品もありますし」

 リリスの言い方だと『グラドがカッコいい=グラッジ・グラハムもカッコいい』になってしまうからグラッジとグラハムは少し照れていた。そして、間接的にグラッジを褒める事になったサーシャは慌てて「ち、違うの! グラッジ君に見惚れてる訳じゃ……」と否定していた。

 慌てて否定したら自白しているようなものだと思うのだが……グラッジとサーシャの間に何とも言えない甘酸っぱい空気が流れている、リリスはとんでもない爆弾を落としていったようだ。この輪に全く介入できていない俺はほんのちょっとだけ寂しかったのは内緒だ……。

 そんなやりとりをしている間に映像の中のリーファは説明を終えていた。すると、グラドは後ろにいる男と女の間に立って、彼らの紹介を始める。

「リーファの望みはよく分かった、喜んで手伝わせてもらうぜ。その為にはまず俺の仲間も紹介しておかなくちゃな。こっちの女性が村の優秀な治癒術師シルフィ、そしてそっちの男がディザールだ。どっちも頼りがいのある俺の大切な友達だ、仲よくしてやってくれ!」

 この村にグラドがいるだけでも驚きだったのに、まさか他の五英雄でもあるシルフィとディザールまで村の住人だとは思わなかった。いつの間にか五英雄の全員が一つの場所に集まっていた事になる訳だ。

 もっとも彼らはまだ英雄と呼ばれる存在にはなっていないのだが。


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