96 / 459
【第96話】謎めいた強さ
しおりを挟む活力岩の町エナジーストーン。そこの門番を名乗る二人の男に来訪の理由を尋ねられた。門番はそれぞれ背の高い鎧の男と背の低い鎧の男がいて、両者とも槍を持ち、体格も良く目つきも鋭い。
しかし、強面ではあるものの排他的な雰囲気は感じない、あくまで門番として気合が入っているだけのようだ、俺は自分達の身分と旅の理由を答えた。
「俺達はシンバード領のドライアドという街から来た者だ。死の海を渡りイグノーラへ行きたいと思っている。その下準備を進める為に南方まで足を伸ばした。町に入れてもらっても構わないかな?」
背の高い門番が指を額に当てて、思い出すように呟く。
「ほほう、シンバードか、確か大陸の北方で勢力を拡大している新生国だったな。我が町エナジーストーンは基本的に他国の人間を拒むことはないからお前達を通してやりたいところだが……お前達が本当にシンバードの人間だと証明できるか?」
証明を求めてくるあたり何かを警戒している様に見える。とりあえず俺は商店や貿易をする際に使用する木製の身分証明手形を見せることにした。
「この手形でいいかな?」
今度は背の低い方の門番が唸りながら呟く。
「う~む……木製の手形なんて幾らでも偽造が出来るからな、我々は何が何でも帝国の人間だけは通すわけにはいかぬのだ」
「帝国に何かされたのか?」
「まだ信用できていないお前達に帝国を通さない理由まで話すわけにはいかないな」
「だったらどうやって証明すればいいんだ?」
「そうだな、証明したければ厄介な帝国の兵器を使用せず、なおかつ帝国の武術も使わずに我々と手合わせをしろ。先頭にいる体格の良い短髪の男、お前が一人で戦うんだ。見たところかなりの手練れだろ?」
門番はいきなり物騒なことを言い始めた。シンとの戦いといい、ドライアドで模擬試合を吹っかけてきたレックといい、どうして俺はバトル脳に絡まれる事が多いのだろうか。
今まで行った村や町のほとんどで何かしら戦闘をしている気がする……。正直少しめんどくさい。
とはいえ手合わせをするしか道はなさそうだ。俺の事を見て手練れだと言ってくれるのはありがたい話だが、一目で力量を見極められるような奴は決まって強者だ。
そんな奴らを二人も相手にするなんて考えただけで嫌になるけれど、俺は渋々了承の返事をする。
「分かった、気乗りはしないが証明する為だ、やらせてもらうよ、それでどっちが先に俺の相手をするんだ?」
俺が問いかけると二人の門番はゆっくりと近づいてきて、同時に槍を構えた。そして、二人は声を揃えて答える。
――――二人同時だ!――――
まるで双子のように完璧に声を揃えた二人は一斉に俺へ槍を突きだしてきた。交差する刺撃をバックステップで避けた俺は、慌ててサンド・ストームを展開する。
旋回する魔砂の量を少なめにして、外が確認できるようにしておいたものの、二人は追撃をしてくる様子はなく、防御重視で身構えている。初めて見るスキルだからこそ、警戒して深追いをさけたようだ、中々できる奴らだ。
そんな相手ならそれなりに強い攻撃を加えても大怪我はしないだろう、そう判断した俺はサンド・ストームの中で足裏に魔力を集中させた、サンド・ステップで距離を詰める為だ。
とにかく優先すべきことは片方を素早く潰して数的不利をなくすことだ。
「サンド・ステップ!」
俺はサンド・ストームを解除したと同時に背の低い門番に向かって一気に距離を詰め、瞬時に左側面へ回り込んだ。
「なっ!」
一瞬で距離を詰められた背の低い門番は驚きの声をあげ反応も遅れた。攻撃のチャンスだ! 俺は拳に回転砂を纏わせ、背の低い門番の横腹へ叩き込んだ。
「吹き飛べ、サンド・インパクト!」
俺の拳に砂と鎧の感触が響き渡る、クリーンヒットだ。
「グヘェァッ!」
うめき声をあげた背の低い門番は勢いよくゴロゴロと転がっていった。痛い思いをさせて申し訳ないが、鎧の上から殴ったから大丈夫だと思いたい。
とにかくこれで一対一の状況を作り出す事ができたはずだ。今度は背の高い門番の方に構えた俺だったが、背の高い門番は不敵に笑っている。
「フッフッフ」
背の高い門番は一人でも勝てる自信があるぐらい強いのだろうか? 余裕そうな表情が気になった俺は背の高い門番に尋ねた。
「随分と余裕がありそうだな、一人でも勝つ自信があるのかい?」
「いや、そういう訳ではないさ、私一人なら確実に勝てないだろうね、そう、一人ならね」
背の高い門番が意味深に呟くと、それと同時に倒れていた背の低い門番が勢いよく起き上がった、どう見ても彼は元気そうだ。
多少は手加減したものの、ここまでダメージがないのは想定外だ。相当苦しそうな呻き声をあげていた点からも確実に戦闘不能に出来たと思ったのだが。
背の低い門番は鎧についた土汚れを手で払ったあと、俺を見ながら生唾を飲み込み呟いた。
「この男やっぱり相当な手練れだぜ兄貴、おまけに見た事のない砂のスキルまで使いやがる。互いにフォローし合える距離で戦わないとやられちまうぜ」
「そうだな、とにかく二対一を崩されないようにするのが重要だ。特に砂使いの彼はコメットサークル領での戦いに慣れていないはずだから、その点を突いていかなければな」
コメットサークル領での戦いに慣れる? 不思議な物言いをする背の高い門番もとい兄貴の真意が気になるところだが、さっぱり分からないし聞いたところで敵に答えは教えてくれないだろう。
とにかく今は兄弟門番のうちの片方をやっつけることに集中するべきだろう。俺は棍を握りしめ、再び背丈の低い弟の方へ攻撃を仕掛けた。しかし、兄貴の方がすかさずフォローに入り中々決定打を与えられない。
その後も門番兄弟は交互に俺を攻撃することで体力を節約しながら、じわじわと俺にダメージを与えてきた。俺が片方にダメージを与えて吹き飛ばしても、直ぐにもう片方が盾になり短時間で体力を回復させて戦線に復帰してくるという流れが続いた。
さっきのバトルウルフといい、この土地の生き物は耐久力と回復力が増加する薬でも服用しているのだろうかと疑いたくなるぐらいタフである。このままではキリがないどころか俺のスタミナ切れで負けかねない。
俺は門番には申し訳ないが火力を上げることにした、きっと彼等なら大怪我はしないだろう。深く呼吸をした俺は緋色の魔力を解放した。
「すまんが、ギアを上げさせてもらうぞ……緋纏!」
俺の身体から緋色のオーラが迸ると、危険を感じた門番兄弟が後ろへ跳んで距離を取った。しかし、戦いを止めるつもりはないようだ。
互いに武器を構え直し、どちらが先に攻めるか伺っていると、俺達の間に聞いたことのない大声が飛び込んできた。
「そこまでだ! お前達、武器をおろせ!」
大声のした方を振り向くと、入口詰所の屋根の上に浅黒い肌をした恰幅のいい男が立っていた。男はわざとらしく「とうっ!」と掛け声をあげて屋根から飛び降り、前宙しながら俺達の前に着地した。
魔獣も門番も謎の男も全員暑苦しいというか何というか、ここはそういう土地柄なのだろうか? 今度はどんなことを言われるのだろうか……長旅と戦闘の影響もあり少しだけ溜息が漏れた。
=======あとがき=======
読んでいただきありがとうございました。
少しでも面白いと思って頂けたら【お気に入り】ボタンから登録して頂けると嬉しいです。
甘口・辛口問わずコメントも作品を続けていくモチベーションになりますので気軽に書いてもらえると嬉しいです
==================
0
あなたにおすすめの小説
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる