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3. 農園編
世界設定紹介
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■世界
ルピアクロワ
この世界全体の名称。
太陽は基本的に南から北に動き、人間の他に様々な異種族がおり、それらと共に生きる魔物がおり、ルピア三大神を崇めながら生活する、剣と魔法の異世界。
地球のある世界とはそもそも別の階層にあり、世界の成り立ちからして全く異なる歴史と発展を遂げてきた。
生命の存在する惑星は世界の中でもいくつかあるらしいが、宇宙開発の技術が全く存在しないため、世界の住民は自分が済んでいる惑星の名前さえも知らない。
ルピア三神教という、自然、太陽、水を司る三神を崇める宗教が全世界的に広まっており、人間魔物の境を越えて広く信仰されている。
国家間の戦争は長らく発生していないが、魔王は複数体存在しており、悪種の魔物による人々への攻撃はあらゆる地域で発生している。
ルピア三大神
大地や植物を司る自然神カーン、炎や太陽を司る火神インゲ、水や海を司る水神シューラを一括りに呼称したもの。
ルピアクロワに数多存在する神々のまとめ役であり、信仰対象。
伴神という配下の神々を従えるほか、人間種の中に加護を与えて使徒や巫女を生み出し、自らの意思を代弁させる役割を負わせる。
使徒
ルピア三大神の意思の代弁者。人間種の中で最も神に近く、神の力を振るうことを許された者。
胸元に強い加護を受けていることを表す紋様を持って生まれてくる。
同じ時代に複数人の使徒が存在することは起こり得るが、一つの国には一人しか使徒は生まれない。
使徒は生まれてから力に目覚めるまでの間こそ普通の人間や魔物と同じように生活するが、力に目覚めてからは国内に点在する「聖域」に居を移し、神力を体内に汲み入れながら生活することになる。
自分が属する神の眷族や、その神を信仰する魔物相手であれば、ルピア語のままでも相手に自分の意思を伝えることが出来る。
また、神に近いというその性質から神力を自ら生み出すことも出来、使徒だけが扱える神術がいくつか存在する。
土地の神力調整の任を負う他、人間と魔物の橋渡し役を担う役目を任され、三大神の教会から仕事を依頼されることもあり、何気に忙しい役割。
職業は概ね調教士、融合士、探査士に高い適性を持つ。
巫女
ルピア三大神とその使徒に仕える者。
古来からの血脈として連綿と受け継がれており、その血は様々な国、土地に広がっている。その血脈に連なる者で、使徒の神力に最も相性が良いものが、使徒の誕生の際に巫女として選出される。
基本的に使徒に対して異性のものが選出され、ゆくゆくは使徒との間に子を成し、巫女の血脈を受け継いでいくことが望まれる。
神々と直接やり取りを行う役目を負うため、神術や神々の仕組みに精通する者が多い。
神獣
ルピア三大神に連なる者の中で、使徒に次いで高い位置にいる存在。
非常に長命で強力な神術を行使出来る力を持ち、使徒が戦う力を持たない場合に剣となり、盾となる役目を持つ。
殆どの個体がルピア語と自分が属する種族の言葉をすらすらと操れる。
それ故に個体数は非常に少なく、存在は伝説として扱われ、使徒一人につきいずれかの神獣が一体いればいい方と言われている。
使徒、巫女、神獣や精霊が一堂に会した時、その土地には膨大な神力が注がれ、大いに栄えると言われている。
長命である故に様々な神術に精通しているケースが多く、神力の出力は総じて多い。
神獣人
神獣と人間種や人間型の魔物が、混ざり合って生まれた存在。
人間と神獣の間に生まれることもあるが、数は非常に少ない。
対外的には神獣と同様の存在として扱われ、神獣扱いされることも多い。
人間種
人間族、獣人族、妖精族、鳥人族、竜人族、魚人族、魔人族を総称して指す言葉。
この世界における「人間」は人間種に属する全ての種族を指す。
共通してルピア語(人間語とも呼ばれる)を話す。
寿命はいずれの種族も80年~100年。
魔人族
人間と魔物の間に生まれた混血種。
かつては人間ではなく魔物として扱われていたが、近年になって人権が認められ、人間として扱われるようになってきた。
外見は人間族に近いものから獣人族や竜人族そのものにしか見えない者まで様々。
動物
人間種以外の生物の中で、世界に満ちる魔力に適性を持つことなく、ルピア三大神に対して信仰心を抱いていない生物の総称。
魔物と混じるようにして山林や河川や海、草原などで暮らしているが、大型の猛獣であっても魔物に捕食されることがしばしば。
融合士と融合を行うこともあり、感覚強化や身体能力向上に優れる。
動物の言葉と魔物の言葉には微妙に違いがあり、魔物の扱う言葉は動物には理解が出来ないし、動物の言葉も魔物には通じない。
魔物
人間種以外の生物の中で、世界に満ちる魔力に適性を持って魔法を扱え、ルピア三大神のいずれかに対して明確な信仰を持つ生物の総称。
寿命は種族によって様々だが、短いものは5年~10年、長いものは1000年近くを生きる。
獣種、海種、竜種に大別される。
人間種と一緒になって生活するものも多く、基本的には人間種に対して友好的だが、縄張り意識が強いために人間と衝突することもしばしばある。
人間種が魔法や呪いの力で存在を変質させたり、動物が魔力適性を得て力を持ったりした場合も、魔物に分類される。
明確に人間種と敵対している悪種を魔物のカテゴリに含めるか含めないかは、長年議論が分かれている。
獣種
魔物の中でも特に動物の特徴を強く現したもの。ベスティア語(獣種語とも呼ばれる)を話し、自然神カーンを信仰する。
大地に根差した生活を行うものが多く、人間種との関わりが特に強い。
食性は肉食が多いが雑食、草食のものもおり、特徴を有した動物の性質に左右される。
寿命は短いものが多いが、使徒や神獣との混血種は100年ほどを生きることもある。
海種
魔物の中でも特に水生生物の特徴を強く現したもの。フーシ語(海種語とも呼ばれる)を話し、水神シューラを信仰する。
海や川で生活しており、あまり人間種との関わりは多くないが、漁師など海や川に根差した生活を送る者とはよく交流している。
寿命は獣種よりも短い傾向がある。
竜種
魔物の中でも特に爬虫類や竜の特徴を強く現したもの。ラガルト語(竜種語とも呼ばれる)を話し、火神インゲを信仰する。
火山や洞窟など、山岳地帯に生息していることが多い。縄張り意識が特に強く、自身の領域に許可なく踏み込んだものに怒りを見せることも多くある。
その殆どが肉食だが、僅かに草食の竜種もいる。
平均寿命が200年程度と格段に長いのも特徴。
悪種
上記の魔物のカテゴリに入らないが、魔力への高い適性を有する存在の総称。
ルピア三大神を信仰しておらず、邪神を信仰しているものが殆ど。そのためルピアクロワの生物と明確に敵対している。
地上、水中、空中とあらゆるところにあらゆる姿の悪種が生息している。
人間と魔物の最大の敵、魔王もここのカテゴリに含まれる。
■単位など
メテ/メテロ/メテリア/メテオール
ルピアクロワでの長さの単位。
1メテ=30センチメートル。
1メテロ=10メテ=3メートル。
1メテリア=100メテロ=300メートル。
1メテオール=100メテリア=30キロメートル。
ジグ/ジガー/ジャーグ
ルピアクロワでの時間の単位。
ルピアクロワでは1ジャーグが1時間で、一日は16時間(地球で1600分)なので、一日が地球の一日よりも少々長い。
1ジグ=1分。
1ジガー=10ジグ=10分。
1ジャーグ=10ジガー=100分。
ガル/ガルム
ルピアクロワでの重さの単位。
1ガル=1グラム。
1ガルム=1000ガル=1キログラム。
ティス/ウアス/メス/ムート
ルピアクロワでの日付の単位。
この世界では1年は13ヶ月(390日)なので、一日が地球より長いことも相俟って一年が長い。
ルピアクロワでは全世界的に、三大神の信仰が始まった年を元年とするルピア暦という暦が採用されており、現在は1382年。
一週間は6日で、それぞれ火の日、水の日、風の日、大地の日、闇の日、光の日と曜日が分かれる。光の日が安息日。
1ティス=16ジャーグ=1日。
1ウアス=6ティス=1週間。
1メス=5ウアス=30日=1ヶ月。
1ムート=13メス=390日=1年。
■国家・都市
ラコルデール王国
マリエール大陸の西方に位置し、西の国境をルフェーブル海に接し、北の国境をバルバストル山脈に接した豊かな草原と山河が広がる国家。
世界中を見ても特筆すべき程度に人間と魔物が共存して生きており、魔物にも生存・生活の権利がしっかりと保証されていることで有名な国家。
「魔物への罪は魔物によって贖うべし」という、他の国家では類を見ない「魔物法」と呼ばれる法律が、市民の生活に深く根付いている。
現在の治世は第81代国王エドガール6世のもと、情勢は非常に安定している。
主要産業は農業と漁業、織物業。特に小麦と青魚、羊織物の生産が盛ん。
王都ウジェにはルピア三大神の三神全ての聖堂を擁するウジェ大聖堂があるほか、勇者の一人マルセル・ドラクロワが校長を務め、手厚い教育で大陸にその名を轟かせるドラクロワ冒険者養成学校が存在する。
代表的な地方としては国内南部に位置するヴァンド領、ヴァンド領の南部に広がるユボー領、王都ウジェの北部の海沿いに広がるエナン領、エナン領と接し山間部に広がるオダン領が挙げられる。
交易都市ヴァンド
ラコルデール王国の南部に位置するヴァンド領の領都でもある交易都市。
エリクの生家であるダヴィド家は、この都市の東のはずれに牧場を持つ羊飼い。
主要産業は酪農と羊織物の生産。特に羊織物は「ヴァンド織」として名高く、王国の主たる輸出品になっている。
市民の6歳から12歳までの子供が無料で通える無料学校があり、読み書き計算と簡単な魔法の指導を行っている。
都市の東側には森林が広がっており、森の中心部は教会によりカーン神の聖域に指定されている。
ヴァンド森の屋敷
ラコルデール王国内部に点在する聖域の一つ。
ヴァンド森中心部の丸い泉と繋がっており、現実世界から一段高い次元の世界に存在する、正しい意味での聖域。
内部には広大な庭園を持つ石造りの大きな屋敷が建っており、聖域の守護者として選別された、巫女の血脈に連なる者が管理している。
現在はルドウィグ、リュシールの二名の守護者の他、下働きのエクトル、パトリス、アンセルム、フェルナンと、エリクの伴魔のイヴァノエ、ルドウィグの伴魔のピーノ、カスト、ボーナが暮らしている。
また、ルスランとインナはヴァンド森内の聖域に住んでおり、頻繁に屋敷を訪れている。
王都ウジェ
ラコルデール王国の中央南部の平原地帯に作られた城塞都市。
王城を中心にして放射線状に広がる街道が特徴的で、マリエール大陸西方地域の代表的な大都市として有名。
王都の周辺に広がる草原地帯は王国の直轄地に指定されており、街道を除いて一般市民の立ち入りを禁ずる結界が張られているため、内部は都市近傍にもかかわらず獣種の魔物の楽園になっている。
ミオレーツ山
エナン領の南端に位置する、標高450メートルの山。
国立ドラクロワ冒険者養成学校の所有する土地で、生徒たちの実習の場として使われる。
起伏に富み、自然豊かな山の中は動物の他、学園から委託を受けた魔人族が管理者兼魔物の群れの長となって、生息する魔物を統率しながら暮らしている。
山の西側は大イタチやイタチ人が、山の東側は狼や狼人が暮らしており、互いに領土拡大のために小競り合いを繰り返している。
いずれの魔物もかなり文明的な暮らしを営んでおり、東側の狼の村は井戸を掘るなどして水源を確保しており、小麦や野菜の栽培も行っている。そのためミオレーツ山に棲む狼は雑食性。
チボー村
オダン領の東側に位置する村。村民は60名ほど。
ドニエ火山の麓に広がっており、半年前にドニエ火山が噴火を起こした際には建物や畑が被害を受け、土地の神力が乱れたために教会に助けを求めた。
小麦と牛肉の名産地として知られており、広大な小麦畑とたくさんの牛が飼われた牧場が広がっている。
■魔法・技能・その他用語
魔法
ルピアクロワの魔法は、魔法名を唱えることで発動させるもの。
全ての魔法において火、水、風、大地、光、闇のいずれかの属性が一つ割り当てられており、生活に密着した子供でも扱える簡単な魔法から、世界全体で使い手が僅かしかいない大魔法まで、全ての魔法が一つの属性を持つ。
火種を起こす「火よ熾れ」、清浄な飲み水を生み出す「清水よ来たれ」、気温や湿度を調節して風通しを良くする「風よ場を清めよ」は、冒険者の基礎技能として誰もが使えるように教育されている。
魔法は空気中に充満している魔力を体内に取り込み、体内で属性の方向性を持たせて魔法名と共に放出することで発動する。この属性の方向性決定の傾向には個人差があり、魔物の場合は種族によって傾向に共通点があることが多い。
この放出の際に使う出口が大きければ大きいほど、強力な魔法を発動させることが出来る。出口は魔法の鍛錬を重ねることで少しずつ広がっていき、また微細な調整もしやすくなる。
また、動物と魔物の区別は、魔法を発動することが出来るかどうかが大きな基準として知られている。
神術
ルピア三大神をはじめとして、神々が体内で生み出し世界に広げる力・神力を用いて発動させる術。
魔法と同様にその権能は攻撃、回復、治療、能力増強、呪いと多岐に渡るが、魔法とは根本的に発動原理が異なる。神術にも六つの属性が割り当てられている。
大規模な神術になると地面に「神術円」と呼ばれる魔法陣を描いて発動させる必要があり、その魔法陣によって大地に根差す神力が活性化するため、大規模神術を行使した後の土地は非常に豊かな土地になる。
転移陣
水属性神術の一つ。
特定の陣を描いた地点二つを一瞬で行き来する神術。物体の転移も可能。
どんな長距離でも移動できるが、事前に陣を描かないと移動できないこと、陣を描く際に「清水を湛えた真円」が必要なこと、神術の素養が無いと転移を発動させられないことが難点。
また、ヴァンド森の聖域や屋敷など一般の人や獣の立ち入りが禁じられている場所については、関係者以外は転移できないように制限されている。
陣を描ける場所は人工的な泉や噴水などが多いが、盥や皿などに陣を描いて水を張って置いておくだけでも陣として機能するため、エリクは陣を描いたスープ皿を所持しており、いざという時に転移陣を作れるようにしている。
現在エリクが転移を行えるのは、ヴァンド森の聖域、ヴァンド森の屋敷、エリクの実家、ドラクロワ冒険者養成学校の前庭、ミオレーツ山の東の村の五ヶ所。
呪術
呪術士が扱う特殊な魔術。
植物や鉱物などを原料にした染料を使って体表に紋様を描き、それによって様々な効果を発生させる。
事前に紋様を描く必要があることから柔軟な運用が出来ないのが難点だが、その分強力な効果を発揮するものが多い。
厄呪
神や邪神が扱う、他者に苦痛を与えることに重点を置いた呪術。
呪術士の扱う呪術とは比較にならないほど強力で、使徒を含め複数人で解呪神術を行使しないと解呪が難しい上、解呪が成功しても厄呪を剥がした際に呪われた者の器が一緒に剥がされる危険性があることから、神々の間でも禁忌の術とされている。
特に使徒に対して厄呪をかけることは、最大の禁忌と位置付けられる。
月輪狼は200年近く昔に邪神の戯れによって夜闇の呪いを施され、3年前まで呪いが休眠状態にあったのが突如活性化し、エリクが使徒の力に目覚めたのを察知して大陸中央部のアルドワン王国からラコルデール王国まで、長い旅をして解呪にやってきた。
融合
魔物や動物と心を通わせ、互いの肉体の境界を重ね合わせて相手の肉体と魂を取り込み、混ぜ合わせる技術。
肉体と魂を取り込んだ後は取り込んだ魔物や動物の特性・能力を獲得し、自分の好きなタイミングでその姿に変身し、力を行使することが出来るようになる。
これをより先鋭化させ、様々な魔物と自身を融合させて魔物の能力を冒険に活用したり、魔物が繁殖する手助けをしたり、互いに言葉が通じない人間と魔物の仲立ちをする職業が融合士である。
融合士になる為には三大神の強い加護を受けている必要があり、加護を受けていたとしても魔物の魂に引きずられて魔物になってしまう(これを魔物堕ちという)危険性があるため、魔物が身近に存在しているラコルデール王国であっても、その職業を選択する人数は多くない。
エリクは使徒の能力の一環として、戦闘で実力を見せつけるか魔物との性行為に及ぶかのいずれか、という融合のプロセスを大幅に簡略化し、触れ合って心を通わせるだけで融合を行うことが出来る。
伴魔
調教士が連れている魔物の総称。
人間と魔物の間に結ばれる「共伴契約」という、生死を共にし、互いに力を貸し合うことを誓った契約に従って行動ならびに寝食を共にする魔物を、人間に随伴する魔物ということでそのように呼称する。
共伴契約は人間と魔物、それぞれの器に対して結ばれるため、万が一魂が変質したとしても、器に別の生物が混ざりこんだとしても、契約が有効のままであるという利点がある。
調教士は自身が契約を結んだ伴魔について、冒険者ギルドに届け出る義務があるが、届け出を行えば該当する伴魔もEランク冒険者相当の権利を持てるようになるため、街中である程度自由な行動が取れるようになる。
調教士と伴魔が結婚して家族になるということも、ラコルデール王国の中では大して珍しいものではない。
祈り
ルピア三神教で信徒に義務付けられている、神に感謝を捧げる所作。
起床後、食事前、就寝前の祈りが義務付けられているほか、正午に行う中天の祈り、森や山や教会に立ち入る際に行う入門の祈りが教会から推奨されている。
祈りの形は両手を胸の前で組み、瞳を閉じて拳に額を当てるもの。その姿勢で祈りの文句を口に出して唱えるか、黙読する。
食事前の祈りは家長や村長、領主など、その場を収めるトップの人間が行うこと、とされている。
三大神全てに祈りを捧げる三神式と、三大神のいずれか一柱のみに祈りを捧げる一神式の二種類があり、人間種は主に三神式を、魔物は一神式を用いることが多い。
冒険者
国営のギルドに所属して活動する、傭兵やハンターの総称。
SランクからEランクの6段階にグレードが分けられており、低いランクの冒険者は都市周辺での採取依頼や動物退治依頼しか受注できないが、Bランク以上になると国外からの依頼も受注できるようになる。
悪種を相手取るような依頼は、Cランクから受注が可能になる。
その身分は国家が保証し、冒険者ギルドのメンバーカードは公的な証明書として機能するが、ギルド加入の際の条件が緩いこともあり、所属人員の質は玉石混淆。
窃盗や殺人、密猟や立ち入り禁止区域への侵入など、犯罪行為を易々と犯すような無法者も一部所属しているのが事実である。
ラコルデール王国の国営冒険者ギルドは、所属者が触法行為を行った場合の罰則規定が厳しく、国立ドラクロワ冒険者養成学校からの卒業生が多く所属し、また魔物が法律で保護されていることから、比較的規律が取れて緊張感のある気風のギルドとなっているようだ。
国立ドラクロワ冒険者養成学校
ラコルデール王国が直轄して運営する冒険者養成学校の中でも最大規模の冒険者養成機関。設立1255年赤の月。
現在は1350年に成された魔王ヴァウスコラ討伐の主要メンバーの一人で、勇者の称号を持つ、当時魔導士だったマルセル・ドラクロワが校長を務める。
王国内どころか大陸全土から真に才能のある生徒を集めて一年間かけて育成し、卒業できるのは全体の半数にも満たないと言われるほどにハイレベルな教育・指導を施している。
この学校を卒業したという経歴は非常に大きな力を持ち、冒険者ギルドに登録すればEランク免除、騎士団に入隊すれば従騎士待遇、とエリートコースに易々と乗ることが叶う。
大陸で活動するSランク・Aランクの冒険者の八割はドラクロワの出身、とまことしやかに囁かれるほどの名門校である。
それ故に入学試験も非常に難易度が高く、最も門戸が広く開かれている戦士学科ですらも、入学倍率は軽く10倍を超える。
また、国家主導の能力見分で目を見張るほどの優れた能力を持つことが分かった生徒、その他類まれな能力を持つ生徒については、特待生として学費全額免除、学内依頼受注制限撤廃の厚待遇を以て迎え入れる。
エリクは第127期入学生として、融合士学科に特待生として迎え入れられた。
存在する学科は、戦士学科、斥候学科、弓闘士学科、格闘士学科、魔導士学科、治癒士学科、召喚士学科、呪術士学科、調教士学科、融合士学科、調薬士学科、運搬士学科、探査士学科。
ルピアクロワ
この世界全体の名称。
太陽は基本的に南から北に動き、人間の他に様々な異種族がおり、それらと共に生きる魔物がおり、ルピア三大神を崇めながら生活する、剣と魔法の異世界。
地球のある世界とはそもそも別の階層にあり、世界の成り立ちからして全く異なる歴史と発展を遂げてきた。
生命の存在する惑星は世界の中でもいくつかあるらしいが、宇宙開発の技術が全く存在しないため、世界の住民は自分が済んでいる惑星の名前さえも知らない。
ルピア三神教という、自然、太陽、水を司る三神を崇める宗教が全世界的に広まっており、人間魔物の境を越えて広く信仰されている。
国家間の戦争は長らく発生していないが、魔王は複数体存在しており、悪種の魔物による人々への攻撃はあらゆる地域で発生している。
ルピア三大神
大地や植物を司る自然神カーン、炎や太陽を司る火神インゲ、水や海を司る水神シューラを一括りに呼称したもの。
ルピアクロワに数多存在する神々のまとめ役であり、信仰対象。
伴神という配下の神々を従えるほか、人間種の中に加護を与えて使徒や巫女を生み出し、自らの意思を代弁させる役割を負わせる。
使徒
ルピア三大神の意思の代弁者。人間種の中で最も神に近く、神の力を振るうことを許された者。
胸元に強い加護を受けていることを表す紋様を持って生まれてくる。
同じ時代に複数人の使徒が存在することは起こり得るが、一つの国には一人しか使徒は生まれない。
使徒は生まれてから力に目覚めるまでの間こそ普通の人間や魔物と同じように生活するが、力に目覚めてからは国内に点在する「聖域」に居を移し、神力を体内に汲み入れながら生活することになる。
自分が属する神の眷族や、その神を信仰する魔物相手であれば、ルピア語のままでも相手に自分の意思を伝えることが出来る。
また、神に近いというその性質から神力を自ら生み出すことも出来、使徒だけが扱える神術がいくつか存在する。
土地の神力調整の任を負う他、人間と魔物の橋渡し役を担う役目を任され、三大神の教会から仕事を依頼されることもあり、何気に忙しい役割。
職業は概ね調教士、融合士、探査士に高い適性を持つ。
巫女
ルピア三大神とその使徒に仕える者。
古来からの血脈として連綿と受け継がれており、その血は様々な国、土地に広がっている。その血脈に連なる者で、使徒の神力に最も相性が良いものが、使徒の誕生の際に巫女として選出される。
基本的に使徒に対して異性のものが選出され、ゆくゆくは使徒との間に子を成し、巫女の血脈を受け継いでいくことが望まれる。
神々と直接やり取りを行う役目を負うため、神術や神々の仕組みに精通する者が多い。
神獣
ルピア三大神に連なる者の中で、使徒に次いで高い位置にいる存在。
非常に長命で強力な神術を行使出来る力を持ち、使徒が戦う力を持たない場合に剣となり、盾となる役目を持つ。
殆どの個体がルピア語と自分が属する種族の言葉をすらすらと操れる。
それ故に個体数は非常に少なく、存在は伝説として扱われ、使徒一人につきいずれかの神獣が一体いればいい方と言われている。
使徒、巫女、神獣や精霊が一堂に会した時、その土地には膨大な神力が注がれ、大いに栄えると言われている。
長命である故に様々な神術に精通しているケースが多く、神力の出力は総じて多い。
神獣人
神獣と人間種や人間型の魔物が、混ざり合って生まれた存在。
人間と神獣の間に生まれることもあるが、数は非常に少ない。
対外的には神獣と同様の存在として扱われ、神獣扱いされることも多い。
人間種
人間族、獣人族、妖精族、鳥人族、竜人族、魚人族、魔人族を総称して指す言葉。
この世界における「人間」は人間種に属する全ての種族を指す。
共通してルピア語(人間語とも呼ばれる)を話す。
寿命はいずれの種族も80年~100年。
魔人族
人間と魔物の間に生まれた混血種。
かつては人間ではなく魔物として扱われていたが、近年になって人権が認められ、人間として扱われるようになってきた。
外見は人間族に近いものから獣人族や竜人族そのものにしか見えない者まで様々。
動物
人間種以外の生物の中で、世界に満ちる魔力に適性を持つことなく、ルピア三大神に対して信仰心を抱いていない生物の総称。
魔物と混じるようにして山林や河川や海、草原などで暮らしているが、大型の猛獣であっても魔物に捕食されることがしばしば。
融合士と融合を行うこともあり、感覚強化や身体能力向上に優れる。
動物の言葉と魔物の言葉には微妙に違いがあり、魔物の扱う言葉は動物には理解が出来ないし、動物の言葉も魔物には通じない。
魔物
人間種以外の生物の中で、世界に満ちる魔力に適性を持って魔法を扱え、ルピア三大神のいずれかに対して明確な信仰を持つ生物の総称。
寿命は種族によって様々だが、短いものは5年~10年、長いものは1000年近くを生きる。
獣種、海種、竜種に大別される。
人間種と一緒になって生活するものも多く、基本的には人間種に対して友好的だが、縄張り意識が強いために人間と衝突することもしばしばある。
人間種が魔法や呪いの力で存在を変質させたり、動物が魔力適性を得て力を持ったりした場合も、魔物に分類される。
明確に人間種と敵対している悪種を魔物のカテゴリに含めるか含めないかは、長年議論が分かれている。
獣種
魔物の中でも特に動物の特徴を強く現したもの。ベスティア語(獣種語とも呼ばれる)を話し、自然神カーンを信仰する。
大地に根差した生活を行うものが多く、人間種との関わりが特に強い。
食性は肉食が多いが雑食、草食のものもおり、特徴を有した動物の性質に左右される。
寿命は短いものが多いが、使徒や神獣との混血種は100年ほどを生きることもある。
海種
魔物の中でも特に水生生物の特徴を強く現したもの。フーシ語(海種語とも呼ばれる)を話し、水神シューラを信仰する。
海や川で生活しており、あまり人間種との関わりは多くないが、漁師など海や川に根差した生活を送る者とはよく交流している。
寿命は獣種よりも短い傾向がある。
竜種
魔物の中でも特に爬虫類や竜の特徴を強く現したもの。ラガルト語(竜種語とも呼ばれる)を話し、火神インゲを信仰する。
火山や洞窟など、山岳地帯に生息していることが多い。縄張り意識が特に強く、自身の領域に許可なく踏み込んだものに怒りを見せることも多くある。
その殆どが肉食だが、僅かに草食の竜種もいる。
平均寿命が200年程度と格段に長いのも特徴。
悪種
上記の魔物のカテゴリに入らないが、魔力への高い適性を有する存在の総称。
ルピア三大神を信仰しておらず、邪神を信仰しているものが殆ど。そのためルピアクロワの生物と明確に敵対している。
地上、水中、空中とあらゆるところにあらゆる姿の悪種が生息している。
人間と魔物の最大の敵、魔王もここのカテゴリに含まれる。
■単位など
メテ/メテロ/メテリア/メテオール
ルピアクロワでの長さの単位。
1メテ=30センチメートル。
1メテロ=10メテ=3メートル。
1メテリア=100メテロ=300メートル。
1メテオール=100メテリア=30キロメートル。
ジグ/ジガー/ジャーグ
ルピアクロワでの時間の単位。
ルピアクロワでは1ジャーグが1時間で、一日は16時間(地球で1600分)なので、一日が地球の一日よりも少々長い。
1ジグ=1分。
1ジガー=10ジグ=10分。
1ジャーグ=10ジガー=100分。
ガル/ガルム
ルピアクロワでの重さの単位。
1ガル=1グラム。
1ガルム=1000ガル=1キログラム。
ティス/ウアス/メス/ムート
ルピアクロワでの日付の単位。
この世界では1年は13ヶ月(390日)なので、一日が地球より長いことも相俟って一年が長い。
ルピアクロワでは全世界的に、三大神の信仰が始まった年を元年とするルピア暦という暦が採用されており、現在は1382年。
一週間は6日で、それぞれ火の日、水の日、風の日、大地の日、闇の日、光の日と曜日が分かれる。光の日が安息日。
1ティス=16ジャーグ=1日。
1ウアス=6ティス=1週間。
1メス=5ウアス=30日=1ヶ月。
1ムート=13メス=390日=1年。
■国家・都市
ラコルデール王国
マリエール大陸の西方に位置し、西の国境をルフェーブル海に接し、北の国境をバルバストル山脈に接した豊かな草原と山河が広がる国家。
世界中を見ても特筆すべき程度に人間と魔物が共存して生きており、魔物にも生存・生活の権利がしっかりと保証されていることで有名な国家。
「魔物への罪は魔物によって贖うべし」という、他の国家では類を見ない「魔物法」と呼ばれる法律が、市民の生活に深く根付いている。
現在の治世は第81代国王エドガール6世のもと、情勢は非常に安定している。
主要産業は農業と漁業、織物業。特に小麦と青魚、羊織物の生産が盛ん。
王都ウジェにはルピア三大神の三神全ての聖堂を擁するウジェ大聖堂があるほか、勇者の一人マルセル・ドラクロワが校長を務め、手厚い教育で大陸にその名を轟かせるドラクロワ冒険者養成学校が存在する。
代表的な地方としては国内南部に位置するヴァンド領、ヴァンド領の南部に広がるユボー領、王都ウジェの北部の海沿いに広がるエナン領、エナン領と接し山間部に広がるオダン領が挙げられる。
交易都市ヴァンド
ラコルデール王国の南部に位置するヴァンド領の領都でもある交易都市。
エリクの生家であるダヴィド家は、この都市の東のはずれに牧場を持つ羊飼い。
主要産業は酪農と羊織物の生産。特に羊織物は「ヴァンド織」として名高く、王国の主たる輸出品になっている。
市民の6歳から12歳までの子供が無料で通える無料学校があり、読み書き計算と簡単な魔法の指導を行っている。
都市の東側には森林が広がっており、森の中心部は教会によりカーン神の聖域に指定されている。
ヴァンド森の屋敷
ラコルデール王国内部に点在する聖域の一つ。
ヴァンド森中心部の丸い泉と繋がっており、現実世界から一段高い次元の世界に存在する、正しい意味での聖域。
内部には広大な庭園を持つ石造りの大きな屋敷が建っており、聖域の守護者として選別された、巫女の血脈に連なる者が管理している。
現在はルドウィグ、リュシールの二名の守護者の他、下働きのエクトル、パトリス、アンセルム、フェルナンと、エリクの伴魔のイヴァノエ、ルドウィグの伴魔のピーノ、カスト、ボーナが暮らしている。
また、ルスランとインナはヴァンド森内の聖域に住んでおり、頻繁に屋敷を訪れている。
王都ウジェ
ラコルデール王国の中央南部の平原地帯に作られた城塞都市。
王城を中心にして放射線状に広がる街道が特徴的で、マリエール大陸西方地域の代表的な大都市として有名。
王都の周辺に広がる草原地帯は王国の直轄地に指定されており、街道を除いて一般市民の立ち入りを禁ずる結界が張られているため、内部は都市近傍にもかかわらず獣種の魔物の楽園になっている。
ミオレーツ山
エナン領の南端に位置する、標高450メートルの山。
国立ドラクロワ冒険者養成学校の所有する土地で、生徒たちの実習の場として使われる。
起伏に富み、自然豊かな山の中は動物の他、学園から委託を受けた魔人族が管理者兼魔物の群れの長となって、生息する魔物を統率しながら暮らしている。
山の西側は大イタチやイタチ人が、山の東側は狼や狼人が暮らしており、互いに領土拡大のために小競り合いを繰り返している。
いずれの魔物もかなり文明的な暮らしを営んでおり、東側の狼の村は井戸を掘るなどして水源を確保しており、小麦や野菜の栽培も行っている。そのためミオレーツ山に棲む狼は雑食性。
チボー村
オダン領の東側に位置する村。村民は60名ほど。
ドニエ火山の麓に広がっており、半年前にドニエ火山が噴火を起こした際には建物や畑が被害を受け、土地の神力が乱れたために教会に助けを求めた。
小麦と牛肉の名産地として知られており、広大な小麦畑とたくさんの牛が飼われた牧場が広がっている。
■魔法・技能・その他用語
魔法
ルピアクロワの魔法は、魔法名を唱えることで発動させるもの。
全ての魔法において火、水、風、大地、光、闇のいずれかの属性が一つ割り当てられており、生活に密着した子供でも扱える簡単な魔法から、世界全体で使い手が僅かしかいない大魔法まで、全ての魔法が一つの属性を持つ。
火種を起こす「火よ熾れ」、清浄な飲み水を生み出す「清水よ来たれ」、気温や湿度を調節して風通しを良くする「風よ場を清めよ」は、冒険者の基礎技能として誰もが使えるように教育されている。
魔法は空気中に充満している魔力を体内に取り込み、体内で属性の方向性を持たせて魔法名と共に放出することで発動する。この属性の方向性決定の傾向には個人差があり、魔物の場合は種族によって傾向に共通点があることが多い。
この放出の際に使う出口が大きければ大きいほど、強力な魔法を発動させることが出来る。出口は魔法の鍛錬を重ねることで少しずつ広がっていき、また微細な調整もしやすくなる。
また、動物と魔物の区別は、魔法を発動することが出来るかどうかが大きな基準として知られている。
神術
ルピア三大神をはじめとして、神々が体内で生み出し世界に広げる力・神力を用いて発動させる術。
魔法と同様にその権能は攻撃、回復、治療、能力増強、呪いと多岐に渡るが、魔法とは根本的に発動原理が異なる。神術にも六つの属性が割り当てられている。
大規模な神術になると地面に「神術円」と呼ばれる魔法陣を描いて発動させる必要があり、その魔法陣によって大地に根差す神力が活性化するため、大規模神術を行使した後の土地は非常に豊かな土地になる。
転移陣
水属性神術の一つ。
特定の陣を描いた地点二つを一瞬で行き来する神術。物体の転移も可能。
どんな長距離でも移動できるが、事前に陣を描かないと移動できないこと、陣を描く際に「清水を湛えた真円」が必要なこと、神術の素養が無いと転移を発動させられないことが難点。
また、ヴァンド森の聖域や屋敷など一般の人や獣の立ち入りが禁じられている場所については、関係者以外は転移できないように制限されている。
陣を描ける場所は人工的な泉や噴水などが多いが、盥や皿などに陣を描いて水を張って置いておくだけでも陣として機能するため、エリクは陣を描いたスープ皿を所持しており、いざという時に転移陣を作れるようにしている。
現在エリクが転移を行えるのは、ヴァンド森の聖域、ヴァンド森の屋敷、エリクの実家、ドラクロワ冒険者養成学校の前庭、ミオレーツ山の東の村の五ヶ所。
呪術
呪術士が扱う特殊な魔術。
植物や鉱物などを原料にした染料を使って体表に紋様を描き、それによって様々な効果を発生させる。
事前に紋様を描く必要があることから柔軟な運用が出来ないのが難点だが、その分強力な効果を発揮するものが多い。
厄呪
神や邪神が扱う、他者に苦痛を与えることに重点を置いた呪術。
呪術士の扱う呪術とは比較にならないほど強力で、使徒を含め複数人で解呪神術を行使しないと解呪が難しい上、解呪が成功しても厄呪を剥がした際に呪われた者の器が一緒に剥がされる危険性があることから、神々の間でも禁忌の術とされている。
特に使徒に対して厄呪をかけることは、最大の禁忌と位置付けられる。
月輪狼は200年近く昔に邪神の戯れによって夜闇の呪いを施され、3年前まで呪いが休眠状態にあったのが突如活性化し、エリクが使徒の力に目覚めたのを察知して大陸中央部のアルドワン王国からラコルデール王国まで、長い旅をして解呪にやってきた。
融合
魔物や動物と心を通わせ、互いの肉体の境界を重ね合わせて相手の肉体と魂を取り込み、混ぜ合わせる技術。
肉体と魂を取り込んだ後は取り込んだ魔物や動物の特性・能力を獲得し、自分の好きなタイミングでその姿に変身し、力を行使することが出来るようになる。
これをより先鋭化させ、様々な魔物と自身を融合させて魔物の能力を冒険に活用したり、魔物が繁殖する手助けをしたり、互いに言葉が通じない人間と魔物の仲立ちをする職業が融合士である。
融合士になる為には三大神の強い加護を受けている必要があり、加護を受けていたとしても魔物の魂に引きずられて魔物になってしまう(これを魔物堕ちという)危険性があるため、魔物が身近に存在しているラコルデール王国であっても、その職業を選択する人数は多くない。
エリクは使徒の能力の一環として、戦闘で実力を見せつけるか魔物との性行為に及ぶかのいずれか、という融合のプロセスを大幅に簡略化し、触れ合って心を通わせるだけで融合を行うことが出来る。
伴魔
調教士が連れている魔物の総称。
人間と魔物の間に結ばれる「共伴契約」という、生死を共にし、互いに力を貸し合うことを誓った契約に従って行動ならびに寝食を共にする魔物を、人間に随伴する魔物ということでそのように呼称する。
共伴契約は人間と魔物、それぞれの器に対して結ばれるため、万が一魂が変質したとしても、器に別の生物が混ざりこんだとしても、契約が有効のままであるという利点がある。
調教士は自身が契約を結んだ伴魔について、冒険者ギルドに届け出る義務があるが、届け出を行えば該当する伴魔もEランク冒険者相当の権利を持てるようになるため、街中である程度自由な行動が取れるようになる。
調教士と伴魔が結婚して家族になるということも、ラコルデール王国の中では大して珍しいものではない。
祈り
ルピア三神教で信徒に義務付けられている、神に感謝を捧げる所作。
起床後、食事前、就寝前の祈りが義務付けられているほか、正午に行う中天の祈り、森や山や教会に立ち入る際に行う入門の祈りが教会から推奨されている。
祈りの形は両手を胸の前で組み、瞳を閉じて拳に額を当てるもの。その姿勢で祈りの文句を口に出して唱えるか、黙読する。
食事前の祈りは家長や村長、領主など、その場を収めるトップの人間が行うこと、とされている。
三大神全てに祈りを捧げる三神式と、三大神のいずれか一柱のみに祈りを捧げる一神式の二種類があり、人間種は主に三神式を、魔物は一神式を用いることが多い。
冒険者
国営のギルドに所属して活動する、傭兵やハンターの総称。
SランクからEランクの6段階にグレードが分けられており、低いランクの冒険者は都市周辺での採取依頼や動物退治依頼しか受注できないが、Bランク以上になると国外からの依頼も受注できるようになる。
悪種を相手取るような依頼は、Cランクから受注が可能になる。
その身分は国家が保証し、冒険者ギルドのメンバーカードは公的な証明書として機能するが、ギルド加入の際の条件が緩いこともあり、所属人員の質は玉石混淆。
窃盗や殺人、密猟や立ち入り禁止区域への侵入など、犯罪行為を易々と犯すような無法者も一部所属しているのが事実である。
ラコルデール王国の国営冒険者ギルドは、所属者が触法行為を行った場合の罰則規定が厳しく、国立ドラクロワ冒険者養成学校からの卒業生が多く所属し、また魔物が法律で保護されていることから、比較的規律が取れて緊張感のある気風のギルドとなっているようだ。
国立ドラクロワ冒険者養成学校
ラコルデール王国が直轄して運営する冒険者養成学校の中でも最大規模の冒険者養成機関。設立1255年赤の月。
現在は1350年に成された魔王ヴァウスコラ討伐の主要メンバーの一人で、勇者の称号を持つ、当時魔導士だったマルセル・ドラクロワが校長を務める。
王国内どころか大陸全土から真に才能のある生徒を集めて一年間かけて育成し、卒業できるのは全体の半数にも満たないと言われるほどにハイレベルな教育・指導を施している。
この学校を卒業したという経歴は非常に大きな力を持ち、冒険者ギルドに登録すればEランク免除、騎士団に入隊すれば従騎士待遇、とエリートコースに易々と乗ることが叶う。
大陸で活動するSランク・Aランクの冒険者の八割はドラクロワの出身、とまことしやかに囁かれるほどの名門校である。
それ故に入学試験も非常に難易度が高く、最も門戸が広く開かれている戦士学科ですらも、入学倍率は軽く10倍を超える。
また、国家主導の能力見分で目を見張るほどの優れた能力を持つことが分かった生徒、その他類まれな能力を持つ生徒については、特待生として学費全額免除、学内依頼受注制限撤廃の厚待遇を以て迎え入れる。
エリクは第127期入学生として、融合士学科に特待生として迎え入れられた。
存在する学科は、戦士学科、斥候学科、弓闘士学科、格闘士学科、魔導士学科、治癒士学科、召喚士学科、呪術士学科、調教士学科、融合士学科、調薬士学科、運搬士学科、探査士学科。
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