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2. 学校編
押しかけられる神様
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僕のイヴァノエとアリーチオとの関係に変化が訪れたその日、僕を取り巻く環境もそれまでとは大きく変わっていた。
住処が変わった、というのも勿論変化としては大きいのだが、それだけではない。
『エリク様、是非俺の身体を使ってください』
『いやいや使徒様、こんな無頼ではなくこの私めを』
僕の巣穴に次々と、大イタチ達が押し寄せては僕との融合を求めて迫ってくるのだ。
今までウサギ、狼と融合を果たした僕だが、ここまでぐいぐいと魔物の側から迫られたことは無い。力ずくで僕を無理やり押し倒そうとする者まで現れる始末だ。
イヴァノエとアリーチオが二人がかりで防いでくれたが、あの時ばかりはちょっと貞操の危機を感じた。
あんまりにも押せ押せで来る大イタチ達に辟易しながら座り込みつつ、何故かずっと巣穴に居て干し肉を食んでいるトランクィロに、僕は疑念の目を向けた。
「王様、彼らに何を言ったんです?」
「ん? 特別なことは言ってないぞ、この野郎。
使徒エリクを我々の群れに迎え入れるから、融合したい奴は今のうちに挨拶しておけ、って群れ全体に伝えただけだ」
「それでさっきから、こんなに僕のところに押し寄せているんですか!?」
僕は思わず大きな声を上げた。驚愕の表情を隠すことなくその場に立つ。
トランクィロが苦笑しつつ、ひらりと手を挙げた。
「何しろ、自分たちの信仰するカーン神の使徒だからな。あいつらも舞い上がってるのさ。
その使徒の血肉と一つになれるってんなら、そりゃあ我も我もと押し寄せてくるだろ」
「いやそんな……融合したら意識も魂も全部僕に溶け込んでなくなるのに、そんな気軽に来られても……」
まるで新しいご近所さんに挨拶するような感覚で、僕と文字通り一つになりに来る大イタチ達に、僕はがくりと肩を落とした。
あまりのモテモテぶりにアイドルにでもなったような気分だが、相手は魔物。しかも目的は僕の身体だ。危害を加える目的ではないのが救いだけれども、ちょっと勘弁してほしい。
僕の傍で身体を丸めるイヴァノエが、ゆっくりと頭を持ち上げて目を細めた。
『俺達大イタチにとっちゃ、目の前に神様が肉体を持って現れた、ってのと大差ないからな。
その神様に肉体も魂も全部差し出す権利を誰か一人に与えるってなったら、食いついてくる奴が殺到するのも当然だろ?』
「えー……うーん……」
さも当然のように僕を神様扱いして、一切合切差し出すことを名誉なことであるかのように話してくるイヴァノエの言葉に、僕は首を傾げるしかなかった。
しかし、魔物にとっては、こと獣種にとっては、それが当たり前の感覚なのだろう。
地球で例えると……信仰に生きる人の前に天使がやってきて、地上で活動するための肉体としてあなたたちの中から一人選びます、と言うような感覚だろうか。
例えてみたものの、かつて宗教を意識することなく日々を生きてきた僕には、いま一つ実感が掴めなかった。
宗教って難しいなぁ、と他人事のように思いながら首を傾げていると、何やら巣穴の外が騒がしい。
何事か、と表に出ようと僕が立ち上がった瞬間。
『ひゃぁっ!?』
巣穴の入り口から大きな影が悲鳴と共に飛び込んできた。
それはメスの大イタチだった。体長はおよそ1メートル半というところか、イヴァノエよりも少々小さい。それでも四本の脚は太く、しっかりと地面を踏みしめている。
僕は目の前に突然現れたその大イタチを、瞳を大きく見開いて見た。あちらの顔が僕の目の前で、僕と同じようにその茶色の瞳を大きく見開いている。
しばしの間見つめあう形になった僕と彼女。やがてハッと何かに気が付いたように、大イタチは顔を伏せて両手で覆った。耳まで真っ赤になっている。
『あわわわ、神様申し訳ありません! 申し訳ありません!』
「えっ、いや、僕は何も……」
突然、見ず知らずの相手から全身全霊で謝られて、困惑する僕の後ろから、アリーチオの顔がひょこりと覗いた。
『アントニエッタ。君もエリクさんに挨拶に来たっすか?』
『あ、は、はいっ! 神様にご挨拶をと思いまして、伺いました!』
アリーチオの言葉を受けて顔を上げたメスの大イタチ――アントニエッタは、再び僕に向かって頭を下げた。
先程とは違った、礼節を尽くすために下げられたその頭に、僕の頭も自然と下がった。
互いに挨拶をしたところで、僕は後ろのアリーチオを振り返る。
「アリーチオ、彼女と知り合いなのか?」
『まぁそうっすね。そこにいるアニキの、末の妹さんっす』
アリーチオが視線を動かすのに合わせて、僕も同じ方へと視線を移動させた。その先の、寝そべったままだったイヴァノエが、ゆっくりと起き上がる。
『ネッタ、エリクは神様じゃねぇって、俺は説明したはずだろ? 本人の前で恥ずかしいからやめろ、畜生め』
『神様は神様だもん! お兄こそ神様に対して敬意が足りないと思う!』
呆れるような視線を投げかけたイヴァノエに対し、アントニエッタが憤慨しながら尻尾で地面を叩く。
妹の怒りを軽くいなしながら、イヴァノエが僕の方に向き直った。
『エリク、すまねぇな。俺が言うのもなんだが、ネッタは一度こうだと信じ込んだら梃子でも動かないやつでな。
それでいてビビリで引っ込み思案なもんだから……さっきも大方、ここに入ろうか入るまいか迷っていたところを、どいつかに背中を押されたんだろ?』
『うっ……うん……』
そう言ってアントニエッタは顔を伏せた。反論しないところを見るに、事実なのだろう。
するとイヴァノエは傍らに寄っていたトランクィロに顔を向けた。吊られた干し肉を取ろうと身体を伸ばす彼の背を叩いて、耳元に口を近づける。
『親父。ネッタならいいんじゃねぇか、属性的な面で見ても』
『ん? あぁなるほど。
エリクは既に狼とウサギを持っているしな。被らせるよりはその方がいいか』
ひそひそと話をしているようだったが、内容はバッチリ僕の耳にも入っている。アントニエッタの頭を撫でながら、僕は口を開いた。
「その方がいいって、どういうこと?」
『ん……なんだ聞こえていたのか、畜生め。
アントニエッタの属性の話だよ。大地属性だから、風属性の魔物や獣ばかり取り込むよりはいいだろうってな』
「属性が偏ると、その分だけそいつに出来ることが少なくなっちまうからな。
エリクが融合した狼もウサギも風属性だ。ここに大地属性のアントニエッタを加えてバランスを取るのは、悪い話じゃない」
二人の話に、僕はなるほどと頷いた。
確かに僕の中に混ざっている狼もウサギも風属性。更に言うなら今日に僕の所へと押しかけてきた大イタチ達も、ほとんどが風属性だ。
そんな中現れた、大地属性のアントニエッタ。これは僕にとっては、出来ることの幅を広げるチャンスと言えた。
さて、話題の中心になっている本人はというと。彼女の方へ視線を動かすと、目を丸くしてぽかんと口を開いているアントニエッタがそこにいた。
『わ、わ、私が、神様と、ゆ、ゆゆ、融合……!?』
「悪い話じゃないと思うぞ、ネッタ。お前の魔法修行の成果は、エリクがしっかりと継いでくれる」
『エリクは優しくていい奴だからな。怖がる必要はねぇよ』
混乱の色を見せるアントニエッタに、トランクィロとイヴァノエが優しく声をかける。
しかしアントニエッタは、激しく首を左右に振った。
『でっっ、出来ません! 私には、とても!』
「アントニエッタ、嫌だというなら、僕も無理にとは言わないけれど……ダメかな?」
『だ、だって! 神様と行為に及ぶなんて、そんな恐れ多いこと!』
アントニエッタの口走ったその言葉に、今度は僕が口をぽかんと開く側だった。
右後方に頭を動かし、トランクィロに視線を移す。
「王様。アントニエッタに、僕と動物たちの融合の仕方について、説明は……」
「していないな、する必要性もなかったから。アルノーからも、特に何も言われていないしな」
『そういえば、エリクさんが魔物と融合するところ、俺達は見たことなかったっすね』
『ウサギと融合を済ませた後だったしな、俺が接触したのは。あんな小せえの相手にヤったのか、物好きだなと思ったもんだが』
アリーチオもイヴァノエも、今更何を言い出すのかといった風に、随分あっけらかんと答えてみせた。
そうだ、アルノー先生から話を聞いていたではないか。動物や魔物との融合は、戦闘で調伏するか、濃密に身体を寄せ合うかが普通だと。
つまりここにいる皆、いや今日にやってきた大イタチ達も、僕が融合に及んだ動物たちと行為に及んだと、そう思っていたのだ。
しかし実際、僕はそんなことしていない。さらに言うならその方法で融合するための魔法も知らない。
僕が皆にそのことを説明すると、四人とも非常に驚いていた。特にアントニエッタの安堵ぶりがすごかった。
『よ、よかったですぅぅぅぅぅ、神様と行為に及んで純潔を散らすのも本望、とか考えていた自分がバカみたいですぅぅぅぅぅ』
『よかったなネッタ、お前身綺麗なままでエリクと一つになれるぞ』
「魔物や動物と直接的に心を通わせて、そのまま融合するのか……恐ろしいな、使徒の力は」
『エリクさん、12歳でしたっけ? 若いっすよねー、そんな若いうちから変なこと覚えてるんじゃなくて、ホッとしたっすよ』
口々に喜びと驚きと安堵を述べながら、彼らが僕を取り囲む。
その様に僕は、深く深くため息をついたのである。
かくして僕の融合相手にはアントニエッタが選ばれ、僕はその日の夕方、群れの皆に見守られながら彼女と融合を果たした。
すらりと細長い身体と長い尻尾を有し、その太い両足で大地に立つ僕の姿に、イタチも大イタチも大いに歓喜し、僕への歓迎の意を示して、日は山裾に沈んでいくのであった。
住処が変わった、というのも勿論変化としては大きいのだが、それだけではない。
『エリク様、是非俺の身体を使ってください』
『いやいや使徒様、こんな無頼ではなくこの私めを』
僕の巣穴に次々と、大イタチ達が押し寄せては僕との融合を求めて迫ってくるのだ。
今までウサギ、狼と融合を果たした僕だが、ここまでぐいぐいと魔物の側から迫られたことは無い。力ずくで僕を無理やり押し倒そうとする者まで現れる始末だ。
イヴァノエとアリーチオが二人がかりで防いでくれたが、あの時ばかりはちょっと貞操の危機を感じた。
あんまりにも押せ押せで来る大イタチ達に辟易しながら座り込みつつ、何故かずっと巣穴に居て干し肉を食んでいるトランクィロに、僕は疑念の目を向けた。
「王様、彼らに何を言ったんです?」
「ん? 特別なことは言ってないぞ、この野郎。
使徒エリクを我々の群れに迎え入れるから、融合したい奴は今のうちに挨拶しておけ、って群れ全体に伝えただけだ」
「それでさっきから、こんなに僕のところに押し寄せているんですか!?」
僕は思わず大きな声を上げた。驚愕の表情を隠すことなくその場に立つ。
トランクィロが苦笑しつつ、ひらりと手を挙げた。
「何しろ、自分たちの信仰するカーン神の使徒だからな。あいつらも舞い上がってるのさ。
その使徒の血肉と一つになれるってんなら、そりゃあ我も我もと押し寄せてくるだろ」
「いやそんな……融合したら意識も魂も全部僕に溶け込んでなくなるのに、そんな気軽に来られても……」
まるで新しいご近所さんに挨拶するような感覚で、僕と文字通り一つになりに来る大イタチ達に、僕はがくりと肩を落とした。
あまりのモテモテぶりにアイドルにでもなったような気分だが、相手は魔物。しかも目的は僕の身体だ。危害を加える目的ではないのが救いだけれども、ちょっと勘弁してほしい。
僕の傍で身体を丸めるイヴァノエが、ゆっくりと頭を持ち上げて目を細めた。
『俺達大イタチにとっちゃ、目の前に神様が肉体を持って現れた、ってのと大差ないからな。
その神様に肉体も魂も全部差し出す権利を誰か一人に与えるってなったら、食いついてくる奴が殺到するのも当然だろ?』
「えー……うーん……」
さも当然のように僕を神様扱いして、一切合切差し出すことを名誉なことであるかのように話してくるイヴァノエの言葉に、僕は首を傾げるしかなかった。
しかし、魔物にとっては、こと獣種にとっては、それが当たり前の感覚なのだろう。
地球で例えると……信仰に生きる人の前に天使がやってきて、地上で活動するための肉体としてあなたたちの中から一人選びます、と言うような感覚だろうか。
例えてみたものの、かつて宗教を意識することなく日々を生きてきた僕には、いま一つ実感が掴めなかった。
宗教って難しいなぁ、と他人事のように思いながら首を傾げていると、何やら巣穴の外が騒がしい。
何事か、と表に出ようと僕が立ち上がった瞬間。
『ひゃぁっ!?』
巣穴の入り口から大きな影が悲鳴と共に飛び込んできた。
それはメスの大イタチだった。体長はおよそ1メートル半というところか、イヴァノエよりも少々小さい。それでも四本の脚は太く、しっかりと地面を踏みしめている。
僕は目の前に突然現れたその大イタチを、瞳を大きく見開いて見た。あちらの顔が僕の目の前で、僕と同じようにその茶色の瞳を大きく見開いている。
しばしの間見つめあう形になった僕と彼女。やがてハッと何かに気が付いたように、大イタチは顔を伏せて両手で覆った。耳まで真っ赤になっている。
『あわわわ、神様申し訳ありません! 申し訳ありません!』
「えっ、いや、僕は何も……」
突然、見ず知らずの相手から全身全霊で謝られて、困惑する僕の後ろから、アリーチオの顔がひょこりと覗いた。
『アントニエッタ。君もエリクさんに挨拶に来たっすか?』
『あ、は、はいっ! 神様にご挨拶をと思いまして、伺いました!』
アリーチオの言葉を受けて顔を上げたメスの大イタチ――アントニエッタは、再び僕に向かって頭を下げた。
先程とは違った、礼節を尽くすために下げられたその頭に、僕の頭も自然と下がった。
互いに挨拶をしたところで、僕は後ろのアリーチオを振り返る。
「アリーチオ、彼女と知り合いなのか?」
『まぁそうっすね。そこにいるアニキの、末の妹さんっす』
アリーチオが視線を動かすのに合わせて、僕も同じ方へと視線を移動させた。その先の、寝そべったままだったイヴァノエが、ゆっくりと起き上がる。
『ネッタ、エリクは神様じゃねぇって、俺は説明したはずだろ? 本人の前で恥ずかしいからやめろ、畜生め』
『神様は神様だもん! お兄こそ神様に対して敬意が足りないと思う!』
呆れるような視線を投げかけたイヴァノエに対し、アントニエッタが憤慨しながら尻尾で地面を叩く。
妹の怒りを軽くいなしながら、イヴァノエが僕の方に向き直った。
『エリク、すまねぇな。俺が言うのもなんだが、ネッタは一度こうだと信じ込んだら梃子でも動かないやつでな。
それでいてビビリで引っ込み思案なもんだから……さっきも大方、ここに入ろうか入るまいか迷っていたところを、どいつかに背中を押されたんだろ?』
『うっ……うん……』
そう言ってアントニエッタは顔を伏せた。反論しないところを見るに、事実なのだろう。
するとイヴァノエは傍らに寄っていたトランクィロに顔を向けた。吊られた干し肉を取ろうと身体を伸ばす彼の背を叩いて、耳元に口を近づける。
『親父。ネッタならいいんじゃねぇか、属性的な面で見ても』
『ん? あぁなるほど。
エリクは既に狼とウサギを持っているしな。被らせるよりはその方がいいか』
ひそひそと話をしているようだったが、内容はバッチリ僕の耳にも入っている。アントニエッタの頭を撫でながら、僕は口を開いた。
「その方がいいって、どういうこと?」
『ん……なんだ聞こえていたのか、畜生め。
アントニエッタの属性の話だよ。大地属性だから、風属性の魔物や獣ばかり取り込むよりはいいだろうってな』
「属性が偏ると、その分だけそいつに出来ることが少なくなっちまうからな。
エリクが融合した狼もウサギも風属性だ。ここに大地属性のアントニエッタを加えてバランスを取るのは、悪い話じゃない」
二人の話に、僕はなるほどと頷いた。
確かに僕の中に混ざっている狼もウサギも風属性。更に言うなら今日に僕の所へと押しかけてきた大イタチ達も、ほとんどが風属性だ。
そんな中現れた、大地属性のアントニエッタ。これは僕にとっては、出来ることの幅を広げるチャンスと言えた。
さて、話題の中心になっている本人はというと。彼女の方へ視線を動かすと、目を丸くしてぽかんと口を開いているアントニエッタがそこにいた。
『わ、わ、私が、神様と、ゆ、ゆゆ、融合……!?』
「悪い話じゃないと思うぞ、ネッタ。お前の魔法修行の成果は、エリクがしっかりと継いでくれる」
『エリクは優しくていい奴だからな。怖がる必要はねぇよ』
混乱の色を見せるアントニエッタに、トランクィロとイヴァノエが優しく声をかける。
しかしアントニエッタは、激しく首を左右に振った。
『でっっ、出来ません! 私には、とても!』
「アントニエッタ、嫌だというなら、僕も無理にとは言わないけれど……ダメかな?」
『だ、だって! 神様と行為に及ぶなんて、そんな恐れ多いこと!』
アントニエッタの口走ったその言葉に、今度は僕が口をぽかんと開く側だった。
右後方に頭を動かし、トランクィロに視線を移す。
「王様。アントニエッタに、僕と動物たちの融合の仕方について、説明は……」
「していないな、する必要性もなかったから。アルノーからも、特に何も言われていないしな」
『そういえば、エリクさんが魔物と融合するところ、俺達は見たことなかったっすね』
『ウサギと融合を済ませた後だったしな、俺が接触したのは。あんな小せえの相手にヤったのか、物好きだなと思ったもんだが』
アリーチオもイヴァノエも、今更何を言い出すのかといった風に、随分あっけらかんと答えてみせた。
そうだ、アルノー先生から話を聞いていたではないか。動物や魔物との融合は、戦闘で調伏するか、濃密に身体を寄せ合うかが普通だと。
つまりここにいる皆、いや今日にやってきた大イタチ達も、僕が融合に及んだ動物たちと行為に及んだと、そう思っていたのだ。
しかし実際、僕はそんなことしていない。さらに言うならその方法で融合するための魔法も知らない。
僕が皆にそのことを説明すると、四人とも非常に驚いていた。特にアントニエッタの安堵ぶりがすごかった。
『よ、よかったですぅぅぅぅぅ、神様と行為に及んで純潔を散らすのも本望、とか考えていた自分がバカみたいですぅぅぅぅぅ』
『よかったなネッタ、お前身綺麗なままでエリクと一つになれるぞ』
「魔物や動物と直接的に心を通わせて、そのまま融合するのか……恐ろしいな、使徒の力は」
『エリクさん、12歳でしたっけ? 若いっすよねー、そんな若いうちから変なこと覚えてるんじゃなくて、ホッとしたっすよ』
口々に喜びと驚きと安堵を述べながら、彼らが僕を取り囲む。
その様に僕は、深く深くため息をついたのである。
かくして僕の融合相手にはアントニエッタが選ばれ、僕はその日の夕方、群れの皆に見守られながら彼女と融合を果たした。
すらりと細長い身体と長い尻尾を有し、その太い両足で大地に立つ僕の姿に、イタチも大イタチも大いに歓喜し、僕への歓迎の意を示して、日は山裾に沈んでいくのであった。
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