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2. 学校編
サバイバル生活の始まり
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座学の後、僕は転移陣ですぐさま聖域に戻った。
ルドウィグとリュシール、アグネスカにサバイバル生活の課題について話すためだ。
実際、僕はこれまで一人で夜を過ごしたことが今まで一度もない。
そんな状態で1ヶ月も山の中で生活することが、果たして出来るだろうか。
正直言って、あんまり自信はなかった。
「ふむ、使徒殿が山林でサバイバル生活を送るには……そもそも拠点とする場所の確保が最重要ですな」
「エリク、料理は出来ますか? 簡単なものを教えましょうか?」
「生活する上での最低限の魔法も、今のうちに確認しておきましょうか」
ルドウィグが、アグネスカが、リュシールが、口々に僕を心配してくる。
特にアグネスカは幼少期から僕と一緒に居たから、その心配度合いが段違いだ。
僕の両手をグッと握って、心配そうな視線を逸らそうとしない。
「アグネスカ様、エリク様が心配なのは分かります。私も心配ですから。
しかし彼は自然神カーン様の使徒。自然の中でなら自然の側が味方してくれます」
リュシールがアグネスカの肩を後ろから抱きながら、耳元で優しく囁きかける。
それを受けてようやく、アグネスカは僕の手から両手を離した。
握られていた手をゆるりと振って、僕はルドウィグをまっすぐと見た。その上で、質問を投げ掛ける。
「サバイバル生活の最中、動物や魔物の力は借りていいと思う?」
僕の質問に、ルドウィグは大きく頷いた。
「勿論ですな。どんどん力を貸してもらうがよかろう。
使徒殿は動物や魔物と心を通わせることが出来るのだから、食料の確保や寝床の確保、緊急時に備えての警護と、魔物に任せられる事柄は多いはずじゃ。
また、動物以外に植物も力を貸してくれることじゃろう。
どんどん頼れ、それが使徒殿の力になる」
ルドウィグの力強い言葉に、僕の気持ちもだいぶ楽になった。
そうだ、僕が頼れる相手はアグネスカやルドウィグやリュシールだけではない。この世界、この国にある自然そのものが味方と考えれば、これほど心強い状況もない。
そうなれば、あとやるべきことは。
「ルドウィグ、リュシール」
「「はい」」
しっかりと前を見据えた僕に、目を細めて微笑みを返す二人。僕は手をグッと握りしめて口を開いた。
「使徒の能力のちゃんとした使い方を、教えてくれ」
学校では授業を受け、聖域でも授業を受け、3日はあっという間に過ぎていった。
王都ウジェから馬車で30分、僕とアルノー先生はとある山の麓にいた。
「ここがサバイバル授業の会場、ミオレーツ山だ。
危険な魔物はこの近辺には住んではいないが、万一と言うことも起こりうる。
一応俺の目は光らせておくが、なんかどうにもならないことがあったら、すぐに狼煙を上げろ」
アルノー先生が、皮袋を手渡しながら言う。
中を開くと狼煙用の着火材に加え、塩の小瓶と6日分の携帯食料が入っていた。
つまり残りの期間、24日分の食料は、自力で確保しないといけないわけだ。
「獣の生息具合はどうですか?」
「ウサギ、栗鼠、鹿、熊……狼と猪も居たっけな。
そいつらもうまく使えよ。時には味方に、時には食料に。
この山はそんなに高さは無いが、夜は冷え込むからな。蒲団がわりにもなってもらうのもよしだ」
なるほど、と思った。
確かに動物に寄り添ってもらえば夜の寒さも凌げるだろう。アルノー先生が言っていた「ありとあらゆるものを使え」というのは、つまりそういうことなのだ。
「分かりました、頑張ります」
「おう、死ぬなよ」
頷く僕の肩を、アルノー先生は優しく叩いた。
いよいよ、1ヶ月に及ぶサバイバル生活が、幕を開けるのであった。
ルドウィグとリュシール、アグネスカにサバイバル生活の課題について話すためだ。
実際、僕はこれまで一人で夜を過ごしたことが今まで一度もない。
そんな状態で1ヶ月も山の中で生活することが、果たして出来るだろうか。
正直言って、あんまり自信はなかった。
「ふむ、使徒殿が山林でサバイバル生活を送るには……そもそも拠点とする場所の確保が最重要ですな」
「エリク、料理は出来ますか? 簡単なものを教えましょうか?」
「生活する上での最低限の魔法も、今のうちに確認しておきましょうか」
ルドウィグが、アグネスカが、リュシールが、口々に僕を心配してくる。
特にアグネスカは幼少期から僕と一緒に居たから、その心配度合いが段違いだ。
僕の両手をグッと握って、心配そうな視線を逸らそうとしない。
「アグネスカ様、エリク様が心配なのは分かります。私も心配ですから。
しかし彼は自然神カーン様の使徒。自然の中でなら自然の側が味方してくれます」
リュシールがアグネスカの肩を後ろから抱きながら、耳元で優しく囁きかける。
それを受けてようやく、アグネスカは僕の手から両手を離した。
握られていた手をゆるりと振って、僕はルドウィグをまっすぐと見た。その上で、質問を投げ掛ける。
「サバイバル生活の最中、動物や魔物の力は借りていいと思う?」
僕の質問に、ルドウィグは大きく頷いた。
「勿論ですな。どんどん力を貸してもらうがよかろう。
使徒殿は動物や魔物と心を通わせることが出来るのだから、食料の確保や寝床の確保、緊急時に備えての警護と、魔物に任せられる事柄は多いはずじゃ。
また、動物以外に植物も力を貸してくれることじゃろう。
どんどん頼れ、それが使徒殿の力になる」
ルドウィグの力強い言葉に、僕の気持ちもだいぶ楽になった。
そうだ、僕が頼れる相手はアグネスカやルドウィグやリュシールだけではない。この世界、この国にある自然そのものが味方と考えれば、これほど心強い状況もない。
そうなれば、あとやるべきことは。
「ルドウィグ、リュシール」
「「はい」」
しっかりと前を見据えた僕に、目を細めて微笑みを返す二人。僕は手をグッと握りしめて口を開いた。
「使徒の能力のちゃんとした使い方を、教えてくれ」
学校では授業を受け、聖域でも授業を受け、3日はあっという間に過ぎていった。
王都ウジェから馬車で30分、僕とアルノー先生はとある山の麓にいた。
「ここがサバイバル授業の会場、ミオレーツ山だ。
危険な魔物はこの近辺には住んではいないが、万一と言うことも起こりうる。
一応俺の目は光らせておくが、なんかどうにもならないことがあったら、すぐに狼煙を上げろ」
アルノー先生が、皮袋を手渡しながら言う。
中を開くと狼煙用の着火材に加え、塩の小瓶と6日分の携帯食料が入っていた。
つまり残りの期間、24日分の食料は、自力で確保しないといけないわけだ。
「獣の生息具合はどうですか?」
「ウサギ、栗鼠、鹿、熊……狼と猪も居たっけな。
そいつらもうまく使えよ。時には味方に、時には食料に。
この山はそんなに高さは無いが、夜は冷え込むからな。蒲団がわりにもなってもらうのもよしだ」
なるほど、と思った。
確かに動物に寄り添ってもらえば夜の寒さも凌げるだろう。アルノー先生が言っていた「ありとあらゆるものを使え」というのは、つまりそういうことなのだ。
「分かりました、頑張ります」
「おう、死ぬなよ」
頷く僕の肩を、アルノー先生は優しく叩いた。
いよいよ、1ヶ月に及ぶサバイバル生活が、幕を開けるのであった。
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