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一日目

不思議な山小屋⑤

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 今は頭が上手く回らない。
 また抵抗しようとしたところで、この男に言い包められるだけ。恵那は黙って、男の指示に従おうと思えた。
 男について行くように、奥の部屋に入る。
 大きな茶の間に入ると、その空間は一気に様変わりした。
 玄関はおじいちゃんの家のような古さがあったのに、茶の間に入ると、そこにはカフェのようなオシャレな雰囲気が広がっていたのだ。
 部屋中にフローラル系の香りが漂っており、電球はほんのりと薄暗さを残したオレンジ色を使用している。
 まさに、隠れ家的なカフェのような内装だった。

「な、何ですか、ここ」

「何って、見たらわかるだろ? カフェだよ、カフェ」

「そうじゃなくて、どうしてこんな所にカフェなんか」

「うるせぇなぁ。いいから、ここ座っとけ」

 部屋の中央には、たった一つのダイニングテーブルと、木製のチェアが二脚だけある。その片方の椅子に、恵那は座らされた。
 こんなに広い室内に、テーブルが一台だけ。そのテーブルを挟んで、向かい合わせるように、椅子が二脚置かれている。それ以外は特に家具が置かれていないため、何とも殺風景な室内に仕上がっていた。
 椅子に座りながら、部屋中をジロジロと見渡している恵那を横目に、男は対面キッチンの中に入った。
 二人用のダイニングテーブルとは釣り合わないくらい大きなキッチンに、バランスの悪さが浮き彫りになっている。
 恵那はその点を指摘する前に、まず目に入った物について、指摘することにした。

「こ、これ……何?」

 テーブルのど真ん中に配置されている、常に蒸気を発している小さな機械。
 その加湿器のような電子機械に、恵那は触れないわけにはいかなかった。
 この山小屋自体が、古民家のような造りをしているのにも関わらず、こんなにもわかりやすい文明の利器が置かれているなんて。
 恵那はその蒸気の実態を探るため、ゆっくりと顔を近づけた。

「おいおい、そう焦んなって。まずはこれでも飲みな」

 謎の電子機械に接近しようとしたところで、男が恵那の頭部を掴む。
 突然制止された恵那は、まさかの事態に「あびゃっ」という変な声を出してしまった。
 喉から出た奇抜な声に、男はフッと鼻で笑う。その小馬鹿にしたような笑い声で、恵那の顔色は赤くなった。
 恵那の目の前には、ホット用のグラスに入った、お茶のような飲み物が置かれている。

「何するんですか!?」

「お前、悪戯しそうだったから。それより、これ飲めよ。ラベンダーのハーブティーだ」
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