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古代要塞アルカドビア、古からの慟哭編
44.異能の番犬と勇猛な熊1
しおりを挟む「うわっ、カッコツケ男がきやがったぞ」
「うへぇ、きどり屋の男がカッコツケやがったぞ」
俺を抱えてとんでもない事を言ったクロウに、仮面の男達があからさまに嫌そうな声を漏らす。唯一彼らの表情が分かる口も不満げに歪んでいるようだ。
コイツらのことは憎たらしいが、今だけはその気持ちが少しわかってしまう。
わかる、わかるぞ。俺だって相手がクロウじゃなけりゃ、何抱きしめとんねんナニを格好つけた台詞言っとんねんこのイケメンオッサンめ。こういうことを言っても絶対に格好つかない俺に当てつけてんのか……みたいな事を思っていただろう。
というか、俺が第三者なら、抱きしめられて恐らく赤面しているだろう気持ち悪い俺に対しても素直に「どつき回してやりてえ」と思った事だろうな……。
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…………ってそんな事を考えて恥じている場合じゃなかった。
ともかく、あいつらも自信満々のクロウがやってきて困惑しているみたいだ。
そりゃそうだろうな。今までの俺達は、アクティーが再び蘇ったことに驚いていたし、ナルラトさんも俺も操られたアクティーに攻撃されて緊張していた。
もう戦うしかないって思って、追い詰められている気さえしてたんだ。
そんな風に、誰が見てもこちらが不利な状況のように見えたのに、そんな雰囲気をクロウが一発でぶち壊してくれたんだもんな。
これぞまさに青天の霹靂ってやつだろう。
だけど、そう考えるとなんだかちょっと俺も強気になってしまう。
クロウが来てくれただけなのに、不思議と怖さも不安も感じないなんて……。
「愛するメスの前で格好つけて何が悪い」
「ぐぅっ」
や、やめろクロウ。俺のすぐ近くでそういう台詞を言うんじゃない。
ちくしょう、なんでこういう言葉は自分が言われると死ぬほど恥ずかしいんだよ! 漫画やアニメで見ても全然恥ずかしく思わないのに……っ!
「うわ、浮かれた畜生がなんか言ってる。ムカつくから倒してよ黒い犬」
「うえ、畜生が浮かれて戯言を言ってやがる。早くコイツ倒せよ黒い犬」
あからさまに仮面の男達の言葉使いが粗野になる。
余裕をはぎ取られた二人は、存外若い話しかたをするみたいだった。……って事は、コイツら二人は、少なくともクロウやブラックより年下なのかな。声は若いと思っていたけど、外見年齢なんてこの世界じゃ分かんないもんな……。
この状況なら、余裕を失くした仮面の男達を出し抜けるかも知れない。
でも、その前にクロウにアクティーがヤバいくらい強い事を伝えなくちゃ……。
「く、クロウ。アクティーが操られてるんだ。かなり動きも早くて……」
……と、説明しようとした俺にクロウは軽く目線をやって笑みを深めた。
「ああ、分かっている。どうやら相手は全力を無理に引き出されているようだな。だが今のオレなら問題ない。ツカサ、俺の首に腕を回して掴まっていてくれ」
「う……うん……」
言われるがまま、俺は自力で少しずり上がってクロウの太い首に腕を回した。この格好は恥ずかしいけど、でもクロウがコレで戦えるというなら俺は従うしかない。
恥ずかしながらも体を安定させると、瞳に異常な光を宿したアクティーが、しっかりとした首をコキコキと鳴らしながら近付いてきた。
その足を極力開かず歩みを進めてくる姿は、獲物の前で冷静に忍び足をする猟犬のようにも思える。操られていても、アクティーの戦闘能力は確かなのだ。
「まず、手合せ願おう」
首にしがみ付いた俺を、いとも簡単に背中に回してクロウが姿勢を低くする。
膝を軽く曲げて守る者が無くなった腕を軽く前に出すと、操られているアクティーに対して「生身で受けて立つ」と宣言するように拳を握って見せる。
文字通り目を爛々と光らせるアクティーは、その不可解な瞳でクロウの態度を見ていたが――――クロウの言葉に応えるかのように、彼女も四つん這いに近いような低い姿勢になると、黒い爪を伸ばし構えた。
その姿勢でまるで獲物に狙いを定めた獣のように俺達を睨む相手に、俺はゴクリと緊張の唾を飲み込んだが、クロウは震える事も無くそれを迎え撃った。
アクティーが、人の姿にもかかわらず唸る。
操られているからなのか、それともこれが彼女の元々の戦い方なのか。
どちらにせよ、ただでは済まなそうな権幕だ。
そう思って俺がクロウの首に回した腕に力を込めたと同時。
アクティーが、凄まじい勢いでこちらに飛びかかってきた!
「――――ッ!!」
アクティーの爪がクロウを引き裂こうと腕を振り下ろす。
が、それを既に感知していたように、クロウは素手でアクティーの腕を弾きもう片方の拳で彼女の腹を撃とうとしていた。
だが、アクティーもクロウの動きを読んでか体を捻り一旦距離を取る。
わずか数秒の事だが、既にそれを思い返す暇もない。
再び跳んで来たアクティーは両腕を別方向から回してクロウに襲い掛かるが、それでもクロウは間一髪で弾きカウンターのように拳を繰り出していた。
目で追うのが精一杯なくらい、凡人では追い付けない攻防だ。
飛んで近付き打ち合い一瞬で離れてを繰り返しながら、アクティーとクロウは次第に爪での攻撃から拳の打ち合いに変化していく。
だが、一度も二人が決定的な致命傷を負うことはない。
速度を増しながら二人は拳を突き出し、それを受け止め流しながら己が反撃として拳を返すことを繰り返していた。
既に数十回。しかしそれでも瞬く間な速さだ。
一度の打ち込みは数十秒だが、何度も何度も戦っていると、見ているだけの俺には数十分も戦っているように思えてくる。
あまりにも力のこもった打ち合いなのに、決定的なダメージを与えられていない。
しかも、お互いに一発貰ったら最後、体勢が崩れて無事では済まない事が分かり切っているため、凄まじい緊張感だ。
「グゥウウウ……ッ!!」
その膠着状態に焦れたのか、アクティーがついに一歩飛び退いて唸る。
言葉を失っているが、思考は人として策略を立てているようで現在の状況から脱出するためなのか、さらに一歩跳んで後退した。
それが“逃げ”ではない事は俺にだって分かる。
アクティーは、俺達を完膚なきまでに倒すために何か新しい攻撃方法を試みようとしているのだ。
「クロウ……っ」
「ああ、何かしてくるな……。いや、これは……」
アクティーの様子を見て、クロウが何かに気付く。
どうしたのだろうかと一度表情を窺い、アクティーの方を向くと――――
彼女の体に存在しないはずの毛皮が、空気をざわつかせたように見えた。
その、刹那。
「っ!? あ、アクティー!?」
彼女の体から、爆発音とともに一気に白い煙が噴き出す。
その意味が分からない俺達ではない。
相手の体から感じる気配が一気に増大したことに、クロウが前方を見たまま、軽く跳んで数歩その場から退いた。
それを負うように、白い煙の中からのうなり声が大きくなり、逃げた俺達を見下ろすように高いところから降ってくるようになる。
「……なるほど、見たことの無い“魂守族”とは、こういう姿の獣なのだな」
クロウはそう平然と言うが、俺は正直正気を保てているか怪しい。
だって。
…………だって、白い煙が薄れていく中から現れた姿は……。
俺達を見下ろすほど大きな、ドーベルマンにも似た黒くつややかな体を持つ巨大な犬だったのだから。
「グルルルルル……グァアアッ!!」
「来るぞっ、しっかり掴まっていろ!」
クロウの言葉に思わず目を閉じて思いっきり首にしがみ付いた、瞬間。
凄まじい破壊音がして、体が宙に浮く。
「っ……!?」
思わず目を開けると、なんと。
巨大な黒い犬となったアクティーは、思い切り地面を踏み抜き地面を高い天井へと吹き飛ばしていて。
俺達は、その瓦礫と共に高く跳び上がっていた。
→
※ツイックスの宣言通りかなり遅れました…(;´Д`)
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