異世界日帰り漫遊記!

御結頂戴

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豪華商船サービニア、暁光を望んだ落魄者編

37.今日だけは約束も1

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 ナルラトさんが食事を運んでくれた翌日。
 チート能力のおかげか、はたまた食事のおかげなのか、俺はすっかり元気になり、歩けるまでに回復していた。もう部屋の外に出ても良いくらいだ。

 ……だが、本音を言うと……俺はあまり外に出たくなかった。

 だって、ここから出たら避難ゴーゴー……じゃなくて非難囂々だろうし……。

 …………いや、当然なんだけどね?
 船の金属とかメチャクチャになってるだろうし、ソレをやった犯人を助けようとして俺は海に飛び込んだワケだし……なにより、リメインに「お前が虐められてたから、この船の奴らに仕返ししようとした」なんて言われてしまったのでは、俺がどんな事をして助けたとしても、彼らの心証は決して良くならないだろう。

 つまり、俺はヒール。彼らからすれば迷惑の種を振りまいた悪役なのだ。

 そんなヤツに笑顔を向けるなんて、普通に難しいよな。
 「結局お前のせいじゃないか」という怒りが湧いてくる人もきっといるだろう。

 誰もが他人のした事を許せていたら、リメインだってあんな事になってない。きっと許そうとしたって許せない人もいる。それは、仕方のない事なんだ。
 俺も人を許せるほどに優しいってわけじゃないし、その気持ちは分かるよ。

 漫画みたいに「助けてくれたから帳消し!」とか「良い奴だから許すよ!」なんていう都合のいい話は、現実にはそうそう起こることは無い。
 相手が同じ人間だからこそ、そう簡単には片付けられなかった。

 …………俺の世界でだって、そうだ。
 たった一回の過ちを犯しただけで、それまで仲が良かった同級生全員が俺のことを「いない存在」だとして故意に振る舞うこともある。
 話が合わない、受け入れられない、そんなシンプルな、だけど本人からすればそれ以上どうする事も出来ない理由で線引きをして離れて行く事も有るのだ。

 ………………そういう、もんだよな。
 人の感情は、一度助けたから軟化するなんてそんな簡単なものじゃない。
 それを痛いほど理解しているから、正直俺は部屋の外に出るのが怖かった。

 いくら俺が立派なオトナだからと言っても、人には耐久度というものがある。
 というか、俺だって本当は嫌な顔されたりとかしたくないよ。でも、やっちゃったモンは仕方ないじゃないか。今更嘆いても仕方ない。

 リメインだって、【菫望】の術であんな風になっちゃってたんだし……責めるとしたら【菫望】の野郎しかいないけど、今目の前にいない奴に怒ったって、船の人達が俺の内情を知ってしまったのは取り消しようがないしな……はぁ……。
 なんかもう、このまま寝ていたい……けどそういうわけにもいかない。

 船に常駐していた金の曜術師たちのおかげで、なんとか船を動かすくらいの目途は立ったらしいので、俺はせめてもの協力として飲み水を貯水槽に溜めに行かねばならないのだ。この船の水の曜術師は医務室の医師さんだけだし、島から水を貰うとなると、島の人達も困っちゃうらしいからな。……ああでも出たくない。

 なるべく人に会いませんように……と思いたいけど、会わなくちゃいけないからな。
 給仕係は免除されてるけど、なんかもう胸が苦しい。ぎゅうっとして痛い。
 これが精神的痛みってやつか……などと思いながら、ブラックがいつの間にか用意してくれた白いシャツに吊りズボンを身に纏い、俺は溜息を吐いた。

「……なんで半ズボンなんですかね?」
「えっ、ツカサ君の正装はむちむちの太腿を丸見せする半ズボンでしょ!?」
「なんのための正装なんだよ!! つーかなんだむちむちって!」

 男に使う言葉じゃないだろうがと殴り掛かるが、病み上がりの俺と基礎体力が超人並のブラックでは勝負にならない。
 そのまま簡単にとらえられてしまって、露出している太腿の部分をあますところなくデカい手でまさぐられてしまった。

「ぎゃーっ! やめろばか変態スケベエロおやじー!!」
「うう~ん今日の太腿もむっちり柔らかだね! あぁ~……なんか揉み揉みしてたらムラムラしてきちゃった……」
「もっ、揉むなっ、手ぇ入れるなぁああ!」」

 必死に抵抗しようとするが、ブラックは後ろから前の方にてを伸ばして来ていて、俺を腕でしっかり固定してしまっている。こ、これじゃ抜け出せもしない。
 なのに、立ったままでブラックは俺を覆うように圧し掛かって来て、執拗に半ズボンと足の境界線を撫でたり、しっかりと閉じているつもりの足の間にゴツい手を易々と差し込み内腿を揉みしだいてくる。

「ぃ……や……っ、ば、か……! あし揉む、なっ、てぇ……っ!!」
「ふ、ふへ、つ、つっ、ツカサ君恥ずかしいのぉ? それとも、僕の手がおちんちんに近い所を触ってるから興奮しちゃってるのかなぁ~?」
「~~~~~~~!!」

 こ、このオッサンは、なんでこう恥ずかしい事ばっかり……っ!!

 もー我慢出来ない勘弁ならん! 絶対逃げてやるっ、このままセクハラされまくってスケベなことになってたまるかっ。俺は断固闘うぞ、やらせないんだからな!?
 暴れまくってどうにか離れてやる。ブラックの服がシワクチャになったって構うもんかどうせ貴族の服なんてもう後は仕舞い込むだけなんだから。

「はっ、はふっ、ツカサ君、行く前にセックスしよっ。ね、ちょっとでいいから半ズボンの隙間からおちんちん触らせて! ついでにズボンズラしてペニス挿れさせてっ」
「ついでの方が大きすぎる!! あと痴漢みたいなことすんのやめーって!!」
「置換? ツカサ君は本当に良く分かんない事を言うなあ~。まあどういう意味かは、下の口に教えて貰えばいいよね~」
「オヤジ丸出しの発言すんなー!!」

 下の口って、お前はどうしてそう習ってもいないだろうオッサン染みた発言をサラッと言えちゃうんだ。才能か。才能なのか。もしやオッサンになるとみんなこういう事を言えちゃうようになってしまうのか。そんなバカな。そんなヤベー大人になるんなら、俺はオッサンになりとうない。いやじゃいやじゃ。

 つい自分の今後が心配になってしまうが、そんな俺など気にもせずブラックは俺の尻に腰をグリグリと押し付けてきながら、遂に手で股間を覆って来る。

「ぅあぁっ!」
「ほらぁ……つっ、ツカサ君もやらしい気分になってるじゃないかぁ……ほらほら、ここが温かくなっちゃってるよ? ちっちゃなおちんちんでも、こんなぴっちりした半ズボンじゃあすぐに勃起したってみんなに解っちゃうよぉ~? ねえどうする? ねえねえ」
「っ、うぅう……やっ、ばかっ、揉むなばかぁっ……!」

 おっきな大人の手が、もどかしいくらいに股間を揉んでくる。
 止めようと足に力を入れるのに、そうするとブラックの手を余計に感じてしまって、余計に腹の奥がぎゅうっとなるみたいな感じになってしまう。
 こんなことしてる場合じゃないのに、ブラックが興奮してる声を隠しもしないで俺を弄り回して来ると、その……ど……どうしても…………。

 ~~~~…………っ、だ、だってしょうがないじゃんかっ!
 ぶ、ブラックとは何度もこういう事してるんだし、ブラックがヘンなこと言って、お、俺に「えっちさせて」って何度も言って来るから。恋人だとか、す、好きだから、とか……そんなこと、言って来るから、だから、その……っ。

「ね……ツカサ君、行く前にセックスしよ……? 一回だけにするから、早く射精するように僕頑張るからさ……だから、久しぶりにセックスしようよぉ……ね……」

 耳にぴたりと生暖かい唇をくっつけて、ブラックが声を注ぎこんでくる。
 低くて渋い、大人の掠れた声。その体の奥に響くような声が、ブラックに握られてるところを余計に熱くしてしまって、俺は自分の堪え性の無さに顔を歪めた。
 う、うぅ……こんな、こんなことしてる場合じゃないのにぃ……。

「やだ……っ、や……ぁ……いや、ぁ……も、これ、だめ……っだってぇ……」
「イヤイヤ言ってるけど、ツカサ君の声も体もやらしくなってきてるよ……? ふふ、ぅふふっ……ぼ、僕と同じように、ツカサ君も興奮してくれてるんだね……っ、嬉しい、ツカサ君も僕とセックスしたいんだね……ああもう我慢出来ないっ、ぐ、ぐちゃぐちゃに愛し合おうよぉ……ねっ……ね……っ!」
「んぅうう……っ! や、ぁ……い、今、したら……」

 今えっちしたら、絶対後々都合が悪くなる。
 こんな……っ、こんなの、よけい人に会い辛くなっちゃうのに……っ。

「んふっ、ふ、ふへへぇっ、つ、ツカサくんっ、ベッドに……っ」

 ブラックが我慢出来ずに俺を抱え上げようとした。
 ……と、そこに……本当にちょうど良く、すんごい良いタイミングで、扉をノックする音が聞こえてきた。まるで見計らったかのように。

「ぶ、ブラック……あの……ノックが……」
「……チッ……ツカサ君、もう無視しちゃおっかぁ」

 いやいやいや、ノックずっとされてるじゃないッスか。
 なんなら俺達が出てこないからめっちゃ音の感覚狭まってますよ。もうドアでリズム刻んでるのかってレベルですよ。相手完全にイラついてんじゃんか。

 いやベッドに行こうとするな。揉むな。この状況で更に俺のちんちんを揉むな!
 もうスケベな気分も吹っ飛んだわ、いいからさっさと出ろっ!

 俺の「気分じゃない」感が分かったのか、ブラックは作戦が失敗したと言わんばかりに苦々しい表情に顔を歪めたが、渋々ドアの方へと向かって行った。
 ……うん、いや、だめだな。チッとか言って殺意がダダ漏れてるから相手が危ない。寸でのところでオッサンを止めて、とりあえず俺が来客の相手をする事にした。

 すると、ドアの向こうにいたのは……意外な事に、リーブ君で。
 その後ろには見知った従業員達がいた。









 
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