上 下
24 / 26

パイナップル番長奇譚~もう一人の自分 ドッペルゲンガー 編〜

しおりを挟む
自分の名前は『パイナップル番長』と申します。

本当の名前は、岩丼泰好(いわどん やすよし)というのですが、

生まれつき、ポリネシア人やハワイの人に似ているそうだから、あだ名として、皆は自分をパイナップル番長と呼ぶのです。

自分は、両親を失ってから、この駐車場を相続して、賃料で食うには困らないのですが、なにゆえか、女性からもモテたことがないんです。

それどころか、男女交際経験もない48歳にもなる童貞なんです。

このまま独りでいたら、待っているのは孤独死だけ。

一人っ子ゆえ、この駐車場も国に帰属されるのか・・・

ご先祖様ごめんなさい。

いかん。いかん! こんな暗い気持ちでは、彼女なんてできる訳がない!

とりあえず、自慢の駐車場でも見回りに行ってみるか!

自宅の隣にある駐車場に行ってみると、全裸にマワシだけを装着した巨漢が四股をふんでいた。

「あっ!どこかで見たことがある色黒の巨漢がいるぞ!、あれって自分じゃないのか?、間違いない!、自分がもう一人いる!!、これって都市伝説のドッペルゲンガーなのか!、見ると死期が近いとかってされてたよな。」

「おーい!、君はパイナップル番長と言うんだろ?。俺のことも、パイナップル番長と呼んでくれてもいいよ」、ドッペルゲンガーが話しかけてきました。

「ぱっ、パイナップル番長!?、自分こそがパイナップル番長ですぞ!」と、パイナップル番長が怯えながら返答します?

「あはは、冗談だよ。そんなに怖がるなって!、似たもの同士、仲良くしようぜ!、ところでさぁ、君のことを『P番(ピーバン)』って呼んでいい?」

「えぇ、どうぞ!、じゃあ、自分も『ドッペ』って呼ぶよ」

「ありがとう!、P番!、実はさ、俺には夢があるんだよ!、それはね、女の子たちからモテモテになることなんだ!、でも、なかなか上手くいかないんだよね!、そこで、君に教えて欲しいことがあるんだけど、君って、今まで何回くらい告白されたの?」

「いや、自分、一度もありません・・・」

「そうなの!、まぁ、人生いろいろあるよね!、俺なんて、身長190センチ体重150キロもあるデブだから、今までに付き合った女性は3人だけだけどね。しかも全員が女子大生だし。」

「嘘!、非童貞だったんですか・・・、ドッペって、なんか外見は親近感が湧くのに、その話を聞くと疎外感を覚えますよ。まさか、ヤリチンのドッペルゲンガーと出会うとは思わなかったな。」

「ヤリチン?、そう言ってもらえると嬉しいよ。ところで、君に質問したいことがあって、この前、インターネットで調べたら、君は、全裸に腰蓑姿で女子高の通学路に出没しているようだね。その件に関しては何か弁明はあるのかい?」

「ドッペに隠し事はできませんね。実は、自分は、趣味としてサモア人のコスプレにハマっていて、その格好で、女学生たちのパンチラを見たいと思ったもんで、毎朝、通学路に出没しているんです。」

「なるほど、そういうことだったのか。でも、いくら露出狂の変態とはいえ、そんなに簡単に女性のパンツが見られるわけないよね?」

「ところが、この前、奇跡が起こったんですよ。なんと!、女子高生のスカートが風でめくれて純白のパンティーを拝めたんです!!」

「へぇ~、そんなことが本当にあったんだ。」

「はい!、それで、自分は、この感動を忘れないようにと、スマートフォンで撮影した動画を何度も繰り返し再生しています。」

「そんなに気に入ったなら、俺にも見せてくれよ。」

「もちろんいいですよ!、でも、ちょっと待ってください。ドッペに見せるために、動画を編集してから、すぐに送りますよ。」

「おぉ!、そうしてくれると助かるよ。」

「ちなみに、ドッペは、どんな女性がタイプなんですか?」

「そうだねぇ。やっぱり、セクシー系かな!、特に、爆乳で巨乳な女子大生が好みだな。」

「そういえば、ドッペって、マワシ姿だけど、相撲部屋からスカウトされたことはあるの?」

「そんなことを聞くのはやめてくれよ。P番!」

「だって、ドッペって、体が大きいから、きっと相撲の才能があると思うんだけど・・・」

「そんなの嫌に決まっているだろう!、それに、この顔と体型を見てみろ!、こんな関取がいたら、間違いなく八百長だと疑われるぞ。」

「確かにそうだね。ドッペには悪いこと言ってしまったよ。ごめん。」

「いやいや、気にすることはないよ。P番。ところで、君の方はどうなんだい?、好きな芸能人とかいるのかい?」

「いや、自分は、今はテレビをほとんど見ないから分からないけど、未成年の頃の新垣結衣ちゃんは可愛かったなぁ。」

「ふーん。ちなみに、俺は、石原さとみの方が好きだけどな。」

「いやいや、本仮屋ユイカの若い頃も捨てがたいな。」

「おい!、P番。お前は、間違いなくロリコンだな?」

「なっ、何を言っているんだ!、違いますよ。自分は、年上の女性が好きだよ」

「いやいや、絶対に嘘だね。48歳の年上なんて閉経間近じゃないか!、P番は、本当に、未成年の女の子にしか興味がないはずだ。」

「そっ、そんなことは断じてない!、でも、本当は女子高生以外には関心がないんだ・・・」

「ほらな。やっぱり、P番は、ロリコンのド変態野郎だな」

「うるさい!、ドッペは黙れ!」

「おっ!、ついに認めたな。P番!、君は、やはり、真正のロリコンだ!、認めたくない気持ちも分かるが、これは仕方がないことなんだよ。」

「なにが仕方ないんだよ。そう言うドッペは、女子高生に興味がないのか?」

「もちろん、JKには大興奮さ!、でも、今の俺の彼女は、女子大生のお姉さまだからな。」

「嘘?、本体の自分は中年童貞なのに、ドッペには女子大生の彼女がいるのか?!、おじさんなのに、そんなに若い彼女が!」

「あはは。俺の彼女は美人だからな。毎日の性行為で体がもたない!うれしい悲鳴さ!」

「なっ!?」パイナップル番長は自分の耳を疑った。

「驚いたか?、P番?、でも、これが現実というものさ!、俺の彼女の名前は『マリリン・マン子』というんだ。」

「ふんっ!、ドッペの彼女とか絶対に会いたくはないな・・・」

「でも、この世の中には、大まかには、男と女の2種類の人間しかいない。その2種類のうち、男は、必ず女を求めるものだ。」

「自分のドッペルゲンガーの癖によくそんなこと言えるな。」

「ふふん。俺は、君と違って、ちゃんとした経験を積んできたからね。」

「そんなこと自慢げに言われても困るんだけど・・・」

「でも、P番は、まだ一度もセックスをしたことがないんだろう?」

「それは・・・」パイナップル番長は答えられなかった。なぜならば、彼は真正の童貞だったからだ。

「図星みたいだね。でも安心してくれ。P番が高校生のときの話だが、君の高校のクラスの男子全員がP番のことを狙っていた。P番はホモセクシャルの間からは大変な人気がある存在だった。」

「そんなこと全然知らなかった・・・。うちの高校のクラス全員がホモセクシャルだなんて・・・」

「でも、本当にP番は全く気づいてなかったのか?」

「うん・・・」

「でも、P番は、男からはモテていたのに、どうしてホモセクシャルの彼をつくらなかったのだ?、男同士でも女性と無縁よりはマシだろ?」

「自分は、高校を卒業してからずっと引き籠もりの生活をしていて、恋愛どころ本当の友達すらいなかったんだ。だから、自分には縁のない話だと思っていたんだよ。」

「そうなんだね。でも、今は違うだろう。運送会社でバイトをしているんだから。P番の周りには可愛い女の子たちがいっぱいいるんじゃないか?」

「いや、自分みたいなデブでブサイクな奴に女の子が寄ってくるはずないだろう」

「またまたぁ!、そんな謙遜をする必要はないって!、俺はこの外見でも彼女がいるんだぜ!?」

「そんなわけあるか!、だってドッペは別世界の自分なんだろう!、自分のいるこの世界では、自分みたいな外見の男は一生童貞と決まってるんだ」

「そんなのは、ただの思い込みに過ぎないよ。」

「えっ?」

「つまり、P番が自分自身を卑下しているだけだ。」

「でも、それは本当のことなんだよ!、自分は今までに一度もデートの経験すらないんだから」

「P番が高校時代まで、ホモセクシャルからモテモテだったことは事実だ。でも、それは、あくまでP番の世界での話でしかない。P番の学校にいた同級生たちは、P番のことを性的な目で見ていたのであって、決して友達ではなかったのだからな。」

「友達がいないのは分かっていたが、それをドッペから改めて言われるとショックだな。」

「だから、P番が引き籠もってしまったのも無理もないのかもしれない。でも、それはP番が勘違いをしていただけなんだ。」

「勘違い?」

「P番が、ホモセクシャルからモテたのは、P番の容姿が良かったからではない。P番が、優しくて、性格が良かったからなのだよ。」

「そうだったのか・・・」パイナップル番長は衝撃を受けた。

「本当だよ。P番の学校でのモテっぷりは凄まじかったよ。」

「でも、ドッペ、どうしてそれが分かったんだい?」

「俺は、P番と同じ存在なんだよ。パイナップル番長のことなら、自分のことも同じように判るんだ!」

「そうなの?、じゃあ、ドッペはどうやって彼女をつくったんだい?」

「俺はね、大学の学園祭の時に女装をして潜り込んでみたんだ。そのときにね、偶然にも女子学生と仲良くなってね。それで付き合うようになったんだ。」

「なっ、なるほど!、そんな手段で!、そういうことだったのか!」

「そうだよ。あとね、P番。君は、女に無縁と勘違いしていたが、それは大きな間違いだよ。」

「ドッペ、どういうことだい?」

「P番、君は、男女混合のソフトボールチームに所属していただろう?。」

「あぁ、していたけど、自分は、ボール拾い専門だったからね。」

「そんなことはない!、P番はチームのムードメイカーとして活躍していて、女子たちの人気者でもあったはずだ!」

「いやいや、自分は目立たないようにしていたからね。」

「それでもだ!、P番は、試合に出ると必ず女性にメールアドレスを聞いていたじゃないか!、それも、女性がドンびくほど強引に!。」

「確かに、そうだったな。」

「そして、送ったメールには必ずP番へ返信があっただろう?」

「確かにそうだな。返信内容は、恐ろしいほどに迷惑そうなことが判る文章だったけど・・・」

「それはともかく、P番に返信してくれたのは、なぜだと思う?」

「分からないよ!、教えてくれよ!、ドッペ!」

「それはな、P番。君が俺と同じ顔をしているイケメンだからだよ。」

「えっ?、自分がイケメンだと?」

「そうだよ。P番は、俺のように優れた顔立ちをしているんだ。」

「そんなバカな!、ドッペは色黒巨漢でサモア人みたいじゃないか!、そんなにイケメンなら、ドッペは、俳優やモデルにスカウトされたことはあるのか?」

「もちろん相撲界からのスカウトの経験はあるけどね。でも、俺はね、芸能界に入るつもりはないからね。」

「でも、それならば何故?、ドッペは自分をイケメンだと言い切れるんだ?」

「だって、P番は、今年で48歳になるのに未だに童貞だろう。」

「そうだよ!、でも、ドッペ、それが何か関係するのかい?」

「大いに関係するぞ。でもね。よく聞いてくれ、P番。君は、男の顔がカッコイイからといって、すぐに女が股を開くと思っているのか?」

「いや、そんなことはないけど・・・」

「それと一緒さ。男の顔がカッコイイからといっても、必ずしも男がモテるとはかぎらないんだ。」

「そうだったのか・・・」

「それにね。P番は、学生時代にモテモテな生活にあこがれるあまり、たいしてモテない現実とのギャップで引きこもってしまったんだよ。」

「理想と現実とのギャップ・・・」

「そうさ!、P番は、高校時代に、たくさんの異性からチヤホヤされたいと思ったせいで、逆に『自分は絶対にモテない』と思い込んでいたんだよ。求めるものが大きすぎたのさ!」

「そうだったのか・・・ドッペ・・・」

「だからね。P番。現実をしっかり見つめて生きていくんだ。」

「分かった。ドッペの言うとおりにするよ。」

「よし!、素直なP番は好きだぞ!」

「ありがとう。ドッペ。」

「ちなみに、俺の彼女はね。女子大生だけど、初老の俺の趣味を受け入れてくれたんだよ。」

「へぇ~、ドッペの彼女のマリリン・マン子さんは優しいんだね。」

「そう!、彼女は、とても心の広い素敵な女性なんだよ!」

「ドッペ!、本当に幸せそうに話すんだね。」

「もちろんさ!、だって、彼女は俺にとって唯一の友達であり、親友でもあるのだからね。」

「ドッペの親友にして彼女なのかぁ・・・」パイナップル番長は羨ましくなった。

「どうしたんだ?P番?、元気がないようだね。」

「ううん。何でもないよ。ドッペ。君が心底うらやましいなぁと思ってさ。」

「大丈夫さ!、P番もきっと俺と同じように幸せな人生を歩むことができるはずだ!」

「そうだといいな。」

「あぁ、きっとそうなるさ!、俺も応援しているぜ!、頑張れ!P番!、ファイト!P番!、フレー!P番!、フレ!フレ!P番!、ガンバレ!ガンバ!P番!、ファイ!ファイ!P番!」

「あはははっ!!、ドッペ!、もうやめろよ!、お腹が痛いよ!!」

「おっ!、笑ったな?P番?、やっと笑顔になったね。」

「あっ・・・」

「俺と瓜二つの姿のP番には、いつも笑顔でいてほしいからね。」

「ドッペ・・・、君って本当は良い奴だったんだね。ところで、ドッペルゲンガーの世界ってどんな感じなの?」

「んっ?、別に。特段、普通だけどね。」

「えっ!?、普通の世界なの?、もっと自分の住む世界とは別物だと思っていたんだけど・・・」

「まぁ、間違ってはいないね。でも、俺は、俺の生きる世界が好きだよ。」

「そっか・・・」

「うん。でもね。P番。君が生きている世界だって悪くはないと思うよ。」

「そうなのかな・・・」

「うん。そうだよ。P番。」

「じゃあ、自分の世界を好きになれるように頑張ってみるよ。ドッペ。」

「その意気だよ!、P番!、一緒にがんばろうぜ!」

「うん。ありがとう。ドッペ!」

「こちらこそだよ。P番!」

「ねぇ、ドッペ。君に相談したいことがあるんだけど・・・」

「なんだい?」

「自分ね、運送会社のバイトに入ってきた若い女性のことを好きになってしまって・・・」

「ふむ・・・」

「それで、その女性に告白しようか迷っているんだ。」

「なるほど・・・」

「でも、自分はデブだし、ブサイクだから、相手にされないんじゃないかって思ってるんだ。」

「なっ?、そんなことあるわけないだろう! パイナップル番長!」

「えっ?、ドッペ、どうして分かるんだい?」

「だってね。パイナップル番長は俺と瓜二つなんだから、ブサイクな訳がないよ。」

「でも、自分は、この世界ではイケメンと呼ばれたことは一度も無いんですよ・・・」

「そんなこと気にするなよ。だってね。君と俺は同一人物なんだよ。同じ人間がブサイクなわけないだろう?」

「たっ、確かにそうもいえるけど、ドッペの世界の価値観と、自分のいる世界の価値観は違うんじゃないかな?、それにドッペはモテモテだから余裕で言えるんだろうけど、自分に自信なんて全く持てないよ。」

「おいおい。P番。君は、今までの人生の中で一度もモテなかったのか?」

「はい、著しくモテないです・・・ドッペには解らないだろうな、この辛さが・・・」

「おいおい。P番。それは、ただ単に君が勘違いしているだけなんだよ。」

「えっ?」

「P番。君はね。モテモテなんだ。」

「嘘だ!、そんなのは嘘だ!、だって、自分は今まで一度も女の子に話しかけられたこともないんだから!」

「それはね。おいおい。P番。君自身が自分で壁をつくっていただけなんだよ。」

「えっ?、ドッペ、どういう意味ですか?」

「つまりね。P番の周りには、P番のことが好きな可愛い女の子たちがいたのに、P番は一方的に彼女たちを怖がらせて遠ざけていたんだよ。」

「えっ?、そんなバカな!、ドッペ、そんなはずはないよ!、僕みたいなキモくてデブで不細工な奴に、そんな状況があるとは思えないよ!」

「でもね。少なくともP番は高校時代までずっとホモ男子にチヤホヤされていたんだからね。」

「それは、信じられないよ。それ、ドッペがドッペルゲンガーの世界でそう思ってるだけでしょう?」

「いや、違うよ。P番!」

「えっ?」

「P番はね。P番の世界だって、本当に男子高校時代にクラスの性的な人気者だったんだよ。」

「そんなバカな!、ドッペ、そんなことはあり得ない!」

「いや、本当だ!、P番。P番はクラスで一番の性的な人気者だったんだ。」

「でも、そんなのはウソだ!、ドッペ!、だって、自分は女子高生の誰からも相手にされなかったじゃないか!」

「いや、君は、自分のことを『デブ』『ブサイク』『メガネ』『短小包茎』『キモ男』だと思っているけど、それは間違いなく事実だ。だけどね、P番。君は、自分の容姿にコンプレックスを持ち過ぎているんだよ。」

「えっ?、ドッペ?」

「いいかい?、P番。君は、自分の外見が嫌いなんだよ。だから鏡を見るたびに落ち込んでしまうんだ。」

「・・・、鏡を見ると、サモア人みたな色黒で不細工な巨漢がいるんだ・・、あれが自分だなんて信じたくないよ・・」

「でもね。P番。俺と同じように、P番はイケメンなんだよ。だから自信を持つんだ!」

「そんなこと言われても、ドッペの言うことが信じられないよ!」

「だったらね、P番。今度から毎日鏡を見てごらん。」

「それは、ドッペルゲンガーの世界の価値観なんでしょ?、ドッペだって、自分のいるこの世界だったら、未だに童貞だと思うけど」

「うーん。そうだなぁ・・・」

「やっぱりそうでしょ?、だからね。ドッペの言っていることも信憑性が無いんだよ。」



「うーん・・・」




「わかったよ。P番、君に本当のことを話すとするよ。実は俺は、君のドッペルゲンガーではないんだよ!」


「えっ?、それってどういう事?」


「つまりね。俺は、P番のドッペルゲンガーじゃないんだ。本当の名前は『武蔵丸 光洋(むさしまる こうよう』だよ。P番は、俺のこと知ってるかな?」


「えっと・・・、あっ!、あの有名なハワイ出身元横綱の武蔵丸だったの!?」


「そうさ!、俺は、武蔵丸だよ。ハワイ人とサモア人のハーフなんだ。なぜか日本人のパイナップル番長と瓜二つなんだよね。」

「えぇ~!、ハワイ人とサモア人のハーフに自分が瓜二つ!?」パイナップル番長は驚いた!。

「そうさ!、パイナップル番長はね。俺と同じ遺伝子を持っているんだよ。」

「いやいや!、自分の両親は、既に他界していますが、日本人でしたよ!」

「そうだったろう。それは知っているよ。では、なぜ、君は日本人離れしたサモア人のような風貌をしているのか考えたことはあるのかね?」

「いや、分かりません。」

「その理由はね。君はサモア王室の末裔なんだ。君が実父母と思っているのは、養父母だったんだよ。権力紛争に巻き込まれて命を狙われていたサモアの王族が、君のご両親に赤子を託したんだ!、その赤子がパイナップル番長なんだよ!」

「えっ?、自分がサモア王家の血を引いているんですか!?」

「そうさ!、パイナップル番長が王族である証拠として、君の金玉の裏筋には、ポリネシアンの精霊の加護を受けるために、アワビのタトゥーがあるんだよ。」

「えっ?、嘘、裏筋なんて自分じゃ見れない場所に彫ったんですか?、それに、武蔵丸さんは、本当に何者なんですか?、元力士なだけですか?」

「はっきり言おう、パイナップル番長。君の兄だ!!」

「えっ!?、兄!? 、お兄ちゃん?」

「そうだ!、俺が日本人に帰化した名前は「武蔵丸 光洋」だが、生まれ持った名前は「フィアマル・ペニタニ」なんだよ。この名はサモア王室の名前なんだ!」

「えっ?、ということは、自分は王子様!?」

「そうだよ!、だからね。パイナップル番長は俺の弟なんだよ。」

「そんな・・・、自分は日本人だと思っていたのに・・・・、それじゃ、自分の本当のサモアの名前を教えって下さい!」

「分かったよ。教えてあげるよ。パイナップル番長。君の本当の名前は『ガバアナル・ペニタニ』だよ。」

「えっ?、それはいったいどういう意味ですか?」

「そのままの意味だよ。君の名前は、包茎の男性器を意味するんだよ。」

「えっ?、じゃあ、自分は男性器という意味の名前で呼ばれていたというの?」

「そうだよ!、君は、男性器の象徴であり、男性神の化身なんだよ!」

「そんな・・・、めっちゃ恥ずかしい名前だよぉ・・・」

「でもね。安心していいよ。これからは、俺たちが君を守っていくからね。」

「えっ?、武蔵丸さん、どうしてですか?」

「だってね。俺もパイナップル番長と同じく、サモアの王室の血を受け継いでいるんだよ。」

「えっ?、じゃあ、自分は王子様だから、武蔵丸さんは王様なんでしょう?」

「うん!、そうなんだけどね。俺は王位継承権を放棄したから国王ではなくなっちゃったけどね。でもね。俺は今でもサモアの国民から敬愛されているし、多くの友達もいるんだよ。」

「そうなんですか・・・武蔵丸さん・・・」

「うん!、だからね。パイナップル番長には、サモアに帰って、国王の座を継いで欲しいんだ。」

「えっ?、サモアに行って本当のサモア人になれって言うんですか?」

「うん!、俺はね。日本が大好きだし、日本の文化にも興味があるし、日本に帰化してからも仕事の関係で日本に住むことになったんだ、だけど、パイナップル番長は、駐車場賃料で生きているし、無職も同然だろ?、だからね。パイナップル番長ことガバアナル・ペニタニには、本物のサモア人として生きていって欲しいんだよ。」

「でも、自分は、もう48歳なんですよ。今からサモア語なんで習得できませんよ・・・」

「大丈夫!、ガバアナル・ペニタニならできるはずだ!」

「えっ?、どうしてですか?」

「だってね。パイナップル番長ことガバアナル・ペニタニには、サモアの魂が宿っているんだからね!」

「えっ?、どういうことですか?」

「つまりね。パイナップル番長は俺の分身でもあるんだよ。だからね。その血と魂をもっていればサモアは受け入れてくれるんだ。」

「でも・・・、中年童貞で無職同然の自分なんかが行っても迷惑をかけるだけですよ・・・」

「いや、そんなことはないよ。君が行けばきっと皆が歓迎してくれるよ。」

「でも・・・、怖いよ・・・」

「大丈夫!、パイナップル番長ことガバアナル・ペニタニのような中年童貞でも、ちゃんとサモア人女性と結婚できるよ!」

「えっ?、結婚できるの?」

「もちろん!、パイナップル番長ことガバアナル・ペニタニはサモアの男性器の化身なんだから、対局の存在、女性器の化身と言われる女性と結婚する運命なんだ。」

「そっか・・・武蔵丸さん、」

「その女性は、女王一族出身の『デビルフェラ・キワーノ』という人物さ!、身長2メートルで200㎏以上はある強烈熟女だよ!」

「えっ?、そんな強烈な女性と初体験なんて絶対に嫌です。武蔵丸さん、どうか勘弁してください。」

「ダメだよ!、パイナップル番長ことガバアナル・ペニタニ!、君はサモアの王室の血を引くプリンスなんだよ!、逃げることは許されないんだ!」

「えっ?、でも、そんなのは無理です。だって、身長2メートルで200㎏以上、しかも熟女だなんて・・・」

「そんなこと言ってる場合じゃないよ!、君のお兄ちゃんである俺が一生懸命にお願いしているんだからね!、それにパイナップル番長ことガバアナル・ペニタニは、このままだと死ぬまで童貞で恋愛未経験者のままだぞ!」

「うぅ・・・、でも、やっぱり怖すぎるよ・・・」

「サモア行きのチケットも買ってある。パイナップル番長よ。明日、日本を出発しなさい!」

「えっ?、武蔵丸さん!、そんな急に言われても・・・」

「いいから早く行きなさい!、パイナップル番長ことガバアナル・ペニタニよ!」

「えっ?、でも・・・」

「いい加減に覚悟を決めなさい!、このヘタレ野郎!」

「うわぁー!、やめてー!、やめてくれー!、どうか夢なら冷めてくれーー!!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



「うぎゃーーーーー!!!、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、・・・・・・・・・」



パイナップル番長は、見慣れた自宅の和室で目が覚めた。


「なんだ夢だったのか・・・」


そして、パイナップル番長は、いつものように洗面所に向かった。

鏡には、南国諸島人のような浅黒い肌をした初老の巨漢が写っていた。

「たしかに、元横綱の武蔵丸に似ているな・・・、自分、サモア人の『ガバアナル・ペニタニ』だったりして・・、あはは、そんな事あるはずないか。」

そう思いながら髭を剃り始めた。

すると突然、パイナップル番長の脳裏にある記憶が流れ込んできた。父親との一場面である。

父:「この土地は、米を得るため、岩丼家の御先祖様が田んぼとして代々受け継いできたのだ。今は駐車場となっているが、不労でも 大切な賃料を生んでくれる御先祖様からの ありがたい贈り物だ。けっして、岩丼家を絶えさせてはならん。かならずや、この土地を後世に承継させるのだぞ。泰好よ、お父さんと約束しておくれ。」

幼き日のパイナップル番長:「わかったよ。お父さん!!、僕、早くに結婚して、子供をたくさんつくるから大丈夫だよ!」

そんな場面であった。

パイナップル番長:「自分の父親は、48歳でも童貞のままな自分のことを、あの世で心配しているだろうな・・・、なんだか約束を守れなそうで本当にごめんなさい。」

そう言いながら、身支度を調え、今日も運送会社のバイトへ出かけるのであった。

そんなパイナップル番長に運命の出会いはあるのか・・・

それは、誰にもわからない。


+++++ 完 結 ++++++



この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。また、性的嗜好や差別を助長させる目的で書かれたものではありません。
(注:この文章を読んでいるあなたの世界にも、あなたにしか見えないパイナップル番長が存在し、また、どこの世界にも必ずパイナップル番長は存在するのです。)

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

旦那様は私に隠れて他の人と子供を育てていました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:376pt お気に入り:3,823

虐げられた仮面の姫は破滅王の秘密を知る

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:56

真夜中は秘密の香り

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:97

推理小説にポリコレとコンプライアンスを重視しろって言われても

ミステリー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:3

姫将軍は身がもたない!~四人の夫、二人のオトコ~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:213pt お気に入り:929

その恋は、まるで宝石のように輝いて

恋愛 / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:267

この恋は罪でいい

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:25

何となくざまぁ

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:80

処理中です...