ダンジョンで温泉宿とモフモフライフをはじめましょう!〜置き去りにされて8年後、復讐心で観光地計画が止まらない〜

猪鹿蝶

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第二章 開業準備をする俺

35、帰宅

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 セシノの家を出てシェイラと別れた俺たちは、とにかく必要な物を買いに走り回っていた。
 もう時刻はすでに夕方、ダリノさんと話し込んでいたら思った以上に時間が無くなってしまったのだ。

「よし、今ので最後だな?」
「は、はい。本当ならバンさんの服はもっとじっくり見たかったのですけど……」
「どうせまたすぐに町には行くから大丈夫さ」
「え、バンさんまた外に出てくださるのですか?」

 セシノは収納ボックスに入りきらなかった手荷物を驚きでドサドサっと落としてしまった。
 俺はそれを拾ってあげながら、首を傾げる。

「いや、そんなに驚く事かな……でもさ、一度出たら二度も三度も同じ事だろって思ったんだよな」
「そうかもしれませんけど、でもバンさんにとっては大きな一歩ですね」

 大きな一歩か……。
 この調子でアンナもダンジョンに来てくれたらいいのになぁ~。

「とにかく今は早く俺たちの家に帰ろう? 明日からは忙しくなる。その前にセシノのために家を建て直さないとな……」
「た、建て直す??」
「ああ、そんな大変な事じゃないからな。今回はちゃんとスキルを使って作るから」
「そ、そんなスキルもあるんですね……」
「ダンジョンマスターになった特権ってやつだな」

 俺は本当のダンジョンマスターじゃないから、軽くしか触れてこなかったけど、まあ家を建てるくらいならそんなに影響はないよな……?
 そんな事を話しながら、待ち合わせのギルドまで着いた俺たちだったが、日が暮れてもマリーは戻って来なかった。

「来ませんねマリーさん」
「まあ、マリーの事だからなんか忙しいんだろう。そのうち帰ってくるだろうし、言われたとおり先に帰るか……」
「少し心配ですけど、マリーさんなら大丈夫ですよね?」
「ああ、それに帰ったらセシノは俺たちの仲間入りだからな、マリーには申し訳ないがそのためのパーティーを開かないとな!」
「……え?」

 突然立ち止まったセシノに数歩先で気がついた俺は、どうしたのかと振り返った。
 セシノの顔からは、涙が溢れていた。

「え? せ、セシノ……!?」
「す、すみません。凄く、嬉しくて……だってこんな幸せな事が続いて良いのかなって、これは夢なんじゃないかって……うぅ……」
「これは夢なんかじゃなくて現実だよ。だからセシノはもう苦しまなくてもいいんだ」

 そう言ったのに泣き止まないセシノを見て、つい俺は頭をポンポンと撫でてしまい、しまったとすぐに手を離した。
 前回あんなにも拒絶されたのだから嫌なはずだと思っていたけど、泣いているセシノは俺に何も言わなかった。
 一応拒絶されなかった事に、少しでも信頼してもらえたのかなとホッとしながら、俺はセシノに言う。

「それに、パーティーはまだ始まってもないんだから、泣くのはまだ早いぞ!」
「た、確かにそうですよね……じゃあ急いで帰りましょう!」
「ああ!」

 そう言って俺たちはギルドのダンジョン塔に足を踏み入れた。
 来たときはちゃんと見れなかったけど、帰るときはゆっくりでも大丈夫だろうと、俺はキョロキョロと周りを見回していた。
 今の気分は田舎から出てきたおのぼりさんである。

「へ~。この東部エリアのギルドに、今は13個もダンジョンボックスの転移ゲートがあるんだな。俺が冒険者やってたときはまだ10個しかなかったのに……」
「近年冒険者の人口が増えているようでして、ギルドが他所と共有で使うダンジョンボックスを増やしたそうですよ」

 ダンジョンボックスは一応ギルドの所持物である。
 そしてそのため転移ゲートは所持している所しか基本設置出来ない。しかし共同所持を認めた場合には複数の転移ゲートができる場合もあるのだ。
 そのため他エリアへ移動するためにダンジョンに行く人も存在するらしい。
 因みに『カルテットリバーサイド』はこの東エリアしか転移ゲートは存在しない。
 だからもしアンナが他エリアのギルドに行っているのなら、こっちに戻ってきて貰わないといけないわけだ。そのためにダンジョンを観光地にして誘き寄せなくてはならない訳だけど、そのうちギルドに怒られそうだよな……。
 そう思いため息をついたせいで、セシノに心配されてしまった。

「だ、大丈夫ですか? 流石にこの階段は疲れますよね」

 確かにダンジョン棟はひたすら階段を上がって、目的の移転ゲートに向かう訳なんだけど『カルテットリバーサイド』のゲートは思ったよりも上の方にあった。

「いや、疲れた訳じゃないから大丈夫だよ。まあ俺の体力は確かに落ち始めてるけどさ。それにもう見えて来たみたいだから、あともう一息ってところかな?」
「本当ですね、あと少し頑張りましょう」
「でもよく考えたら、向こうに出てもマリーがいないから家までは歩きになると思うけど、セシノはまだ大丈夫なのか?」
「あ、はい。体力だけは自信がありますから」
「なら俺も、もう少し頑張るか」

 そして俺たちは転移ゲートにたどり着くとその上に足を踏み入れた。
 行きと同様、床には魔法陣が光輝いている。
 一瞬の浮遊間の後、気がつけば俺は見慣れた森の中に帰ってきていて……。

「マスター、おかえり!!」

 そして何故か目の前には、四足歩行型で待機しているフォグの姿があった。

「フォグ、もしかしてずっと待っててくれたのか?」
「いや少し前にマリーから通信が入ってさ、待ち合わせに間にあわないから代わりに迎えに行けって言われたんだぜ。それでここで待ってたんだ」

 もしかして俺にも通信が来ていたのだろうか……全く気が付かなかったが、マリーには申し訳ないことをしてしまったな。

「わざわざ迎えに来てくれてありがとな、フォグ」
「フォグさん、ありがとうございます!」
「お、セシノもいるって事は許可が出たんだな。よかったぜ!」
「ああ、そうなんだよ!」
「でもマスターが、最初は乗り気じゃ無かったって聞いてたぜ? それなのに今じゃこんなに喜んでるんだからよくわからねぇぜ……」

 そういえば俺は最初、セシノがここに残る事には反対していたんだった。
 そう思ったら手のひらクルクル過ぎて恥ずかしくなってきた。

「い、いや……それは別にいいだろ? それよりも早く俺たちの家に帰ろう。今日からはセシノにとってもあそこが家だからな」
「はい!」

 すぐに家の形は変えるだろうけど、それでもようやく家に帰ってきたのだと、俺は凄いホッとしたのだった。
 そして着いた家の前では、アーゴとフラフも待っていてくれた。

「マスター、おかえり! 外、よかった?」
「フラフただいま。外は良くなかったよ……」
「マスター、オカエリナサイ。ダンジョン、ナニモナカッタ」
「アーゴもありがとな。何もなかったならそれが一番だよ、よかった……」

 俺はダンジョンに問題が無かった事にホッとすると、今あるオンボロ小屋を改めて見た。
 今日でこの家ともお別れだな。

「じゃあ、まずはセシノが安心して暮らせるように家の改造からだな」

 俺は『ダンジョンリフォーム』を展開する。

「こ、これは……?」
「ああ、セシノは初めて見るよな。これはさっき話してたダンジョンマスター専用のスキルだ」
「じゃあ、これで家を建て直すのですか……?」
「そうなんだけど、俺もこれで家を建てた事が無くてな……」

 俺は建物一覧を見ているが、どう見てもダンジョン用の建物ばかりある。
 いや、ここはダンジョンなのだから当たり前なのだけど……迷宮や塔に洞窟。それに古城なんてのもあった。
 だけど宿屋に適した建物は何度見ても見つからなかった。
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