私は悪役令息らしいですが、問題は周囲にあると思います。

白鳩 唯斗

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一章 10歳

楽しいゲームの始まりですよ

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「はぁ、なるほど」

 とても興味深いお話でした。彼が言うにはこの世界は乙女ゲームの中らしいです。乙女ゲームにはシナリオがあり、プレイヤーの選択次第で結末が変わるとか。

「驚かないんですか?」

「えぇ、まぁ想定の範囲内です」

 第一王子に毒殺される。この点は正直不服ですが。毒入りと知りながら飲んだ理由は何となく分かります。やはり私は瘴気に負けてしまうのでしょうね。ヒロインに頼らない辺り私らしいです。

「ルークス公子は私を助けたいのですか?」

「もちろんです。ゲームの強制力があるかも知れませんが······」

「愚かな選択ですね」

 呆れてため息が出てしまいます。

 ルークス公子には申し訳無いのですが、私は無理に生きようとは思っていません。狂った獣にはなりたくないですからね。既に後戻りが出来ないほど瘴気に犯されていますし。今更どうにかなる話でもありません。

「まぁ、頑張ってください。私は協力しませんので」

「えっ!? カイアス様は死んでしまうんですよ?! 一緒に協力した、·········ほ、······う·····が、····」

「少し睡眠を取った方が宜しいかと。判断能力に問題があるようです」

 私はニコリと微笑みながらルークス公子の意識を奪いました。椅子からズルズルと落ちそうになっているのを抱き上げます。床で就寝は貴族として些か問題ですから。筋肉痛で訴えられても困りますし。ベッドの上にそっとルークス公子を寝かせます。

「お気持ちは嬉しいのですが。因果律がありますから」

 私はニコニコといつも通りの笑顔を作ります。

 さて、これから忙しくなりそうですねぇ。スカーレット家は絶大な権力を持つ名家ですから潰されては困ります。正気ではないヴィルハルト殿下が次期国王とは······暴君誕生ですかね。いっその事私が乗っ取ってしまいましょうか。

「ふふふ。裏の支配者ですか。悪役令息にはお似合いですね」

 危険分子は全て潰してしまいましょう。次期宰相として国の存命は最重要事項です。父上から一部権限をお借りして粛清するとしますか。

 もしもに備えてリアム殿下の再教育も必要ですね。

「素晴らしいゲームではありませんか」

 私の命が尽きるのが先か、国の掌握が先か。あいにく私は負けず嫌いなので。魔王が相手だろうと捻り潰して差し上げますよ。





 ということで思い立ったら即行動。リアム殿下は授業中でしたが魔術で強制転移させて頂きました。この学園において私はある程度権限が与えられているので。攫っても問題ないのです。

「なっ!? ここは何処だ?!」

「ここは庭園ですよ。殿下」

「げっ! お前の仕業かよッ」

「突然申し訳ありません。リアム殿下に至急用件があったもので」

 私はニコニコと軽く頭を下げます。頭上からもの凄い視線を感じますが、気のせいということにさせていただきます。

「そ、そうか。リアム殿下か······へへ」

 あぁ? なんでしょうかこの反応は。気色の悪い声を耳元で出さないでください。

「頭上げていいですか?」

「好きにしろ」

 殿下の許可を頂いたので、遠慮無く頭を上げさせて頂きます。決して背伸びをして見下ろそうなどとは考えていません。

「プルプル震えて何してるんだ?」

「ッ······な、何もしていませんッ!」

 なんということでしょう。背伸びをしてもギリギリ目線が合う程度ではありませんか。ご成長なさったようで、大変憎たr···ンっ···微笑ましい限りです。本当に。

 負けず嫌いの血が騒いでいます。リアム殿下の身長がこれ以上伸びないことを祈っています······。と、その時。近くの茂みがガサッと音を立てました。

「か、カイアス様がっ······ふふっ」

 つい堪えきれずに。といった様な笑い声が聞こえてきます。その声にリアム殿下が抱きついてきました。

「うわっ!? だ、誰だ!?」

「··············ご令嬢。そんな所で何をしているのでしょうか」

 貴族のご令嬢らしき人物が地面に。それも草むらの中に居ます。今は授業中のはずですが······覗きが趣味のご令嬢ですかね。

 私は草むらに向けて手を差し出します。どうぞお手をお取りください。という意味を込めて。

「あ、ありがとうございます。ふふっ」

 ご令嬢は私の手に自身の手を重ねました。先程から笑われている気がします。もしかしてバカにされているのでしょうか。

 是非ともお姿を拝見したいものです。そう思い手を軽く引きました。

「な、何故フィオラ嬢がここに?」

 現れた人物に目を見開きます。

 リアム殿下よりも少し薄い金色の髪に。鮮やかな赤紫色の瞳。この学園の制服を完璧に着こなす美しいご令嬢。スカーレット家長女フィオラ・スカーレットその人ではありませんか。
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