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第一部 第二章
三十七話 閑話
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顔と耳を真っ赤にして先頭を歩く少年の姿は、警戒心の強い気まぐれな猫のようだった。
「俺の主人、可愛くないっすか?」
「ああ。からかい甲斐がありそうだな」
「小公爵が殿下を気に入ってくれると嬉しいっす」
後ろに居た殿下の護衛騎士が、頬を掻きながら俺の隣までやって来る。
主君を、それも皇族を可愛いか・・・皇族の護衛になるだけあって、肝が据わってるな。
「本当は動物が好きで、心優しい繊細な方なんです。幼い頃は――いや、なんでも無いっす」
「ほう、殿下にそのような一面があったとは・・・」
言いかけた言葉を聞かなかったことにして、鼻で笑う。
一瞬、前の方から殺気を感じたが、気のせいだと思いたい・・・。
「良ければ殿下の好物を教えてくれないか?」
「う~ん・・・それは難しいっすね。殿下は好き嫌いをしない方なので・・・」
「では、普段は何を食べているんだ?」
「・・・・・・主に毒物っすね。皇族は強くなければいけないっすから・・・・・・」
「なんだと・・・?」
思わず目を見開く。
貴族が毒殺されるのは歴史上珍しいことでも無いが、免疫をつけるために毒を摂取してるのか?
「殿下が毒を食べ始めたのはいつからだ?」
「確か5歳くらいの時からっすね。スープを飲んだ時に突然吐血されて・・・それからずっとっす」
「突然ということは、自ら毒を飲まれた訳では無いのだな・・・・・・」
「陛下の指示で侍従長が"教育"を担当してたっす」
「教育、か・・・」
五歳なら毒の存在すらあまり知らない歳だろう。
幼い頃からそのような教育を受けていたなら、俺を警戒していたのも頷ける。
「殿下はいつも無茶ばかりするんです。さっきだって、自ら魔物の相手をされて・・・」
「あのドボクグモは、騎士たちが倒したものでは無かったのか?」
魔術の痕跡が見えなかったので、てっきり騎士たちが倒したのかと思っていた。
そのことを口にすると、殿下の護衛騎士は納得したように頷いた。
「殿下は血液に魔力を込めることで、自由自在に武器を作れる特殊体質なんすよ。そこらの魔術よりも、殿下の血液の方が断然強いっす」
「血液に魔力を・・・? それは凄いな・・・」
「毎回手首を切るんで、やめて欲しいんすけどね・・・・・・」
魔術師にとって、核は第二の心臓。魔力は第二の血液と言われている。
そのふたつを垂れ流して戦うとは、殿下は想像以上に無ぼ――勇敢なお方なようだ・・・。
顔と耳を真っ赤にして先頭を歩く少年の姿は、警戒心の強い気まぐれな猫のようだった。
「俺の主人、可愛くないっすか?」
「ああ。からかい甲斐がありそうだな」
「小公爵が殿下を気に入ってくれると嬉しいっす」
後ろに居た殿下の護衛騎士が、頬を掻きながら俺の隣までやって来る。
主君を、それも皇族を可愛いか・・・皇族の護衛になるだけあって、肝が据わってるな。
「本当は動物が好きで、心優しい繊細な方なんです。幼い頃は――いや、なんでも無いっす」
「ほう、殿下にそのような一面があったとは・・・」
言いかけた言葉を聞かなかったことにして、鼻で笑う。
一瞬、前の方から殺気を感じたが、気のせいだと思いたい・・・。
「良ければ殿下の好物を教えてくれないか?」
「う~ん・・・それは難しいっすね。殿下は好き嫌いをしない方なので・・・」
「では、普段は何を食べているんだ?」
「・・・・・・主に毒物っすね。皇族は強くなければいけないっすから・・・・・・」
「なんだと・・・?」
思わず目を見開く。
貴族が毒殺されるのは歴史上珍しいことでも無いが、免疫をつけるために毒を摂取してるのか?
「殿下が毒を食べ始めたのはいつからだ?」
「確か5歳くらいの時からっすね。スープを飲んだ時に突然吐血されて・・・それからずっとっす」
「突然ということは、自ら毒を飲まれた訳では無いのだな・・・・・・」
「陛下の指示で侍従長が"教育"を担当してたっす」
「教育、か・・・」
五歳なら毒の存在すらあまり知らない歳だろう。
幼い頃からそのような教育を受けていたなら、俺を警戒していたのも頷ける。
「殿下はいつも無茶ばかりするんです。さっきだって、自ら魔物の相手をされて・・・」
「あのドボクグモは、騎士たちが倒したものでは無かったのか?」
魔術の痕跡が見えなかったので、てっきり騎士たちが倒したのかと思っていた。
そのことを口にすると、殿下の護衛騎士は納得したように頷いた。
「殿下は血液に魔力を込めることで、自由自在に武器を作れる特殊体質なんすよ。そこらの魔術よりも、殿下の血液の方が断然強いっす」
「血液に魔力を・・・? それは凄いな・・・」
「毎回手首を切るんで、やめて欲しいんすけどね・・・・・・」
魔術師にとって、核は第二の心臓。魔力は第二の血液と言われている。
そのふたつを垂れ流して戦うとは、殿下は想像以上に無ぼ――勇敢なお方なようだ・・・。
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