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第一部 第二章

三十八話

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「なんでここに皇族が居るのよ・・・・・・」

「先日皇城で一悶着あったそうじゃないか。その報復に来たのだろう」

「血だらけの姿で会場へ来るなんて・・・北部への宣戦布告と捉えられてもおかしくないわよ・・・」

「公爵家と親交の深い家門しか招待さていないはずじゃ・・・パーティーが台無しじゃない・・・」

「「・・・・・・」」

 エミリオと一緒にパーティー会場へ入場すれば、予想通りの反応が帰ってきた。

 北部の貴族なだけあって、皇族の悪口を言うのにも躊躇が無いようだ。

「注意してきます。殿下はここで――」

「放っておけ。ハエが勝手に騒いでいるだけだ」

「しかし――」

 周囲を無視して、壁に寄りかかる。

 会場へ入るまで気が付かなかったが、何者かにつけられているようだ。

 おそらく、皇帝が送った刺客だろう。

「俺を殺すつもりか?」

 皇帝が俺に尻拭いを押し付けた時点で、違和感は感じていた。

 あの皇帝が、公爵の機嫌を取るような真似をするはずが無いのだ。

 公爵に"皇族を守れなかった"罪を着せれば、北部の勢力を確実に削げる。

 不良品の俺と引き換えに公爵の勢力を削げるなら、皇帝は平気で俺を切り捨てるだろう。

 ――だが、何処か釈然としない・・・。

 皇帝は俺の実力を知っている。

 この帝国で、カディエゴを除いて皇族に勝てる者は存在しない。

 それにも関わらず、刺客を送ってきたということは――狙いは俺以外にあるのか?

「殿下、殺気を抑えてください」

「・・・・・・分かってる」

 周囲を見れば、無数の視線が俺に集まっていた。

 それは獲物を前にした狩人のように鋭い眼光で、北部の貴族が首都の貴族共とは違うことが分かる。

「北部の守護者に敬礼!」

「「ッ・・・!」」

 人々が道を開けるように割れ、向こう側からカディエゴ公爵がやってくる。

 公爵は俺の前で止まると、胸に手を当てて、深くお辞儀をした。

「第三皇子殿下にご挨拶申し上げます。お怪我の具合は如何ですか?」

「ああ、この通り問題無い」

「殿下が遭遇された魔物は、北部でも恐れられている上位種です。解毒薬だけでも・・・・・・」

「皇族である俺に、何かも分からぬ薬を飲めと言うのか? 毒殺でも図るつもりのようだな?」

「・・・失言でした。改めまして、危険な北部まで足を運んでくださりありがとうございます」

「気にするな、公爵。四大公爵家のうちの一つであるカディエゴの招待に応じるのは当然のことだ」

 適当に挨拶を交わし、刺客の気配を探る。

 幸い公爵には気づかれていないようだが、もしも見つかれば俺が真っ先に疑われるだろう。

 一体、何処に潜んでいるんだ?
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