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第一部 第二章
三十六話
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暗殺の心配などしていたのが馬鹿らしくなるくらい、何も起きなかった。
「足元にお気をつけください」
目的地に到着し、先に地に足をつけたエミリオが、手を差し出してくる。
その手を掴んで馬車を降りれば、真っ白に染まった大地と、大きな城があった。
その城は、皇城の比ではないほど大きい。
一際存在感を放つそこは、氷の彫刻のように美しくもあり、要塞のような荘厳な雰囲気もあった。
「改めまして、ようこそお越しくださいました。俺はエミリオ・カディエゴと申します」
「・・・・・・カイル・ハイデルトだ」
胸に手を当て、紳士的な仕草で礼をしたエミリオの、白い髪を見下ろす。
「それでは行きましょうか」
「ああ」
ハルトに後ろにつくよう命じて、公爵家の敷地に足を踏み入れる。
正門を潜ると、噴水と花が俺たちを迎えた。
「あれは魔術具のおかげか?」
「はい。北部で植物を育てようにも、すぐに枯れてしまいますからね」
「お前達には不相応な代物だな」
門を潜ってから寒さを感じないのは、温度を調整する魔術具のおかげだろう。
前世で使っていたエアコンを元に、俺が作った魔術具だ。
「殿下が魔術具の流通を始めてから、北部は寒さに怯える必要がなくなりました」
『ありがとうございます』
穏やかな笑みを浮かべながらエミリオが発した言葉に、俺は目を見開いた。
「顔と耳が真っ赤ですよ。上着を持ってくるよう頼みましょうか?」
「必要ない」
片手で顔を覆って、表情を無にする。
少し感謝されたくらいで、動揺してしまった。
服を脱がされた時もそうだが、エミリオの言動は予測が出来ない。
"残虐の皇子"という仮面を剥がされないためにも、気を引き締めなければ・・・。
暗殺の心配などしていたのが馬鹿らしくなるくらい、何も起きなかった。
「足元にお気をつけください」
目的地に到着し、先に地に足をつけたエミリオが、手を差し出してくる。
その手を掴んで馬車を降りれば、真っ白に染まった大地と、大きな城があった。
その城は、皇城の比ではないほど大きい。
一際存在感を放つそこは、氷の彫刻のように美しくもあり、要塞のような荘厳な雰囲気もあった。
「改めまして、ようこそお越しくださいました。俺はエミリオ・カディエゴと申します」
「・・・・・・カイル・ハイデルトだ」
胸に手を当て、紳士的な仕草で礼をしたエミリオの、白い髪を見下ろす。
「それでは行きましょうか」
「ああ」
ハルトに後ろにつくよう命じて、公爵家の敷地に足を踏み入れる。
正門を潜ると、噴水と花が俺たちを迎えた。
「あれは魔術具のおかげか?」
「はい。北部で植物を育てようにも、すぐに枯れてしまいますからね」
「お前達には不相応な代物だな」
門を潜ってから寒さを感じないのは、温度を調整する魔術具のおかげだろう。
前世で使っていたエアコンを元に、俺が作った魔術具だ。
「殿下が魔術具の流通を始めてから、北部は寒さに怯える必要がなくなりました」
『ありがとうございます』
穏やかな笑みを浮かべながらエミリオが発した言葉に、俺は目を見開いた。
「顔と耳が真っ赤ですよ。上着を持ってくるよう頼みましょうか?」
「必要ない」
片手で顔を覆って、表情を無にする。
少し感謝されたくらいで、動揺してしまった。
服を脱がされた時もそうだが、エミリオの言動は予測が出来ない。
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