第10回歴史・時代小説大賞

第10回歴史・時代小説大賞

選考概要

603作と過去最多の応募があった第10回歴史・時代小説大賞。王道のテーマである人情噺や捕物譚のほかにも、史実をベースにした物語や、ミステリー要素のある作品など、多様かつ魅力的な小説が集まった。

一次選考を通過した22作品の中から検討を進め、編集部内で大賞候補としたのは、「富嶽を駆けよ」「懴悔(さんげ)」「さえずり宗次郎 〜吉宗の隠密殺生人〜」「ふたりの旅路」「若竹侍」の5作品。

選考の結果、登場人物たちの丁寧な心情描写と見事なストーリーが評価された「懴悔(さんげ)」を『大賞』に選出。また、徐々に心を通わせる夫婦の物語「ふたりの旅路」を相応しいテーマ別賞がなかったことから『優秀賞』とし、テーマ別賞として、主人公の力強さが魅力の「富嶽を駆けよ」に『あの時代の名脇役賞』、謎が謎を呼ぶ時代ミステリー「さえずり宗次郎 〜吉宗の隠密殺生人〜」に『江戸を揺るがす捕物譚賞』を授与することとした。さらに一人の侍の生き様を巧みな文章で書き切った短編『若竹侍』を『優秀短編賞』とした。その他、最終選考に残ったものの、惜しくも受賞に至らなかった作品を奨励賞とした。

「懴悔(さんげ)」は、一つの強盗事件がきっかけとなり、徐々に絡まり合っていく人々の数奇な運命を描いた作品。登場人物たちの過去や、それぞれの複雑な思いがしっかりと描かれ、人情噺としても上手く纏められていた点が、編集部内で高く評価された。

「ふたりの旅路」は、様々なトラブルに見舞われながらも懸命に生きる夫婦を描いた作品。先を読ませない構成力の高さが感じられ、登場人物の思惑が交錯するストーリーに引き込まれた。ここからの展開に大いに期待したい。

「富嶽を駆けよ」は、女性初の富士山登頂を成し遂げた実在の人物がモデルの意欲作。特徴的なテーマに加え、迫力溢れる文章と、最後まで読者を飽きさせない物語の展開が見事だった。

「さえずり宗次郎 〜吉宗の隠密殺生人〜」は、徳川吉宗に才能を見出された餌差の主人公が、江戸の怪事件を追う捕物譚。鷹狩りが復活したという時代背景を存分に生かしたキャラクター設定が秀逸だった。

「若竹侍」は、竹細工の得意な侍が、人々との交流を経て自分の生き方を見つける物語。息を呑む剣戟シーンや、温かな人情、揺れ動く主人公の心が高い筆力で鮮明に描かれており、非常に完成度が高かった。

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応募総数 603作品 開催期間 2024年06月01日〜末日

編集部より

盗人として入った家の娘を連れ帰って育てる銀次、血が繋がらないと知っていながらも銀次を慕う鈴、妹の仇を討とうと執念で盗賊を追いかけ続ける源助など、登場人物の気持ちや葛藤がありありと感じられました。また与市が最後の啖呵を切る姿がかっこよく、ラストの展開も胸を打つものがありました。


編集部より

ポイント最上位作品として、”読者賞”に決定いたしました。旧式戦艦を「改造空母」に生まれ変わらせ、戦力を増強していく日本海軍の戦いに心が躍ります。空母や戦艦、戦闘機の描写の巧みさが多くの読者に支持されたのではないでしょうか。


編集部より

さまざまな不幸に見舞われる主人公・志緒が、葛藤を重ねながら成長していく姿に何度も胸を打たれました。また、亡くなったいいなずけ・幸之助の人物像をとらえ直す展開によって人間の複雑さに焦点を当てた深みのある物語になっていました。


編集部より

女性で初めて富士登頂を果たした女傑、という題材に独自性があり、序盤から引き込まれました。特に、後半の山場である富士登山の様子は息が詰まるほどで、命懸けであることのリアリティが十分に伝わります。取材力に加え、高い筆力を感じました。


編集部より

餌差だった宗次郎が、才能を買われて将軍の隠密殺生人として生きることになるという設定が大変魅力的です。また作中、登場人物の思惑が複雑に絡みあっており、最後までとても楽しく読むことができました。


編集部より

日々の生活に苦労しつつも、故郷のしがらみから解放されて江戸で自由を謳歌している主人公の姿が、大変魅力的でした。また、強敵との戦いで勝敗を分けた要因が、お互いの生きざまであったところも斬新で、オリジナリティがありました。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

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