【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

秋.水

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第13話 迷いの森と隷属の呪い

第13-1話 手紙

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○ 手紙
 パーティーも終わり、宿屋で一息つこうとみんなで帰ってくると宿屋の女将さんから声をかけられました。
「お手紙が届いていますよ」と言われて、私は女将さんから手紙を受け取ります。
「紙なんてめずらしいですね。この世界では貴重品なのに」アンジーが言った。余り関心がなさそうです。連絡を取る人がいないからでしょうか。
「この匂いは~」手紙を見ていたエルフィが匂いを嗅いでいる。
「故郷からですね~どうせ早く婿の顔を見せろとか書いてあって~その催促の手紙なのでしょうけど~」私はエルフィにその手紙を渡しました。
「じゃあ開けてみてください」正直、宛名のない白い封筒で蝋付けもしていない手紙なので誰が開けても構わないでしょうけれど。
 エルフィが、指で風を起こして文字通り封を切る。そして読み始めましたが、急に顔が青ざめました。
「何が書いてあるのじゃ?顔色が悪いぞ」エルフィの顔色が変わってモーラが心配になってそう尋ねた。
「森が枯れ始めたらしいです~かなり大問題が発生したみたいですよ~」エルフィの話し方と言っている内容のギャップがありすぎます。しかしそう言った後エルフィは、普段のおちゃらけた顔に戻っています。
「なるほど。それってエルフの里の存続の危機ではないのですか?」私は聞き直しました。
「まあ~あんな里~なくなってしまえば良いのです~」エルフィは、から笑いをして言いました。
 エルフィがその手紙を捨てようとして、ユーリに止められました。
「あなたのご両親や親類は、まだご健在なんでしょう?」メアがそう尋ねます。
「他の兄弟のようにあまり構ってもらっていませんでしたので、愛情はないですね~」エルフィができるだけさらりと言おうとしています。でも感情も伝わってくるのですよ。
「そんなこと言わないでください。あのネクロマンサーの男の子のようにお互いの気持ちがすれ違っているだけかもしれませんよ」ユーリが語気を強める。
「100年も一緒に暮らしているので~そんなことはないと思いますけど~確かにそうですね~この際ですから本音を聞いてきましょう~皆さん一緒に行ってくれますよね~」エルフィはみんなの顔を見ながら言いました。
「もちろんです。皆さんもそうですよね」私の言葉に全員うなずいている。
「とりあえず今日は寝て~明日迷いの森に向かって出発しましょ~」エルフィの淡々とした態度がむしろ気になりますが、まあそうしましょう。
 その日エルフィは、お風呂も断って先に寝てしまいました。
「エルフィさんの腕を握った時にかすかに震えていたのです。それってまずくないですか?」ユーリが私にそう言いました。
「全員と感情がリンクしていますから、エルフィの気持ちは伝わってきていました。明日は早目にここを出発しましょうね」
「はい」
 私達はそう言って寝ました。

 しかし、翌朝にはすでにエルフィが姿を消していました。書き置きを残して。最初に見つけたのはモーラです。
「やっぱりやりおったか」モーラは机に置いてあった紙を読む。読んで私に渡す。私は皆さんに読めるように見やすい位置に広げました。そこには、「ごめんなさい。家族を巻き込みたくありません。探さないでください」と書いていていました。紙の下の方には濡れて乾いた後があります。
「わかっていたのですか?」私はモーラを見ました。
「まさかとは思っていたがな。エルフの里は迷いの森に囲まれていて里の者で無ければ誰もたどり着く事ができない。エルフでないと場所も知らないし、里に着けても入れないとされている」モーラは腕を組んで何か考えています。
「ああ、よそ者である私達を入れたくなかったのですかね」私はちょっとすねてそう言ってみました。
「エルフィは違うじゃろう。わしらを巻き込みたくなかったんじゃろうな」
「私達は家族だというのに」メアが言いました。
「むしろ家族になるために断ち切りに行ったのかもしれんな。聞いてみないとわからんが」
「私たちが直接聞きに行ってもいいんですよね」ユーリが言いました。
「ああ。その森に行き着けて、エルフの里への道を教えてくれるのなら、それは森が通る事を認めたことになると聞いておる」モーラがそう言って場所がどこにあるのか考えているようです。
「急ぎましょう。おっと。皆さんの意見も聞かずに行くつもりになっていました。って聞くようなことでもないですかね」一同うなずいている。
「と言ってもどこにあるのかさえわからないのでは、探しようがないのではありませんか?」メアさんが言った。
「こういう時こそこれまでに培った関係者にお願いするしかないでしょうねえ」私はそう言ってモーラを見ました。
「うむ、たぶん魔法使い達が知っておるかもしれん。ここの魔法使いに聞いてみるか」
「そうしましょう」
「私たちはどうしたらよろしいですか」メアさんは、普段とは違って指示を仰ぎました。
「メアさん達は、情報収集をお願いします。この城塞都市の守衛さん達にエルフが出て行ったかどうかを聞いてください。アンジーはユーリと一緒に入ってきた時の門に、残りはメアさんにお願いします。申し訳ないですが私はモーラと一緒に魔法使いさんのところに行ってみます」
「私はひとりでも大丈夫だから北側の門に向かうわ。ユーリは東の門を」
「では、私は南と西に向かいます」
「メアは、南を先に回ってね。そして西の門で合流しましょう」
「さてモーラ。ここの魔法使いはどこにいますかねえ」
「調べる方法ならあるわ」そう言ってモーラは、膝をつき私の足をつかみながら反対の手で地面に手を触れる。
「魔力をもらうぞ」はいと言い終わる前に一瞬地震が起きる。一般の人には感じられないほどの一瞬の地面の揺らぎでした。
「さてどう対応する」モーラがにやりと笑いながらそのままの姿勢で何かを待っている。
 シュッと風を切る音が聞こえ、足元に矢がささる。石畳なのですが矢が刺さっていますねえ。何という威力でしょう。
「ほほう素早い反撃だ。じゃがそれでは遅いのではないか」刺さっている矢を引き抜いて、モーラは矢に向かって声をかける。
「おや。やはり土のドラゴン様でしたか。物騒な事はしないでください」矢がしゃべりました。
「わしのことを知っているのか」
「こんな事ができるドラゴンはあなた様しかいませんでしょう」
「そういうことか。すまんが急ぎの用件でお主に尋ねたい事がある。会って話せないか」
「わかりました。矢についてきてください」モーラが持っている矢が手のひらの上でくるくると回ったあと止まって方向を示す。
「いそぐのじゃ」モーラが私に抱きかかえるように両脇を開けてみせる。
「はい」私は矢の示す方向に向かって走り始めます。もちろんモーラを脇に抱えて。建物があっても無視して屋根を飛び越えながら走っていきます。到着したのは外壁のあたりで、建物がそもそもありません。
「なるほどな。ここに触ってみるがよい」モーラは、その壁を見ながら言ったので、私がさわってみるとそこには建物がありました。
「ステルス?」
「いいやカメレオンというところか」
「お早いですね。なんのご用でしょうか」声だけしか聞こえませんがそこにいるんですよね。
「エルフの里の場所が知りたいのじゃ。知っているか?」
「大体の位置なら知っています。でも我々だけでは入ることはできませんよ」
「条件が何か知っているか?」
「エルフと一緒なら無条件で入れます。あと里を守っている森に受け入れてもらえれば道が開けます」
「受け入れられる条件は何じゃ」
「そこまでは知りません。ただ強い思いが必要とだけは聞いています」
「ふむ。ここからどのくらいの距離がある?」
「ドラゴンさんなら数時間です」
「そんなにかかるのか」
「ゆっくり飛んでですが、ここからだと西の方向へ飛べばよろしいかと」
「うむ。道を行くなら何日かかる」
「山を越えますから馬車なら1ヶ月ですね」
「単独のエルフの足ならどうですか」私がつい口を出しました。
「そうですね。頑張り方によりますが、たぶん2週間ですか」
「そんなに違うのか」
「ええ、道は真っ直ぐではありません。エルフは森の中をまっすぐつっきって走れますからね」
「魔獣と遭遇するじゃろう」
「エルフは森の中なら逃げ切れますよ」
「そうなんですか」
「わかった。すまぬな隠遁生活なのじゃろう?」
「いえ、ここで薬屋をやっているのです。家だけ秘密なのです」
「お礼は何がいいですか」
「対価をいただけるのですか。土のドラゴン様と一緒という事は噂の魔法使いさんですよね」
「はい。ご存じでしたか」
「噂だけですけど何かいろいろな所に貸しを作っては、うまく世の中を渡っていると聞いていますが、どうなんですか?」
「巻き込まれているだけじゃよ。それが貸しになっているだけじゃ」
「そうなんですよ。で何かありますか」
「ではあの薬草をいただけませんか?」
「それもご存じでしたか」
「私もたった1つだけ売ってもらいまして、深い傷を負った時に使ってしまったんですが、その即効性にびっくりしました。組成とかに興味はありませんが、販売元の魔女さんには何度も売れないと言われて断られてしまいまして」
「転売とかしませんね」
「はい、私の研究は意外と傷を負うことが多いのであれがあると助かります」
「ではこれを」私は焼け残っていた一束を服の中から取り出しました。
「おい!いいのか?手持ちはそれだけなのではないのか?」モーラが慌てて言いました。
「私は、あの魔法使いさんに本当に必要な一般の人に販売して欲しいと言っています。確かに魔女さん達には制限をかけていますが、それは研究のために何個も欲しいと言う本来の目的ではない使い方をするからです。当然必要な人には売りたいと思っています。ですが魔法使いさん良いですか。今後危険な実験は極力しないと誓ってください。この薬を過信するのだけはやめてください。この薬を信用して死なれては後味悪いですから」
「ありがとうございます。確かにこの薬があると無理しても良い気がして欲が出てしまいますね」
「ですから!誰かが困った時に使えるように常備薬として使ってください。あと、他の魔法使いさんに盗まれませんように」
「はいわかりました。やっぱりこうして貸しを作って歩いているんですね」笑い声と共に壁から手が出てきました。
「そうとられてしまうと困りますが、そういうつもりはありません。あとこれはロット番号なしなので、横流しすると確実にばれますから気をつけてください」私はその手に薬草を渡しました。
「大事にします」そう言って手は薬草ごと消えた。
「使う時に使ってください。もったいないとか思って使わないで傷が悪化して死んだら元も子もありませんよ」
「はい、噂とは違ってやさしい人なんですね」
「ほほう、今度はおぬしが教祖様になりそうじゃのう」
「噂ではきっと鬼畜陵辱系の極悪魔法使いですよね私」
「ではすまぬな。時間が無いのでこれで」
「またお会いしたいです」
「この件が一段落したら、エリスさんのいる街へお越しください。きっとそこで住んでいるところがわかると思いますから」
「お伺いします」
「失礼します」
『ご主人様。方向がわかりました。西門から出たようです』
『はい、やはり西門でしたか、アンジーの勘もさすがですね。ですが長旅になりそうなので必要物資を調達しないとなりません。市場のあたりで合流して、そこから馬車で出発しますか』
『はい、買い物は済ませておきます』
『お金は大丈夫ですか?』
『ぬかりありません』
 馬車を受け取りに宿に戻った時、やはり教えを請いたいと尋ねてきた王女勇者一行の魔法使いさんに事情を話しましたところ、あまり詳しくはないけれども大体の位置関係を書いた地図をもらいました。
「当時、エルフの里やドワーフの里を探すために冒険者を使って探索を行ったそうです。結果的には探し当てられず断念しましたが、大体の位置を把握した地図ができました。もちろんエルフの里がどこにあるかはわかりませんが、道があることは確認できています。あと、ドワーフの里の捜索は、うちの国からですと、隣国を越えて行くことになるためそもそも断念しています。余計な事ですが」そう言って
「良いのですか?私は余計な情報は相手に与えるなと言ったはずですが」
「いいえ、もちろんそれは承知の上です。旅の魔法使いさんにこのことを教えて貸しを作って、信頼関係を築くのが得策と判断したのです。いけませんか」
「わかりました。そういうことであればありがたく情報をいただきます。ありがとうございます」
「旅の安全をお祈りしています」
「大丈夫です私たちには天使様がついていますから」
「え?」
「こら!おぬしは」
「あ、冗談ですよ冗談」
「はい承知しています」知っているような口ぶりでその子は言って見送ってくれました。
 出発はすでに夕方近くになってしまいました。それでも門を抜けて道を進みます。
「馬車で行けますかねえ」
「行くしかなかろう。エルフの里とは言え、多少なりとも交易はしておるからエルフの里の者達の荷馬車の跡くらいはありそうじゃ」
「そこに賭けるしかありませんね」
「わしは、ちょっと先に行ってヒメツキと話をしてくるわ」
「ここから飛んで大丈夫ですか?」
「まあしかたがない。攻撃されたらそれまでじゃ。その時はここのドラゴンとの勝負を受けることにする」
「でも、この街に来た時には手を出してこなかったという事は大丈夫なんじゃないの」
「わしが独りになるのを待っている気がするのでなあ」
「なるほど」
「では」しばらく馬車で移動してから野営の準備に入った時にモーラは飛び立った。
「2人もいなくなると寂しいわね」
「そうですね」しょぼくれているユーリ
「エルフィは何か思うことがあったのでしょう。会えばそのわだかまりもきっと解けます」
 さて、モーラのご威光がなくなってしまうとちょっと大きい魔獣は襲ってくる・・・はずです。エルフィほどのレーダーではないですが、私も真似してレーダーをやってみましたけど、かすりもしません。
「おかしいですねえ、モーラの気配がないのですから襲ってきてもおかしくないのですが」
「でも助かります」メアが笑って言った。
「変ですねえ」
 そうこうしているうちに夜になりました。食事の用意をメアさんがしていると。
「敵かもしれませんが何か近づいてきます」ユーリが気付いたようです。
「つけられていたのですかねえ。それで魔物が寄ってこなかったんですねえ」
 こちらが臨戦態勢の状態で待っていると3つの人影がゆっくりと現れる。
「例の3人組ですよ。どうしたんですか」アンジーが慌てている。
 魔族の男はこう言った。
「魔王様からだ。今回の件は森まで護衛しろとさ」いつも通り笑いながら言いました。
「私に殺されそうになったのに?」
「それについちゃ俺は納得しているぜ。しかも傷を治してもらった恩もあるしな」
「そうですか。腕は大丈夫ですか?」
「腕も足も大丈夫だ。あと、こいつらも感謝していたぜ」2人もうなずいている。
「一緒にご飯食べましょう」
「いいのか?お前を殺そうとした奴・・まあ、お前に生かされたんだったな。気にしていないのか」
「そうですねえ。憎しみは何も生みませんから。他のお二人もどうぞ」私は彼の後ろに立っている2人にも声をかける。
 そうして、戦った者同士の不思議な食事が始まった。
「森に行くことは、アンジーから聞いたのですか」
「ああ、魔王様に報告していたよ。律儀だよなお前」そう言ってアンジーを見ました。
「私は恩知らずとは言われたくないです。連絡係としてちゃんと働きますよ」アンジーはスープを飲みながら言った。
「そうか。俺は魔王様に恩はない。だがお前には恩がある。俺を仲間に入れてくれないか」その魔族は言いました。
「ごめんなさい。恩で仲間にはしませんよ。それにあなたはちゃんと今の主人である魔王様に仕えていてください。そして私のような変な人間もいることを回りに話して回っておいてください」
「俺には。俺達にはそんな難しいことはできないな。そんな力も無いから」
「力はつけてください。あなたの仲間と家族を守るための力をね。もし強硬派が魔族内部の穏健派や中立派を粛正し始めたらどうしますか?そしてあなた達が目をつけられたらどうしますか?そのためにも力をつけてください。もし誰かに言われたら私達に脅されたと利用されたと言い逃れてください。私は逆にあなた達を利用させていただきます」
「そういうことか。ああ利用されてやるよ」笑いながらそう言った。
「無茶は禁物です。いいですか、自分と仲間と家族の安全が一番です。その時は私を売っても良いのですから」
「そんなことはできないだろう」あきれているようだ。
「してください。一番大事なものの優先順位でブレないでください。私はいいんです。それで死ぬくらいならそれまでなのですから。その時に私は納得して死ねます」私は笑って言います。だって本心ですから。
「あんたは本当に冷たいわね。どうしてそういう言い方をするのかしら。私たちは常時一緒に過ごしているから、感情もリンクしているからわかるけど、その言葉で通じる人はいないわよ」アンジーはそう言ってから彼に向かってこう言った。
「この人はね、あなたが、自分の大事な者を守るためならこの人を売ってもいいと言っているの。なんてバカでしょう?それが原因でこいつが死んだとしたらそれで悲しむ人がいることを気にしない。残された私たちはどうしたらいいの?復讐?あきらめ?そうならないためにみんなで協力していくんじゃないの?」アンジーは怒って言いました。
「2人ともそういう話は食後にしてください」メアがそこでぴしゃりと言った。
「はい」
「は、はは。いや笑うしかないな」
「なによ」
「これだけ言いたい放題な関係もおもしろいな。わかった。俺は俺のやりたいようにやる。もちろん家族も大事だ。だが、あんたに救われた命をどうつかうかも俺の勝手だ。そうなんだよな」
「せっかく生きているんですからもっと大事に生きてくださいね」
「そうさ大事に生きるさ。まずは魔王様に言われたあんた達の護衛だ」
「それはお願いします。死なない程度に。無理なら逃げてください」
「ああそうさせてもらう。あとな、おまえの事を慕っている獣人がいるんだ。そいつらと話してみることにする。少しはあんたのことを知りたいと思ったのでな」
「いやわかるでしょう。エゴイズムの塊みたいな人だって事は」アンジー辛辣ですね。反論できないところがつらいです。
「だからこそどうしてこんなやつを慕うのか聞いてみたいと思ってな」
「いや本人から聞けば良いじゃないですか」
「はいそこまで。いいですか。他の方がつらそうです」メアが厳しい目で怒りました。そうです食事は楽しくです。
「すいません」
 食後には、これからの警戒シフトを話し合いました。3交代勤務と言う言葉が簡単に出てくる。
「なるほどそういうシフトを組むのか。参考になる」
「魔族さんて夜行性なんじゃないんですか。大丈夫ですか?」
「確かに夜には強いが昼には弱い」
「なら夜だけお願いします。昼間は馬車の中で寝ていてください」
「馬は怯えないのか?」確かにその疑問はもっともです。
「怯えているように見えますか?」私は馬たちの方を見て言いました。
「いいや、そう考えるとすごい馬達だな」驚きながら馬を見ている。
「自慢の馬です」2頭揃って「ヒン」と啼いた

 本当に魔獣に襲われる事なく、馬たちはペース配分を考えながらも全開で走っています。数日後、服がボロボロになったモーラが戻って来ました。
「どうしたんですか」
「とりあえず勝った。しかし通行はこの姿のままでと言うことになったわ」
「そうですか」
「まあ、案の定不意打ちされてなあ。攻撃をかわしながら条件つけたんじゃが、勝っても通行の許可だけと言われたよ。まあ、わしもあせって余計な事を口走って火に油をそそいでしまったからな」
「はあ?」アンジーがあきれている。
「それで通行許可だけになりましたか」
「それが取れただけでももうけものじゃ。あやつは、わしが飛ぼうとした時に襲撃するつもりだったと言っていたからなあ。あの時別行動してよかったわ」
「とりあえずお帰りなさい。着替えはこちらに」メアがそう言って中に招き入れる。
「ああ、すまんって馬車の中に魔族がおるぞ!」モーラはそう言いながら馬車の中に入ってびっくりしている。
「匂いでわからなかったんですか?」
「そんな余裕なかったわ。おうあの時の。どうした魔王様に追い出されたか」
「いや、魔王様の命で私たちの護衛に来てくれました」
「そうか。ゆっくりせい。わしがいれば誰も寄りつかん。寝てても良いぞ。っておやすみ」
 そう言って寝っ転がったモーラはあっという間にイビキをかき始める。
「寝る前にひとつだけ。カンウさんには連絡着いたんですかね」
「いいやだめじゃった」
「そうでしたか」

○森の位置がわかる
 そうして1ヶ月と言われていた旅路を半分の15日くらいで駆け抜けて迷いの森の入り口まで到着しました。魔族の人についてきてもらって助かりました。
「ここから帰られますか」例の3人組に声をかける。
「ああ大丈夫だ。あんたたちこそ頑張れよ」そう言って魔族の3人は帰って行こうとする。
「ここまでありがとうございました。くれぐれも命を大事に生きてください」私は丁寧にお辞儀をして挨拶しました。
「ああ、わかっている」
「それと、魔王様のことよろしくお願いします」
「殺されそうになったおまえが言うのか」
「だって今後の事を考えれば、ごまをすっておくほうがいいのでしょう?」
「はは違いない。でも本当にここまでで良いのかい」
「はい。ではまたお会いできることを楽しみにしています」
「俺もな。では」
 そうして魔族の3人は戻っていった。

 しばらく彼らを見送った後、迷いの森に到着して私は森に話しかけます。
「私はこの森に初めて来ました。DTと申します初めまして」私は森に話しかけます。
「実は私の家族であるエルフ族のエルフィ・ドゥ・マリエールが里に戻っていきました。私達を残して。でも、私達を嫌ったのではなく私達を巻き込みたくなかったのです。どうか彼女にもう一度会わせていただけないでしょうか。彼女は、エルフィは、きっと何か問題を抱えていてそれを解決するためにこの森に、この里に帰ってきたのです。私達は彼女の手助けをしたいのです。どうか私達の願いを叶えてエルフィに会わせていただけないでしょうか」
 風はざわめき、私の頬を髪を耳をそして鼻をくすぐる。手をすり抜ける風もなんだか触っているようだ。私を調べているのでしょうか?私を調べても何も出てきませんよ。だって彼女を心配する心以外は何もないのですから。
 一度森のざわめきがとまり。そして自然な風の流れに戻ると目の前の道がちょっとだけ開けたような感じになった。そうですか行ってみましょうか。
「皆さん馬車に乗ってください。私が先頭を歩きますのでその後についてきてください」私を除き全員が馬車に乗りメアが手綱を握り、全員が御者台に座る。そしてゆっくりと森を進む。
『すまぬな』
『何がですか?』
『この森はあのドラゴンの縄張りではないから空も飛べるのだが上空からでも里は見えなかった』
『この森はそう言うものなのでしょう?』
『どうやらそうらしい。誰の加護なのか守られておるな』 
『今はこの森を抜けましょう』
『ああ』
 そうしてしばらく歩くと森が開けて目の前に木の柱を建てて作られた城壁が見えてきました。ああ、どうやらエルフの里に着いたらしいです。扉らしき所に到着すると。壁の上にある櫓から声がかかりました。
「貴様らどうやって森を抜けてきた。一体何者だ」櫓の中からなのでしょうか。声だけでこちらからは姿が見えません。
「私は旅の魔法使いです。エルフィを尋ねてきました」
「エルフィだと?エルフィは今外に出ている。また来るが良い。森が通したとしても許可無く柵は開けられない」
「なるほど。エルフィが戻るまではここは開けられないと言う事ですか」
「エルフィが来ても長が開ける事を許可しなければ開けない」
「わかりました。待ちましょう。メアさんここで野宿の用意を」
「わかりました。すぐ用意します。食材を確保しに森に入ります。ご許可を」
「そこの見張りさん森の草を取りますけど良いですか?」
「ダメに決まっているだろう。お前らには食べさせない。食べるつもりならここで殺す」
「そうですか。どうしますかねえ」
 私が思案していると。遠くから聞き慣れた声がしました。



Appendix 会話のできる馬の会話
「なあ、今度は魔族を乗せるんやて」
「ああ、魔族ぐらい問題ないやろ」
「せやな、今更やな」
「なのにわしらを見て魔族達が驚いてるで」
「あほか、わしらもっと恐いもんいっつも乗せてるわ」
「そうやで、ドラゴンやぞ、生態系の頂点やぞ、魔族ぐらいでびびるかいな」
「せやけど、ドラゴンは怒らせな静かやけど、魔族はそうはいかんかも」
「ああやばいかもしれん、生意気しとったら因縁つけられそうや」
「静かにしとこか」
「そやな」


Appendix
「ねえ、本当によかったの?」
「しようがねえだろう。命令は必ず守れと魔王様から言われている。俺がそのまま護衛したいと言ってもな。エルフの森には何かあるんだよ。だから魔王様も首を縦に振らなかったんだ」
「そうなのかい」
「たぶんな」


続く

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