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第48話 あけおめナインズ!!

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新年になって最初の週末。


ナインズも新年早々から練習を始めた。



「明けましておめでとう!!」
『おめでとうございます!!』




佐藤コーチの力強い声を聞いて身が引き締まるナインズメンバー。


3年生も引退していよいよ祐輝も2年生になる。


学年はまだ1年生だがナインズでは2年生になっている。


それは何故か?




「おーしじゃあ新1年坊主こっち来い!!」




小学校6年生が徐々に練習に参加を始めているからだ。


中学生になって何処のチームに所属するかはそれぞれが決める。


ナインズを選ぶ者もいればキングスを選ぶ者。


はたまた別のチームを選ぶ者もいる。


そしてナインズを選んだ小学生が来ている。




「おー今年は多いなあ!! 2年は3人だけどな! はっはっは!!!」




既に練習に参加している小学生は20人もいた。


祐輝は気にしていなかったが健太は不安そうに祐輝の隣にくる。


20人も集まっている小学生は祐輝達2年生にとっては大切な後輩だがそれと同時にライバルとなる。


たった3人しかいない2年生は自分のポジションを後輩に取られるかもしれない。


間もなく3年生になる佐藤コーチの息子の雄太達は同級生だけで15人もいる。


そして佐藤コーチは全員を集めると口を開いた。




「じゃあまだ決定じゃないが新1年が入ってきたらチームを2つに分ける。 3年生だけのAチームと1,2年生のBチームだ。 Bチームのコーチには鈴木にやってもらう。」




鈴木コーチ。


それは去年までは就活生だった大学生のコーチ。


今年から正式に社会人となって土日の休みをナインズの練習に費やしてくれる。


彼もかつてはナインズの選手だった。




「鈴木です。 みんなよろしく。」
『お願いします!!』
「俺はAチームの監督になるからな。 2年坊主! 鈴木コーチにしっかり教えてもらえよ!」




当然と言えば当然だが祐輝は不安だった。


甲子園のマウンドにも立った事のある歴戦の佐藤コーチの指導を受けられるのは貴重だった。


ずっと教えてもらいたかったが佐藤コーチにだって息子がいる。


雄太の最後の一年間。


今までも佐藤コーチのBチームに所属していた。


そして3年生を大間総監督が見ていた。


しかし今回は佐藤コーチの息子がいるという事で佐藤コーチがAチームの監督になった。


大間総監督は去年に子供が産まれて練習に参加する頻度が減ってしまった。


チームが別れると共に練習する機会も減ってしまう。


祐輝は不安だった。


すると鈴木コーチが近づいてきて祐輝達、2年生を見ている。




「キャプテンどうすっか?」
「えっと・・・」
「じゃあ健太。 決まり。」
「え?」




鈴木コーチは即座にキャプテンを健太に任せるとグラウンドに入っていった。


3年生はその日は解散して家に帰った。


佐藤コーチは腕を組んで祐輝達の練習を見ている。


祐輝は佐藤コーチの隣にいった。




「どうした? 不安か?」
「はい・・・」
「鈴木はな。 内野手が本職だからなあ。 でも朗報だ。 あいつには弟がいてなあ。 翔太って言うんだがな。 あいつは名門高校のエースだぞ。」
「来てくださいますかね?」
「たまには顔出してくれるんじゃないか? まあ頑張らんかい! 時間ある時は練習見てやるから何でも聞け。 俺の息子の最後の一年だからな。 すまん!」





祐輝はその時感じた。


よくよく考えれば佐藤コーチは息子の雄太のためにナインズの練習に来ているのだと。


当然だが大切な息子だ。


そんな雄太と共に野球ができる最後の一年間。


高校に行けば佐藤コーチは共に野球はできなくなる。


学校にある部活に所属して教師が監督になって活動する。


会社員の佐藤コーチは練習には参加できない。


つまり共にユニフォームを着てグラウンドに立つのはこれが最後。


佐藤コーチだって息子達に集中したいはず。


それにナインズは例年この様なチーム編成をしていた。


キングスなんてAからCチームまであった。


各学年でチームを作れるほど人数に余裕がある。


祐輝は虚しかった。


そして雄太が羨ましかった。


同時に自分の父親には来てほしいとは思わなかった。


どうせ来てもネチネチと嫌味を言うだけで佐藤コーチの様に怒鳴って、真剣には向き合ってくれないと。


思うことはたくさんあるがこうしてナインズの新体制は始動した。
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