青春聖戦 24年の思い出

くらまゆうき

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第47話 将来の夢はありますか?

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祐輝の家で雑煮を食べている。


正月番組を観ながら楽しげな食卓だ。



「ミズキちゃんおかわりどう?」
「お願いします!!」



にぎやかな食卓に真美も参加して雑煮を食べ始めた。


真美はミズキの顔を見て優しく微笑んでいる。




「それにしても祐輝と仲良くしてくれてありがとうねえ。」
「いえいえ。 ふふ。」
「祐輝も優しくしてあげなさいよ。」
「あ、うん。」
「聞いてるの?」
「聞いてる聞いてる。」
「もう。 ミズキちゃんは将来の夢とかあるの?」




真美は特に深い意味はなく質問したが、ミズキは恥ずかしそうに顔を赤くしている。


チラリと祐輝が見ると目をそらして下を向いた。


真美は不思議そうに祐輝を見ると気まずそうにしていた。




「あ、あれだ。 俺はプロになって活躍する。」
「わ、私はそのお。 パティシエになりたいかなあ。」
「いいね。 ミズキ家庭科の調理実習美味いもんな。」
「あらーそうなのー!」




ミズキの将来の夢は祐輝と結婚したいなんてとても言えなかった。


パティシエの夢も嘘ではなかった。


嬉しそうに話を聞く真美は祐輝の顔を見た。




「俺はプロ。」
「勉強だけはちゃんとしておきなさいよ。」
「うん。 歴史と国語はやってる。 あ、あと英語もやってる。」
「そうなんですよー祐輝君は英語も成績良いんですよ!」
「へー。 意外だわあ。 あんたが英語ねえー。」
「メジャーリーグ行くからね。」




祐輝は本当に自分に必要な事以外は学ぼうとしない癖があった。


数学も割り算まで覚えるとまるで興味がなくなり、理科に関してはほとんど覚えていない。


日常生活で必要な事しか学ばなかった。




「大体因数分解や動物の解剖なんて何処で使うんだよ。 学者になりたい奴だけ先行して学べばいい。」
「ま、まあね。 私も解剖や虫は苦手だなあ・・・」
「それより政治や経済学の授業入れた方が絶対にいいよね。」
「難しそう・・・」
「だから覚える価値があるんだよ。」




中学生の祐輝が言っている事は最もかもしれない。


因数分解を社会に出て使う事はまずない。


理科の知識も役立つ事はそうそうない。


歴史も国語も英語も確かに役に立つし、祐輝は体育の成績もいい。


どの企業に就職しても役に立ちそうだ。


自慢気に祐輝は雑煮を食べていると真美が呆れた表情をしていた。




「もー偉そうな事言っても全部の科目できないと高校行けないのよ。」
「野球で行くから。」
「もーどう思う? ミズキちゃん。」
「え、えっと・・・私が祐輝君に理科と数学教えます! 祐輝君にも歴史を教えてもらっていますから!」
「ミズキ15代将軍。」
「徳川慶喜!」
「正解。」





ミズキは嬉しそうに笑っている。


しかし真美の表情は笑っていなかった。


息子ながらバカとは思わない。


しかし社会に出られるのか不安ではあった。


やりたい事だけやれるほど日本は甘くない。


この国で仕事をしていくのはつまらなく、長いだけ。


苦労が多くあり楽しい事は少ない。


真美も祐一と結婚する前に味わった事だった。




「もーあんたしっかり勉強しなさいよ。 ミズキちゃんに教えてもらってないで自分で勉強しなさい。」
「必要ないもん。 理科なんて。 政治経済の授業入れてくれないかなあ。」
「だったら政治家にでもなって法案でも通しなさい。」
「政治家なんて信用できないよ。 そんな金もないでしょ。」




簡単に政治家といっても莫大な資金は必要となる。


祐輝達にそんな資金はなかった。


それに何より、祐輝は野球にしか興味はなかった。


呆れる真美を見て少し気まずそうにミズキはしている。


すると雑煮を食べ終わった祐輝はミズキが食べ終わるのを見て席を立った。




「ミズキ家まで送るよ。」
「いいの?」
「新年のランニングがてらね。」
「ありがとう。」




そしてミズキを連れて家を出ていった。


真美は皿を洗いながら不安そうな表情をしていた。
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