戦国男子高校生に言い寄られてます!?【完結】

remo

文字の大きさ
81 / 92
iiyori.09

09.

しおりを挟む
「穂月、…」

達磨法師が起こす大地が裂けるほどの強風の中、ただ一人、志田穂月だけが立っていた。

その手に時切丸を持ち、しっかりと軍馬を駆る。羽間合同軍も志田連合軍も進むことも退くこともかなわず、千々に伏せりながら強風をしのいでいる中を、悠然と進んできた。

「お、…お前、父に刃を向けるのか」

晴信も未だ地べたに這いつくばったまま、すぐ目の前で馬上から見下ろす息子を真っすぐに見返すことも出来ない。

「父上、不毛な争いはやめて、同盟を結びましょう。これより、志田領は私が預かります」

「な、な、なにを、…――――――」

一方的な息子の言葉に頷けるはずもない晴信だが、吹きすさぶ強風に動くことはおろか、声を上げることもままならない。

「皆の者、これより志田の家督は私が継ぎ、父上には引退して頂きます」

凛とした志田穂月の声が谷にこだまする。
あたかも、神のお告げかのように。

「お、…おお、穂月様、…――――――っ」

朝日の中、一人だけ凛と立つ志田穂月は、何物をも寄せ付けない圧倒的な神々しさがあった。

自ずと志田軍は全兵、平身したまま穂月への敬意を示した。達磨法師の言う神の裁きとは、このことだ。低頭する志田軍に異を唱える者はいない。

元々、志田の兵士や領民には、自分たちを駒としか考えない晴信のやり方に不満を抱く者も多くいた。今回の戦いも、兵の数から負けるのは歴然、自分たちは捨て駒で、晴信の意地とプライドのためだけの対戦だと分かっていた。

晴信様が退かれ、穂月様の時代に、…

ただ、一切の情けを持たぬという時切丸の遣い手である志田穂月がその場で父親を切り捨てず、和平同盟を口にしたことは驚きではあった。

穂月様は変わられた。
我々を守るために家督を継ぐのだ。

こうして、かつてない大乱を予感させた志田・羽間の合戦は、一人の血も流すことなく和平同盟をもって終了し、志田藩は晴信から穂月に引き継がれた。志田晴信は藩主を引退して志田城を離れ、地方にある同盟藩へと移っていった。

その際、多くの家臣や家財を引き連れて行ったが、その中に新たに側室に迎え入れられた三姫の姿があった。

三宮寺で志田穂月に化身して達磨法師を従わせた三姫は、陣の谷で達磨法師と霊力を共鳴させて合戦を停止させ、穂月が新藩主になって同盟が締結されると、消えていなくなった。

それからは、どんなに呼んでも浮遊して現れることはなく、志田城の奥にある三姫の部屋を訪ねると、もう、『在処離あくがれ』ていないからいいのだ、と仰せになった。それは酒豪で剛毅な三姫とは別人のような見た目通りの可愛らしい姫君で、お腹に晴信の子がいるので共に行くのだ、とひどくさっぱりとした顔でお笑いになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

還暦妻と若い彼 継承される情熱

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...