上 下
18 / 25
第1章

この世界について【魔法編】

しおりを挟む
 「では早速、この世界の魔法について学んでいきたいと思います!」
 
 昨日の夜約束した通りに、僕たちはこの世界について知るため、侯爵家の中にある図書館へ赴き、参考になりそうな本を借りて机に向かっている。
 勉強するのは久しぶりな気がするので、少しワクワクしている。
 
 「まずは、魔法の起源からかな。といっても、伝説しか残ってないけどね」





 ーー遥か昔、この世界の創造神と、記憶の女神との間に生まれた9人の娘たちがいた。
〈歴史〉の守護者である『クリオ』、
〈喜劇〉の守護者である『タリア』、
〈悲劇〉の守護者である『メルポメネ』、
〈舞踊〉の守護者である『テルプシコレ』、
〈恋愛詩〉の守護者である『エラト』、
〈賛歌〉の守護者である『ポリュムニア』、
〈天文学〉の守護者である『ウラニア』、
〈叙事詩〉の守護者である『カリオペ』、そして
〈抒情詩〉の守護者である『エウテルペ』。
 彼女たちは、この世界にそれぞれ国を創った。
 クリオは〔マリーノ〕
 タリアは〔カメディア〕
 メルポメネは〔トゥラグエ〕
 テルプシコレは〔ベリー〕
 エラトは〔ヴェルレーヌ〕
 ポリュムニアは〔ラシーヌ〕
 ウラニアは〔アストロン〕
 カリオペは〔ユーカラ〕
 エウテルペは〔ウィール〕を。
そして、それぞれ時代に沿って人間が支配していくようになり、王国ができた。今では、9人の女神は、合わせてミューズと呼ばれている。
 
 「僕たちが住んでいるウィール王国はエウテルペが創った国なんだね!ルテと名前1文字違いだ!」
 確かに、小説の悪役をなんで重要な名前にしたんだろう。疑問が深まるばかりだ。
   
 9国全てが独立して王国となっているが、どこかの国が帝国を作ろうと他国に攻めて、戦争が度々起きている。ウィール王国は一応中立を保っているが、いつ戦争が起きてもおかしくない状態。もちろん、仲良くしている国の方が多いため貿易が盛んに行われていて、ウィール王国は栄えている方だ。特にユーカラ王国やヴェルレーヌ王国、アストロン王国とは特別仲が良い。
 今現在戦争が起きているところは、カメディア王国とトゥラグエ王国。この2国は昔からお互い仲が悪く、しょっちゅう戦争したり休戦したり。ウィール王国はあまり関わらないようにしている。

 「次は本題の魔法についてだね」
 
 ミューズは、それぞれ自分の力を使って一つずつ魔法の素となる魔素(マナ)を創り出し、人間がそれを使えるように、魔力の器を与えた。器の大きさは人それぞれで、遺伝との関連性はないとされているが、エウテルのように、赤い瞳を持つ人間は比較的器が大きく、膨大な魔力を持つらしい。それも、悪魔の子と忌避されている理由の1つというわけだ。
 
 「でも、なぜかルテは魔力が少なかった。小説のルテの心が荒れる原因の一つにもなっている。使用人には、悪魔の子のくせにって罵られていたらしい...」
 「そんなことが...」
 
 おそらく、外伝に書いてあったのだろう。
 キタラ家の元使用人たちは、どこまでも心が腐っているらしい。

 続きを読んでみる。ミューズが創り出した魔法は、炎・風・水・氷・雷・緑・土・光・闇の9種類。そこから派生して、この前使ったような防音魔法や、日常的に使う浄化魔法、回復魔法などができた。これも、どの性質を持って生まれるかは人それぞれで、1つの人もいれば複数の人もいるし、後天性の人もいる。史上最多は5つだそうだ。5つの性質を持つ人は9人おり、最初にミューズから器を与えられたと伝説になっている。その9人は各国で王となり、国を治めたという。加えて、全員が魔力の器を持つ分けではなく、5つの性質を持つ初代国王の血を受け継ぐ王族、王族の血筋の派生である貴族以外は魔力の器がない人もいる。魔力の器がある平民は、発源すると名字が与えられ、ある程度の地位を取得することができる。
 
 また、光の性質をもつ人間は希少であり、光魔法自体がどの魔法よりも強く、特に回復に特化した魔法のため、光魔法を使う人間は聖者と呼ばれ、平民であれ貴族であれ、保護対象となる。逆に闇魔法は、儀式を交えてでしか手に入れることができない、非常に危険な魔法。儀式には何らかの代償が必要で、どの国でも禁止されている。光と闇は相反している魔法のため、光魔法を使えば、闇魔法を消し去ることができる。

 魔力を持つ人は、自分の魔力の性質が決まる15歳から学校に入学することが決まっている。殆どが貴族だが、稀に平民も入学してくることがある。

 「それが、小説の主人公のメニル・リードレってわけだね」

 メニルは、9歳にして魔法に目覚め、リードレという名字をもらった。さらに、メニルは水、風魔法に加え光魔法の性質も持っていた。それに気づいた教会の人間は、メニルを保護下におき、教会に通わせて貴族と同等の教育を施すことにした。そして、15歳になり、ウィール国立学園に入学する...

 「僕は炎と雷と水だっかな。ルテは、緑と土だよね」
 エウテルは比較的価値の低い緑魔法と土魔法だった。加えて運動神経も悪く、勉強も中の下だったらしい。顔はめっちゃいいけどフィジカルはちゃんと平凡だったんだな...

 「外伝にしか書いてないのって、ちょっと意地悪だよね...ルテが可哀想」
 「作者はどういう意図だったんだろう...」
 ただの気まぐれなのか、何かしらの意図があったのか。
 
 「今日は、ここまでにしよっか」
 結構な情報量だった。まだまだ知っておかなければならないことが沢山あるのに、この先大丈夫かな..
 
 「明日は小説の登場人物を思い出していこう!」
 「そうだね、一番重要かも」
 味方にできる人がどれくらいいるか..
 
 出来れば、メニルとのいざこざもなく平和に卒業できるのがベストかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

【完結】欠陥品と呼ばれていた伯爵令息だけど、なぜか年下の公爵様に溺愛される

ゆう
BL
アーデン伯爵家に双子として生まれてきたカインとテイト。 瓜二つの2人だが、テイトはアーデン伯爵家の欠陥品と呼ばれていた。その訳は、テイトには生まれつき右腕がなかったから。 国教で体の障害は前世の行いが悪かった罰だと信じられているため、テイトに対する人々の風当たりは強く、次第にやさぐれていき・・・ もう全てがどうでもいい、そう思って生きていた頃、年下の公爵が現れなぜか溺愛されて・・・? ※設定はふわふわです ※差別的なシーンがあります

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

溺愛お義兄様を卒業しようと思ったら、、、

ShoTaro
BL
僕・テオドールは、6歳の時にロックス公爵家に引き取られた。 そこから始まった兄・レオナルドの溺愛。 元々貴族ではなく、ただの庶子であるテオドールは、15歳となり、成人まで残すところ一年。独り立ちする計画を立てていた。 兄からの卒業。 レオナルドはそんなことを許すはずもなく、、 全4話で1日1話更新します。 R-18も多少入りますが、最後の1話のみです。

死に戻り悪役令息が老騎士に求婚したら

深凪雪花
BL
 身に覚えのない理由で王太子から婚約破棄された挙げ句、地方に飛ばされたと思ったらその二年後、代理領主の悪事の責任を押し付けられて処刑された、公爵令息ジュード。死の間際に思った『人生をやり直したい』という願いが天に通じたのか、気付いたら十年前に死に戻りしていた。  今度はもう処刑ルートなんてごめんだと、一目惚れしてきた王太子とは婚約せず、たまたま近くにいた老騎士ローワンに求婚する。すると、話を知った実父は激怒して、ジュードを家から追い出す。  自由の身になったものの、どう生きていこうか途方に暮れていたら、ローワンと再会して一緒に暮らすことに。  年の差カップルのほのぼのファンタジーBL(多分)

【完結】役立たずの僕は王子に婚約破棄され…にゃ。でも猫好きの王子が溺愛してくれたのにゃ

鏑木 うりこ
BL
僕は王宮で能無しの役立たずと全員から疎まれていた。そしてとうとう大失敗をやらかす。 「カイ!お前とは婚約破棄だ!二度と顔を出すんじゃない!」  ビクビクと小さくなる僕に手を差し伸べてくれたのは隣の隣の国の王子様だった。 「では、私がいただいても?」  僕はどうしたら良いんだろう?え?僕は一体?!  役立たずの僕がとても可愛がられています!  BLですが、R指定がありません! 色々緩いです。 1万字程度の短編です。若干のざまぁ要素がありますが、令嬢ものではございせん。 本編は完結済みです。 小話も完結致しました。  土日のお供になれば嬉しいです(*'▽'*)  小話の方もこれで完結となります。お読みいただき誠にありがとうございました! アンダルシュ様Twitter企画 お月見《うちの子》推し会で小話を書いています。 お題・お月見⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/804656690/606544354

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

処理中です...