鬼の御宿の嫁入り狐

【書籍化します!】【第6回キャラ文芸大賞/あやかし賞 受賞作】

 鬼の一族が棲まう隠れ里には、三つの尾を持つ妖狐の少女が暮らしている。

 彼女──縁(より)は、腹部に火傷を負った状態で倒れているところを旅籠屋の次男・琥珀(こはく)によって助けられ、彼が縁を「自分の嫁にする」と宣言したことがきっかけで、羅刹と呼ばれる鬼の一家と共に暮らすようになった。

 優しい一家に愛されてすくすくと大きくなった彼女は、天真爛漫な愛らしい乙女へと成長したものの、年頃になるにつれて共に育った琥珀や家族との種族差に疎外感を覚えるようになっていく。

「私だけ、どうして、鬼じゃないんだろう……」

 劣等感を抱き、自分が鬼の家族にとって本当に必要な存在なのかと不安を覚える縁。
 そんな憂いを抱える中、彼女の元に現れたのは、縁を〝花嫁〟と呼ぶ美しい妖狐の青年で……?

 育ててくれた鬼の家族。
 自分と同じ妖狐の一族。
 腹部に残る火傷痕。
 人々が語る『狐の嫁入り』──。

 空の隙間から雨が降る時、小さな体に傷を宿して、鬼に嫁入りした少女の話。
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