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第103 新しい治療法
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「貧血の治療とは、一体どのような治療なのですか?」
するとウォルター様はいつになく真剣な眼差しで言った。
「それはね、『輸血』と言う治療だよ」
「ユケツ…ですか?」
初めて聞く言葉に首を傾げた。
「そう、血が足りなくなると貧血が起きる。今のアゼリアがまさにその状態だ。だから足りなくなった血を補う為に別の血液をアゼリアに入れて上げる治療法だよ」
「血を入れる…そんな事が可能なのですか?」
「ああ、輸血が出来るようになったなんて…これも医学が発達したお陰だよ。でも輸血するには同じ血液型しか出来ないんだ。その為にまずはアゼリアの血液型を調べなくてはね。今から採血させてもらってもいいかな」
「はい」
私は袖をまくった。
「よし、それじゃ早速やってみようか…」
ウォルター様は鞄を開けると注射器を取り出した―。
****
「よし、採血も終わったことだしこれからすぐに大学病院に持ち帰ってアゼリアの血液型を調べてくるよ。明日には結果が分かると思うからね。とりあえず、今日は点滴で栄養を入れておこう」
「宜しくお願いします」
私はベッドに横たわったまま、ウォルター様を見た。
それから10分後―
「よし、これでいいだろう。これで大分身体が楽になるはずだよ」
ウォルター様は私の腕に刺した注射針の様子を見ながら声を掛けてきた。
「ありがとうございます」
「ヨハン先生にはアゼリアが今点滴中だということを伝えておくよ。多分1時間程で終わると思うからね。アゼリア用に薬も調合しておいたからヨハン先生に渡しておくから、後で必ず飲むんだよ?」
「はい、分かりました」
「それじゃ、明日また来るよ。」
ウォルター様が席を立った。
「え…?お忙しいのに…明日も来て頂けるのですか?」
「ああ、勿論だよ。アゼリアの主治医はヨハン先生と私だからね。アゼリアの為に最善を尽くすと誓うよ」
「ありがとうございます…」
ウォルター様の温かい言葉に思わず涙ぐみそうになる。
「ゆっくり休むんだよ」
ウォルター様は帽子をかぶり、鞄を持つと思い出したように言った。
「そうそう、マルセルから話を聞いたよ。…カイザード王太子様と結婚するんだって?」
「!」
突然の言葉に驚くと同時に、罪悪感がこみ上げてくる。
「申し訳…ございません…」
「何故謝るんだい?」
ウォルター様が不思議そうに首を傾げてきた。
「それは…マルセル様と婚約解消して間もないのに…別の方と…」
するとウォルター様が言った。
「そんなのは気にする必要はないよ。マルセルに落ち度があったのだから」
「いえ、マルセル様に責任はありません」
「だが、フレーベル家の話ばかり鵜呑みにしていたのは事実なんだ。アゼリアは気にすることはない。それにね、マルセルはアゼリアの結婚の話を喜んでいたよ。幸せになってもらいたいと言っていたよ」
「そうだったのですか…」
「国王陛下も結婚の話を快諾してくれたそうじゃないか?おめでとう。アゼリアのご両親も一緒にこの町で暮らすのだろう?」
「はい。リンデンには王族が所有する別宅があるそうなので。ここから馬車で30分程の距離だそうです」
「そうかい…実のご両親に愛する男性とも一緒に暮らせるなんて、本当に良かったね」
ウォルター様は笑顔で言う。
「ありがとうございます…」
お礼を述べながらも、私の胸中は複雑だった。私は…マルセル様に自分から婚約破棄を願い出たのに…。
「それじゃ、そろそろ私は行くよ。アゼリア、また明日」
「はい。お気をつけてお帰り下さい」
点滴を受けながら私はウォルター様に挨拶した。
扉が静かに閉じ、再び室内には私1人となった。今日は午後2時からカイがお見舞いに来てくれる事になっている。
それにしてもウォルター様の言葉には驚いた。まさかマルセル様から私がカイと結婚する話を聞かされていたなんて。
マルセル様と私は先生が決めた婚約者同士で、そこにマルセル様の意思は無い。
私と言う足かせが無くなった今こそ、マルセル様には幸せになってもらいたい…。
そう願わずにはいられなかった―。
するとウォルター様はいつになく真剣な眼差しで言った。
「それはね、『輸血』と言う治療だよ」
「ユケツ…ですか?」
初めて聞く言葉に首を傾げた。
「そう、血が足りなくなると貧血が起きる。今のアゼリアがまさにその状態だ。だから足りなくなった血を補う為に別の血液をアゼリアに入れて上げる治療法だよ」
「血を入れる…そんな事が可能なのですか?」
「ああ、輸血が出来るようになったなんて…これも医学が発達したお陰だよ。でも輸血するには同じ血液型しか出来ないんだ。その為にまずはアゼリアの血液型を調べなくてはね。今から採血させてもらってもいいかな」
「はい」
私は袖をまくった。
「よし、それじゃ早速やってみようか…」
ウォルター様は鞄を開けると注射器を取り出した―。
****
「よし、採血も終わったことだしこれからすぐに大学病院に持ち帰ってアゼリアの血液型を調べてくるよ。明日には結果が分かると思うからね。とりあえず、今日は点滴で栄養を入れておこう」
「宜しくお願いします」
私はベッドに横たわったまま、ウォルター様を見た。
それから10分後―
「よし、これでいいだろう。これで大分身体が楽になるはずだよ」
ウォルター様は私の腕に刺した注射針の様子を見ながら声を掛けてきた。
「ありがとうございます」
「ヨハン先生にはアゼリアが今点滴中だということを伝えておくよ。多分1時間程で終わると思うからね。アゼリア用に薬も調合しておいたからヨハン先生に渡しておくから、後で必ず飲むんだよ?」
「はい、分かりました」
「それじゃ、明日また来るよ。」
ウォルター様が席を立った。
「え…?お忙しいのに…明日も来て頂けるのですか?」
「ああ、勿論だよ。アゼリアの主治医はヨハン先生と私だからね。アゼリアの為に最善を尽くすと誓うよ」
「ありがとうございます…」
ウォルター様の温かい言葉に思わず涙ぐみそうになる。
「ゆっくり休むんだよ」
ウォルター様は帽子をかぶり、鞄を持つと思い出したように言った。
「そうそう、マルセルから話を聞いたよ。…カイザード王太子様と結婚するんだって?」
「!」
突然の言葉に驚くと同時に、罪悪感がこみ上げてくる。
「申し訳…ございません…」
「何故謝るんだい?」
ウォルター様が不思議そうに首を傾げてきた。
「それは…マルセル様と婚約解消して間もないのに…別の方と…」
するとウォルター様が言った。
「そんなのは気にする必要はないよ。マルセルに落ち度があったのだから」
「いえ、マルセル様に責任はありません」
「だが、フレーベル家の話ばかり鵜呑みにしていたのは事実なんだ。アゼリアは気にすることはない。それにね、マルセルはアゼリアの結婚の話を喜んでいたよ。幸せになってもらいたいと言っていたよ」
「そうだったのですか…」
「国王陛下も結婚の話を快諾してくれたそうじゃないか?おめでとう。アゼリアのご両親も一緒にこの町で暮らすのだろう?」
「はい。リンデンには王族が所有する別宅があるそうなので。ここから馬車で30分程の距離だそうです」
「そうかい…実のご両親に愛する男性とも一緒に暮らせるなんて、本当に良かったね」
ウォルター様は笑顔で言う。
「ありがとうございます…」
お礼を述べながらも、私の胸中は複雑だった。私は…マルセル様に自分から婚約破棄を願い出たのに…。
「それじゃ、そろそろ私は行くよ。アゼリア、また明日」
「はい。お気をつけてお帰り下さい」
点滴を受けながら私はウォルター様に挨拶した。
扉が静かに閉じ、再び室内には私1人となった。今日は午後2時からカイがお見舞いに来てくれる事になっている。
それにしてもウォルター様の言葉には驚いた。まさかマルセル様から私がカイと結婚する話を聞かされていたなんて。
マルセル様と私は先生が決めた婚約者同士で、そこにマルセル様の意思は無い。
私と言う足かせが無くなった今こそ、マルセル様には幸せになってもらいたい…。
そう願わずにはいられなかった―。
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