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繁栄
人型の生き物達
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母熊とカクカミの戦闘が始まったらしい。
カクカミには呼び掛けに応じない場合のみ制圧して良いと念を押していたおいたから、話し合いは無理だったのだろう。
どちらも大怪我をしないように解決できる事を祈る。
私達は何が出来るだろうか?
先程人影の様なものを見た気がするけど、母熊はそれを狙っていたのではないだろうか?だとしたら怪我をしている人がいるかも知れない。もう少し近づいて探してみる。
周りに気を配りながら少しずつカクカミ達の方へ近付く。
すると、ガザガサと音がして茂みから何かが飛び出して来た。
現れたのはニ人。犬の様な頭をした人間だった。いや、人間とは言い難いか。
身長は140センチ前後、服の様なものの上に革製の胸当てを身につけているが全身は毛で覆われていて、犬か狼が二足歩行していると言った方が正しいかも知れない。
一人を支えながら何とか逃げて来たという様子だった。
「な、なんだアンタら……?」
支えていた方の犬頭が警戒しながら聞いてくる。じっと見ていたらコボルトという名前の種族だと分かった。
「私は泉の精霊のハル。こっちは息子の颯太よ。」
「世界樹の精霊のソータだよ。君達あのアルカスに襲われてたの?」
颯太が聞くと、支えられていた方が苦しそうにしながら答えてくれる。
「そうだ。この先に俺たちの住処がある。これ以上あの化け物を近付ける訳にはいかん。」
傷が深く苦しそうだ。
「まずは怪我の手当てをしないと。」
私は《成分複製》を使って泉の水を両手で作った器いっぱいに溜めると血の出ている部分に少しずつかけていく。
切り傷や擦り傷が全身にあって痛々しい。しかし水を掛けるとあっという間に跡形もなく治っていった。
「な、なんだこれは……痛くないぞ!?」
「兄者!本当に傷が消えて……!?」
この二人は兄弟だったみたいね。
「さあ、これで動けるでしょう。今戦っているツノの生えた動物の方は私の家族です。あの子が戦っている間は大丈夫だけど、念の為住処に帰って避難をしなさい。」
「あなた達は一体……いや、助かりました。すぐに戻って全員で避難します。」
兄の方がそう言って二人で走って行く。
「いい事したね、お母さん。」
「そうね。他にも巻き込まれている生き物がいないか注意して行きましょう。」
手を繋ぎ直してゆっくり進んで行く。太い木々が薙ぎ倒されているものの、この辺りには怪我をした動物はいないみたい。
カクカミの様子を見ると、自分の倍はあろうかという体躯の母熊と互角以上の戦いをしていた。それでも制圧できないでいるのは、極力傷付けまいと加減をしているからだろう。
また茂みの方からガザガサと音がする。
今度は人に近い生き物だった。
背丈はさっきの犬頭とほぼ同じ、衣服の様なものを着ているが防具の様なものは身につけていない。全身は毛で覆われている訳ではなく、肌の色は土色。鋭い目つきに尖った耳。手には石斧を持っている。
人間の祖先?じっと見ていたらゴブリンという種族名だと分かった。
「おいお前、あのケリュネイアの家族と言ったな。」
「そういうあなたはどなた?」
先程のコボルトよりも乱暴な物の言い方、警戒心というより敵対心が現れている。
「俺の事はどうでもいい。お前を捕えればあのケリュネイアを従える事ができるな。おい!」
ぞろぞろと現れるゴブリン達。十人位いるだろうか、皆それぞれに槍や棍棒といった武器を持っている。
「お母さんに近寄るな!」
颯太は私を庇う様に立つ。
「どちらか片方捕まえればいい。大きい方を残して小さい方は殺せ。」
颯太を、殺す……?
「カクカミ!」
颯太を庇う様に立って大声で叫ぶ。すぐにカクカミはこちらの状況に気付いてくれた。大きく跳躍して私達の目の前に着地した。
『貴様ら、お二人に危害を加えようとしたな。』
「ひぃっ……!」「逃げろ!」
カクカミの力の籠もった声を聞いて、慌てて逃げて行くゴブリン達。
その時、カクカミの動体に巨大な木が衝突した。凄まじい衝撃、私は思わず顔を背けてしまった。
ぐらりと揺らぐ巨体、しかしカクカミは倒れなかった。
「お、母さ、ん……」
風が収まって弱々しい颯太の声が聞こえたので見ると、颯太の腹部に太い木の枝が突き刺さっていた。ゆっくりと崩れ落ちていく。
「颯太!!」
カクカミには呼び掛けに応じない場合のみ制圧して良いと念を押していたおいたから、話し合いは無理だったのだろう。
どちらも大怪我をしないように解決できる事を祈る。
私達は何が出来るだろうか?
先程人影の様なものを見た気がするけど、母熊はそれを狙っていたのではないだろうか?だとしたら怪我をしている人がいるかも知れない。もう少し近づいて探してみる。
周りに気を配りながら少しずつカクカミ達の方へ近付く。
すると、ガザガサと音がして茂みから何かが飛び出して来た。
現れたのはニ人。犬の様な頭をした人間だった。いや、人間とは言い難いか。
身長は140センチ前後、服の様なものの上に革製の胸当てを身につけているが全身は毛で覆われていて、犬か狼が二足歩行していると言った方が正しいかも知れない。
一人を支えながら何とか逃げて来たという様子だった。
「な、なんだアンタら……?」
支えていた方の犬頭が警戒しながら聞いてくる。じっと見ていたらコボルトという名前の種族だと分かった。
「私は泉の精霊のハル。こっちは息子の颯太よ。」
「世界樹の精霊のソータだよ。君達あのアルカスに襲われてたの?」
颯太が聞くと、支えられていた方が苦しそうにしながら答えてくれる。
「そうだ。この先に俺たちの住処がある。これ以上あの化け物を近付ける訳にはいかん。」
傷が深く苦しそうだ。
「まずは怪我の手当てをしないと。」
私は《成分複製》を使って泉の水を両手で作った器いっぱいに溜めると血の出ている部分に少しずつかけていく。
切り傷や擦り傷が全身にあって痛々しい。しかし水を掛けるとあっという間に跡形もなく治っていった。
「な、なんだこれは……痛くないぞ!?」
「兄者!本当に傷が消えて……!?」
この二人は兄弟だったみたいね。
「さあ、これで動けるでしょう。今戦っているツノの生えた動物の方は私の家族です。あの子が戦っている間は大丈夫だけど、念の為住処に帰って避難をしなさい。」
「あなた達は一体……いや、助かりました。すぐに戻って全員で避難します。」
兄の方がそう言って二人で走って行く。
「いい事したね、お母さん。」
「そうね。他にも巻き込まれている生き物がいないか注意して行きましょう。」
手を繋ぎ直してゆっくり進んで行く。太い木々が薙ぎ倒されているものの、この辺りには怪我をした動物はいないみたい。
カクカミの様子を見ると、自分の倍はあろうかという体躯の母熊と互角以上の戦いをしていた。それでも制圧できないでいるのは、極力傷付けまいと加減をしているからだろう。
また茂みの方からガザガサと音がする。
今度は人に近い生き物だった。
背丈はさっきの犬頭とほぼ同じ、衣服の様なものを着ているが防具の様なものは身につけていない。全身は毛で覆われている訳ではなく、肌の色は土色。鋭い目つきに尖った耳。手には石斧を持っている。
人間の祖先?じっと見ていたらゴブリンという種族名だと分かった。
「おいお前、あのケリュネイアの家族と言ったな。」
「そういうあなたはどなた?」
先程のコボルトよりも乱暴な物の言い方、警戒心というより敵対心が現れている。
「俺の事はどうでもいい。お前を捕えればあのケリュネイアを従える事ができるな。おい!」
ぞろぞろと現れるゴブリン達。十人位いるだろうか、皆それぞれに槍や棍棒といった武器を持っている。
「お母さんに近寄るな!」
颯太は私を庇う様に立つ。
「どちらか片方捕まえればいい。大きい方を残して小さい方は殺せ。」
颯太を、殺す……?
「カクカミ!」
颯太を庇う様に立って大声で叫ぶ。すぐにカクカミはこちらの状況に気付いてくれた。大きく跳躍して私達の目の前に着地した。
『貴様ら、お二人に危害を加えようとしたな。』
「ひぃっ……!」「逃げろ!」
カクカミの力の籠もった声を聞いて、慌てて逃げて行くゴブリン達。
その時、カクカミの動体に巨大な木が衝突した。凄まじい衝撃、私は思わず顔を背けてしまった。
ぐらりと揺らぐ巨体、しかしカクカミは倒れなかった。
「お、母さ、ん……」
風が収まって弱々しい颯太の声が聞こえたので見ると、颯太の腹部に太い木の枝が突き刺さっていた。ゆっくりと崩れ落ちていく。
「颯太!!」
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