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繁栄
母熊
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カクカミの背中に乗って更に南西方向に進んでいく。
ゆっくりと進んでいくと森の雰囲気が変わって来た。
木々の枝があちこち折れて落ちていたり、大木がへし折れていたりしていて荒れていた。
『俺の母が暴れた後です。この辺りには居ない様ですが……。』
熊さんは息を潜めながら話している。
「アルカスさん、あなたのお母さんはどれくらいの大きさなの?」
『俺の倍くらいです。』
それだと、この森の木よりも大きい事になる。私達の移動を察知したりしていないだろうか?
「お母さん、《遠隔視野》で見たりできないかな?」
「そうね。やって見るわ。」
《遠隔視野》を使用すると自分よりも随分と上の方から見下ろす視点になった。
これならかなり遠くまで見渡すことができる。見たい方向に意識を向けるとそちらに視界が動いたり、見下ろし視点から普通に森の中を歩いているかの様な視点に変わったりしてかなり自由に見ることができた。
これはかなり便利ね。
さて、お母さん熊は近くにいるかしら。
南西方向を中心に視界を動かしながら少しずつ遠くに視野を動かしてみる。
地平線が見える様にしてみると、遠くに青と白にキラキラと輝く所を見つけた。
あれは……間違いない、海だ!
かなり向こうだけど海があった。海も再生されているのだろうか?興味を掻き立てられるが今はお母さん熊を探すのが先決だ。
《遠隔視野》を西方向に向けて捜索範囲を広げていく。
かなり離れたところに森の木々から突き出た黒い塊が動いているのを見つける。
熊だ。体長20メートル近いんじゃないだろうか?山の様に見える黒い物体は木々を薙ぎ倒しながら動いていた。
何かに夢中でこちらには全く気付いていない様だ。
「いたわ。西南西の方向……こっちよ。」
私が方向を示すとカクカミはそちらの方向にゆっくりと歩きだす。
「アルカスさん、もしも戦う事になってしまったらお母さんを傷つける事になってしまうかもしれない。最悪命を奪う事になってしまうかもしれないわ。」
『……覚悟は出来ています。』
そう言う熊さんは背中を丸めて俯いていた。
お母さんを殺すと言われて何とも思わない訳はないだろう。それでも念の為言っておかなくてはならない。
土壇場で私達に敵対してくる可能性があるかを計るのが目的だ。
私の口からそんな事を言われるとは思っていなかったのだろう、獣なので表情は読み取れないがどこか辛そうだった。
「勿論可能な限り助けるつもりよ。少しでも危険だと判断したら直ぐに逃げます。カクカミ、いいわね?」
『承知しました。』
皆に方針を明確に伝えておく。
『もし戦闘になったら、お二人は直ぐに退避してください。私が戦います。』
「分かったわ。くれぐれも無茶はしないでね。」
入念に打ち合わせをしながらお母さん熊の所に向かった。
バキバキと木々の裂ける音が近づいてきた。そろそろか……。
黒い巨体が見えてきた。背中を丸めながら地面の何かに攻撃を加えている様にも見える。足元に何かいるのだろうか?
目を凝らして様子を見ると、木々の間に人の様な影が見えた。
まさか人間?
「カクカミ、母アルカスを止めます。」
『畏まりました。それではこちらでお降りください。』
身体を伏せて私達を降ろしてくれる。
「カクカミ気を付けてね。」
『はい。それでは行って参ります。』
颯太に送り出されてカクカミはお母さん熊目掛けて走り出す。熊さんもそれに続いた。
私は颯太と手を繋いで慎重に歩を進める。
「カクカミ大丈夫かな?」
「ええ、あの子は賢いから危なかったらすぐに逃げてくるわ。大丈夫よ。」
あの巨体を目にして不安になったのだろう、颯太は私の手をしっかりと握っていた。
ゆっくりと進んでいくと森の雰囲気が変わって来た。
木々の枝があちこち折れて落ちていたり、大木がへし折れていたりしていて荒れていた。
『俺の母が暴れた後です。この辺りには居ない様ですが……。』
熊さんは息を潜めながら話している。
「アルカスさん、あなたのお母さんはどれくらいの大きさなの?」
『俺の倍くらいです。』
それだと、この森の木よりも大きい事になる。私達の移動を察知したりしていないだろうか?
「お母さん、《遠隔視野》で見たりできないかな?」
「そうね。やって見るわ。」
《遠隔視野》を使用すると自分よりも随分と上の方から見下ろす視点になった。
これならかなり遠くまで見渡すことができる。見たい方向に意識を向けるとそちらに視界が動いたり、見下ろし視点から普通に森の中を歩いているかの様な視点に変わったりしてかなり自由に見ることができた。
これはかなり便利ね。
さて、お母さん熊は近くにいるかしら。
南西方向を中心に視界を動かしながら少しずつ遠くに視野を動かしてみる。
地平線が見える様にしてみると、遠くに青と白にキラキラと輝く所を見つけた。
あれは……間違いない、海だ!
かなり向こうだけど海があった。海も再生されているのだろうか?興味を掻き立てられるが今はお母さん熊を探すのが先決だ。
《遠隔視野》を西方向に向けて捜索範囲を広げていく。
かなり離れたところに森の木々から突き出た黒い塊が動いているのを見つける。
熊だ。体長20メートル近いんじゃないだろうか?山の様に見える黒い物体は木々を薙ぎ倒しながら動いていた。
何かに夢中でこちらには全く気付いていない様だ。
「いたわ。西南西の方向……こっちよ。」
私が方向を示すとカクカミはそちらの方向にゆっくりと歩きだす。
「アルカスさん、もしも戦う事になってしまったらお母さんを傷つける事になってしまうかもしれない。最悪命を奪う事になってしまうかもしれないわ。」
『……覚悟は出来ています。』
そう言う熊さんは背中を丸めて俯いていた。
お母さんを殺すと言われて何とも思わない訳はないだろう。それでも念の為言っておかなくてはならない。
土壇場で私達に敵対してくる可能性があるかを計るのが目的だ。
私の口からそんな事を言われるとは思っていなかったのだろう、獣なので表情は読み取れないがどこか辛そうだった。
「勿論可能な限り助けるつもりよ。少しでも危険だと判断したら直ぐに逃げます。カクカミ、いいわね?」
『承知しました。』
皆に方針を明確に伝えておく。
『もし戦闘になったら、お二人は直ぐに退避してください。私が戦います。』
「分かったわ。くれぐれも無茶はしないでね。」
入念に打ち合わせをしながらお母さん熊の所に向かった。
バキバキと木々の裂ける音が近づいてきた。そろそろか……。
黒い巨体が見えてきた。背中を丸めながら地面の何かに攻撃を加えている様にも見える。足元に何かいるのだろうか?
目を凝らして様子を見ると、木々の間に人の様な影が見えた。
まさか人間?
「カクカミ、母アルカスを止めます。」
『畏まりました。それではこちらでお降りください。』
身体を伏せて私達を降ろしてくれる。
「カクカミ気を付けてね。」
『はい。それでは行って参ります。』
颯太に送り出されてカクカミはお母さん熊目掛けて走り出す。熊さんもそれに続いた。
私は颯太と手を繋いで慎重に歩を進める。
「カクカミ大丈夫かな?」
「ええ、あの子は賢いから危なかったらすぐに逃げてくるわ。大丈夫よ。」
あの巨体を目にして不安になったのだろう、颯太は私の手をしっかりと握っていた。
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