君が望んだ終焉の果てに

屑籠

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グレハス編

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 ギルドの外にも中にも人が多くて、唖然としてその光景を見つめてしまったが、ここでこうしていても仕方がない、と意を決してギルドの建物へ足を踏み入れた。
 きょろきょろと辺りを見回す俺は、お上りさんに見えたのだろうか?まぁ、間違いじゃない。
 俺を見て、くすくすと笑う人の声が聞こえてくるようだ。
 やっとの思いで、受付の文字を見つけ、カウンターへ近づく。

「あ、あのっ」
「ん?おぉ、坊主どうした?依頼か?」
「え、えっと、その、せ、セルさんに、獲物、売るならここ、だって、言われた、から……」

 視線の多さに落ち着かず、おどおどとする俺に対して怪訝そうな目を向けてくる受付の人に、ひっ、と喉の奥がひきつる。
 そもそも、セルさんと言って通じるだろうか?
 彼はそれほど有名な人ではない気がするが。

「お前さんが?」
「え、えっと……」
「まぁいい、その獲物とやらを出してみろ」

 ここで良いのか?と思いつつ、まぁ、血抜きもしてあるしいっか、と先ほどセルに見せたグレハス鳥をカウンターに出す。
 グレハス鳥は、優雅に飛びまわるイメージがあるけれど、その実尾羽が非常に長くて、カウンターに乗せるのはぎりぎりだ。

「こ、これ、だけ、ど……」
「こりゃ……」

 驚いた様子の受付の人に、何かダメだったのだろうか?とびくびくしていると、その目が獲物から俺に移る。

「いい状態だな。血抜きもしっかりしてあるし、上手く心臓を打ち抜いてるから高価な瞳も傷一つ付いちゃいねぇ」

 グレハス鳥の特徴は、その羽根だけにあらず。瞳は、天然の宝石とされ、魔力も少し宿っていることから人気の素材だ。
 内臓はすべて食べられないが、その肉はとてもおいしいとされている。
 鳩などの獣よりも高い値で取引されているはずだ。受付の人の反応を見るに、状態もいいから高値が付くだろう。よかった。

「うん、これなら銀貨50枚だな」
「そ、そんな、に?」

 グレハス鳥は村でも獲れていたが、そんな高値で売れるなんて聞いたことがない。
 時折来る行商人にも姉が売っていたが、そんなに高値ではなかった気がする。
 ぼったくられていたのだろうか?
 今となっては、後の祭りだが。

「いま、金を用意するから待っててくれ。それと、お前さんギルドカードは持ってるか?」
「ぎ、ギルドカード?そ、それがないと、売れない、のか?」
「いや、そういう事はないが……まぁ、いい。それは後で説明しよう。それより、今は支払いが先だな」

 あまり待たされることもなく、銀貨が用意されて目の前のトレイに置かれた。
 それを、あまり気にせずマジックバッグに入れる。
 数えないんかい、と小さな声で聞こえてきたが、何か問題があったのだろうか?

「それで、冒険者ギルドについてだが」
「え?」
「帰ろうとしてんじゃないよ馬鹿者。ちゃんと聞いてけ、世間知らず」
「え、あ、え?」

 セルに教えてもらった宿を確認しなければ、といそいそと外に向おうとすれば、カウンターから出てきた手に、阻まれる。
 はぁー、と長い溜息が受付の人から放たれた。
 えっ、えっ、と戸惑っている間に、こっちにこい、と個室に引っ張り込まれてしまう。
 壱日に弐度も同じ状況に陥るとか、どういうことなの?

「俺は、グルガス。このギルドで受付をしてるし、買取の査定をしたりもしてる。んで、冒険者ギルドについてだが」
「あ、あのっ、俺、猟師、で……その、冒険者?になるつもりは……」
「だぁ……っ、いいから聞けって。そもそもお前さん、身分証は?」
「えっと、兵団?の人が……」

 これ、と入場許可証を見せれば、グルガスは眉間にしわを寄せてそれを見た。

「……こりゃ、この街の中だけだろう?見たところ、旅慣れはしてないみたいだな」

 しかも訳ありかよ、と面倒くさそうに息を吐くグルガス。
 えぇ、俺が悪いの?と挙動不審になる俺。
 落ち着け、と言われたところで落ち着けるはずもない。

「何も悪いと言って……悪いのか?……まぁ、肝心なところはそこじゃねぇんだよ。見たところ、この後も旅を続けるつもりだろう?」
「え、っと、なん、で……」
「なんとなく、だ。ただの感だ感。この冒険者ギルドについてだが、主要な街にはギルドの支店があって、ここもそうだ。冒険者というのは国に縛られない自由職として守られている」

 グルガスの話は長かった。
 冒険者ギルドについてと、ランク説明、それから冒険者の登録証、先ほど言われたギルドカードの事だ。それがあれば、入場審査が楽になったりすることも。
 村を無くして身分も証明できないのならば作っておけ、と言われたが、そんなっ、と俺は首を横に振る。
 自分に冒険者が務まるとは思えない。
 そもそも、目的もなく意欲もないのに、冒険者になったところで、と思う。
 それは、どの職業に関してもそうだろうけれど。

「いいか?お前は話すことを苦手としているようだが、まぁ、会話には少しイラつくところもあるしな。その苦手なことを少しでも減らす手段だと思えばいい。ギルドとしては依頼をこなして犯罪に手を染めないでくれればそれでいいわけだ。お互いウィンウィンの関係なんだから、登録しておけ、いいな?」
「お、押し売り、ですか?」
「どうしてお前はそう捻くれた答えを出すんだ馬鹿者が」

 そうしたグルガスとの押し問答の末、やはり冒険者ギルドの登録をすることになってしまった。そうしないと、ギルドを出ることすら叶わなくなりそうで。
 ギルドの登録は簡単で、魔道具に自分の血を一滴流すだけで作ることができた。いや、でも血を出すのに指をナイフで切ったんだけど、痛かった。二度ととしたくない。
 魔獣や魔物の討伐は、自動的にギルドカードへと記録され、ギルドの特殊な機械で読み取れるらしいので、死骸を持ち帰る必要はないらしい。
 迷宮の魔物は死骸が残らないから、そういった場合の措置らしいけど。
 もちろん、使える部位や食べれる肉などあればギルドに持ち帰ることで高額取引することも可能らしい。
 ギルドには金融部門というのもあり、お金を預けることもできるそうだ。
 とりあえず、今日手に入ったお金の半分をギルドに預けた。
 ギルドカードは、一か所穴が開いていてそこに細い鎖を通し、グルガスが首にかけてくる。
 絶対無くすなよ、と念を押されて言われた。無くしたら、後々の手続きが面倒くさいらしいから。
 グルガスは依頼を、とは言っていたが最終的に、狩りの獲物をギルドに持ってくるだけでいい、査定を受けろとそれだけは約束させられた。
 依頼の良し悪しなんてわからないから、よかった。
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