君が望んだ終焉の果てに

屑籠

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グレハス編

グレハス編 1

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 森の中や山の中は好きだ。村も好きだったが、森や山の中にいる時間の方が長かったから。
 森や山の中で数日過ごすなんてことも、珍しいことではなかったし。
 不安に思えた旅だが、道中なんの心配もなく移動ができた。
 むしろ、不安が急増したのは隣の街についた時だ。
 入場審査があり、長い列ができている。列の両端から見えるのは大きな石の壁。
 まるで要塞だ、と見上げ思った。

「次の者」

 呼ばれて、ようやく自分の番が来た。壱時間ぐらい待っていたのではないだろうか?
 入場の目的を聞かれ、少し戸惑う。
 宛てのない旅だとして、どういえばいいのか。
 村でも無口なほうだった俺は、どう説明するべきか迷う。
 入場審査を担当していた兵士も困ったような顔をして、同僚を見る。

「言葉は分るな?じゃあ、声が出ないのか?」
「え、えっと、ちがっ」
「なんだ喋れるじゃないか。何をしに、グレハスへ?」
「そ、その……む、村がなくなった、から……?」

 えっ?と兵士が驚いて再び同僚と顔を合わせ、そして真剣な面持ちでうなずく。

「俺はセルという。こちらに来て、詳しく話を聞かせてくれないか?」
「えっ……?」

 あっ、あの、と戸惑っている間に腕を引かれて壁の中にある一室に連れていかれた。
 俺は、何をしてしまったんだ?とどくどくとうるさく鳴る鼓動とともに考えながら落ち着かず部屋の中を見回す。
 しばらくすると、セルが誰か偉い人だろう強そうな人を連れて中に入ってきた。
 自然とびくっ、と体が跳ねる。
 目の前の椅子に腰を掛け、魔道具を机の上に置きながら、さて、と話し出す。

「さて、私はこの街の兵団長であるナルゼだ。君は、住んでいた村が無くなったそうだな?名前は?」
「お、オビト……クラッセルン……」
「ではオビト。君の村の名前は?」

 それは、正しく尋問といっていい内容だった。
 村の名前、そして自分がどうして生き残ったかを、たどたどしく伝えていると、嘘を付いていないか魔道具を通して確認されているようだ。
 セルがその間に、俺が言った内容を書き取りしている。

「そうか……、ぞうが……っ、よぐ生ぎ残っだなぁ゛!!!」

 びっくぅっ!!と盛大に体が跳ねた。
 それほど、驚くくらいナルゼの顔は涙といろいろなもので濡れていて、ちょっと怖かった。
 これが男泣きというやつなのだろうか?
 おろおろとしていると、セルがあーあ、と困ったように笑っている。

「団長、団長、オビトさんが困ってますから」
「あ、あぁ……すまない」

 差し出されたチリ紙でちーん、と鼻水をかんだナルゼの顔は、きりっとした団長の顔に戻る。
 ちょっと怖い。なんだその早変わりは。

「これからどうするつもりだ?保護法などもあるから、心配しなくても住む場所は保証されるぞ」
「い、いや……この街は騒がしすぎるので、静かな所に行きたい、ので……」
「そうか、残念だな。何か困ったことがあれば、言うといい。俺の名前を出せば大抵は通じるだろう」

 あ、ありがとう、と頭を下げる。
 そこからは、セルに案内されて入場許可証が手渡された。
 この街から出るとき、また守衛に渡せばいいらしい。

「多少のお金は持ってるかな?安宿でよければ、この道をまっすぐ行って噴水のある広場少し手前ぐらいにお玉と包丁の絵が描かれてる、料理屋シーズに顔を出してみるといいよ。あと、何か聞きたいことはある?」
「あ、あの」

 うん?と朗らかに笑うセルにごくっ、と息を飲み伝える。

「え、獲物、売る場所……知ってる?」
「獲物?」
「お、俺は猟師、だか、ら……えっと、鳥、とか、魔物、とか」

 ちょうど、獲ったばかりの赤い羽根が印象的なグレハス鳥をマジックバッグの中から頭だけ出して見せれば、あぁなるほど、と言った顔をされた。

「それなら、冒険者ギルドかな?んと、この大きな道をまっすぐ進むと、十字の大きな道に出るんだけど、それを西側に行くと大きな建物が見えてくるんだ。それが、冒険者ギルド。俺たちみたいなそろいの甲冑じゃなくて、それぞれ特徴的な甲冑を付けたり、鎧を付けたり、剣を持った人がいるからわかりやすいと思うな」

 セルが指さす道をしっかりと確認しながら、うんうんと頭に叩き込む。
 これだけ人が多いと、さすがに迷いそうだ。
 この街の人は見るだけで、村の総人口よりはるかに多い。

「あ、ありがとう」
「どういたしまして。また、わからないことがあったらいつでも聞いて」

 一つ、頷くとじゃあな、と俺の頭を一つ撫でてセルは仕事に戻っていった。
 オビトは15歳なんだが、と少し腑に落ちない感情を抱えながら教えられた道を進む。
 人ごみに飲まれそうになりながら、どうにかこうにか冒険者ギルドを見つけることができた。
 人にぶつからないように歩いていたのに、避けた途端舌打ちしてくる人もいて、都会って怖いなって思う。
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