煩わしきこの日常に悲観

さおしき

文字の大きさ
上 下
22 / 26
第五章

第一話

しおりを挟む
 おきてよはやく
 起きて?早く?俺は寝ているのか?
 はやくおきて
 何故泣いているんだ?それにこの声は…
 お願いだからおきて
 雫……!
 その瞬間、俺は目が覚めた。
 「夢か…」
 この夢は一体何なんだ?毎回見るのも何故なんだ?謎過ぎる。
 「翔!早く支度しなさい!雫ちゃん来てるわよ!」
 母さんの怒号が聞こえてくる。時計に目をやると朝8時。ヤバっ、約束の時間過ぎてんじゃん。俺は急いで支度して、玄関へ。
 「すまん、遅くなった」
 「遅い、私を待たせるなんて」
 雫は不服な態度だった。
 「悪い悪い、昨日寝れなかったんだよ」
 「そう」
 雫は恥ずかしそうに、短くそう返す。
 「そんなことより早く学校行くぞ」
 そうして俺たちは学校へと向かう。昨日までとは違う関係で。
 「翔はテスト勉強進んでる?」
 テスト勉強……そう、今は学生にとって1番と言っていいほど嫌なイベント、テスト期間中の真っ最中だ。
 「実は数学が……」
 そう、俺は大の数学嫌いだ。あんなのどうやったら点数稼げるんだよ。
 「だと思った。翔はホントに数学ダメだよね」
 「助けてほしいくらいだよ」
 「ならさ、今日の放課後一緒に勉強しない?」
 「別に良いけど、どこでやるんだ?」
 すると雫は照れながら
 「私の部屋とか…どうかな?」
 雫の部屋だと!それってまさか、お家デート的なサムシングなのか。
 「良いのか?行っても」
 「全然大丈夫!むしろ来てほしいくらいだし……」
 「っつ……」
 毎回破壊力がえげつないんだよ…
 「なら今日の放課後な」
 「うん!」
 雫はとても嬉しそうにそう頷いた。
 
 「翔はテスト大丈夫なのかい?」
 教室では彼方が俺にそう聞いてくる。
 「今度は彼方か…」
 「どうかしたのかい?」
 彼方は不思議そうに聞いてくる。
 「いや、何でもない。いつも通り数学がヤバいくらいかな」
 「流石は翔だね。期待を裏切らない」
 「バカにしてんのか」
 「まぁまぁ。それよりあの後如月先輩はどうなったの?」
 自分で聞いておいてそれよりって。
 「麻雀部に入るとかで、楽しそうだったけど」
 「そうなんだ。楽しそうだったなら依頼達成なのかな?」
 「多分な」
 「葉月さんは何も言ってないの?」
 彼方はどこか不思議そうに聞いてくる。
 「まぁな。あの後用事があるとか言って何も言わずに帰っていったから」
 「成程ね。それは葉月さんが来たら聞くとして、翔、放課後あたり、テスト勉強でも一緒にどうかな?」
 「悪いな」
 俺はそうキッパリと返す。
 「何かあるのかい?」
 彼方はまたもや不思議そうに聞いてくる。
 「ちょっと用事があってな」
 「へー、それはまたなんとも珍しいね。彼女でもできた?」
 コイツ、鋭いな…
 「んな事よりお前は大丈夫なのか?テスト勉強」
 「だから誘ったんだけど、まぁ予定があるなら仕方ないね。また誘うよ」
 なんとか誤魔化せたのか、彼方はそう言って自分の席に戻っていった。
 なんてったって今日の放課後は雫の部屋でテスト勉強だからな。いくら親友とはいえど、雫とは歴が違うからな。雫とは赤ちゃんの時から、彼方とは中学から。
 ん?待てよ。彼方とは中学の時のいつ知り合ったんだ?でも彼方が中学の時からずっと一緒のクラスって言ってるくらいだから中1の時だろう。にしても、中学での出会いを忘れるなんてな。DHAでも足りてないのか?
 なんて思っていると、葉月が教室に入ってきた。
 「よう、葉月」
 俺は何気なく話しかける。
 「何よ、翔から話しかけてくるなんて珍しいわね」
 「別に珍しく無いだろ……それより、如月先輩の依頼はあれで達成で良いのか?」
 「それをさっき本人に確認したんだけど、これからは自分で頑張る、って言っていたわ」
 先輩……やっぱりカッケーわ。
 「なら依頼達成だな」
 「そうね。ちなみにだけどテスト期間中でも依頼があれば引き受けるから」
 おいおいマジカよ…
 「お前はテスト大丈夫なのか?」
 「何言ってんの。あんなの授業聞いとけば余裕でしょ」
 バケモノかよ…
 その時、朝のホームルームのチャイムがなった。
 「依頼が来てたらまた連絡するから」
 テスト期間くらい休みにならないのか?他の部活は大会が無い限り休みになるってのに。頼むから今日の放課後だけはやめてくれよ。
 
 「とりあえず今日は依頼無し、ね」
 放課後、俺たちは依頼箱の中身を確認していた。
 「なら今日は解散か?」
 「そうね。今日は解散で、また明日確認しましょう」
 葉月のその言葉を皮切りに、俺たちはその場から立ち去った。
 
 「テスト期間となると、皆依頼なんて出す暇が無いんだろうね」
 帰り道、彼方がそう口にする。
 「流石にな」
 高校生にもなるとテスト期間の勉強量は中学校とは比じゃないからな。実際、俺も授業についていくのが精一杯だからな。
 「授業聞いてればできるはずなんだけどね」
 コイツ……
 とか話していると、俺たちは俺と雫の家の前まで来ていた。
 「二人ともまた明日ね」
 「じゃあな」
 「さようなら」
 彼方は自分の家へと向かっていった。
 「なら俺は着替えてから行くよ」
 「うん、わかった」
 俺は一旦自分の家へと帰り、着替えを済ませ、雫の家に行き、インターホンを押した。
 「ちょっと待ってて」
 インターホンの向こうから、雫がそう返す。着替え中か?にしても、何年ぶりだろうか。最後に来たのが小学校六年生の時か?ってなると四年ぶりか…隣なのにな。
 すると玄関が開き、雫が顔を出した。
 「もう良いのか?」
 「うん。上がって上がって」
 そう言う雫に従って、俺は四年ぶりに雫の家に上がった。
 雫の部屋は玄関入って右の階段を上に上がった先にある。小学校の時なんかどれだけ通ったことか。
 「今日はどの教科する?」
 雫がそう尋ねてくる。今回の期末テストは国語総合、数学Ⅰ、日本史A、世界史A、物理基礎、生物基礎、コミュニケーション英語Ⅰ、英語表現Ⅰ、保健、情報の10教科となかなかにボリューミーだ。
 「不安なのは数学と生物、後は英語だな」
 「1番不安なのは?」
 1番…それはもちろん
 「数学だな」
 「なら数学からしよっか」
 そうして、俺たちは数学の教材を取り出し、勉強を始めた。 
 
 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

Re: 女装めしっ! スカートを履いても食べたいご飯がそこにあるっ!

冬寂ましろ
ライト文芸
渕崎夏稀は「男の娘」である。今日も学校へ行かず、男の人が入りづらい、女のお客さんばかりいるお店で、カフェめし、パンケーキ、フルーツパフェ…を食べまくる。そう……女装してでも食べたいご飯がそこにあるっ! 変わっていく夏稀君の心と食べっぷりをお楽しみくださいませ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛
青春
 俺には二人の容姿端麗な姉がいる。 自慢そうに聞こえただろうか?  それは少しばかり誤解だ。 この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ…… 次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。 外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん…… 「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」 「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」 ▼物語概要 【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】 47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在) 【※不健全ラブコメの注意事項】  この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。  それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。  全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。  また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。 【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】 【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】 【2017年4月、本幕が完結しました】 序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。 【2018年1月、真幕を開始しました】 ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)

白衣とブラックチョコレート

宇佐田琴美
ライト文芸
辛い境遇とハンディキャップを乗り越え、この春晴れて新人看護師となった雨宮雛子(アマミヤ ヒナコ)は、激務の8A病棟へと配属される。 そこでプリセプター(教育係)となったのは、イケメンで仕事も出来るけどちょっと変わった男性看護師、桜井恭平(サクライ キョウヘイ)。 その他、初めて担当する終末期の少年、心優しい美人な先輩、頼りになる同期達、猫かぶりのモンスターペイシェント、腹黒だけど天才のドクター……。 それぞれ癖の強い人々との関わりで、雛子は人として、看護師として成長を遂げていく。 やがて雛子の中に芽生えた小さな恋心。でも恭平には、忘れられない人がいて─────……? 仕事に邁進する二人を結ぶのは師弟愛? それとも─────。 おっちょこちょいな新人と、そんな彼女を厳しくも溺愛する教育係のドタバタ時々シリアスな医療物ラブ?ストーリー!!

処理中です...