7 / 27
本編
7 両親
しおりを挟む
驚くことに、扉の外に立っていたのは私の父である公爵だった。
状況を理解することが出来ず、ただポカンとお父様のことを見つめた。
「マルガレーテ!!!」
お父様は私の姿を見るなり、泣きそうな顔でこちらへと駆け寄った。
そして、そのまま私をギュッと抱きしめた。
「!」
お父様に抱きしめられるのは随分と久しぶりだ。
結婚する前以来だろうか。
そもそも王妃になってからはほとんど家族と会えていない。
「マルガレーテ……本当にすまなかった……!」
私を抱きしめた父は、ただただ私に対して謝罪の言葉を繰り返した。
声は震え、目から涙が零れた。
父のそのような姿は生まれて初めて見る。
「お父様……どうしてここに……?」
私は抱きしめられたままお父様に尋ねた。
「ああ、それに関しては後で話そう。長くなりそうだからな」
「……」
お父様はそう言うと私から体を離した。
「マルガレーテ、とりあえず外へ出よう。皆待っている」
「え、だけど外には反乱軍が……」
私がそう口にすると、お父様は安心させるかのように言った。
「大丈夫だ、彼らがマルガレーテに危害を加えることはないから」
「どういうこと……?」
(私に危害を加えることはない……?どうして……?私は王妃なのよ……?)
お父様の言っていることの意味が分からない。
しかし、このような状況でお父様が嘘をついているとも思えない。
「詳しくは後で話す。さぁ、行こう」
「は、はい」
私はお父様に腕を引かれて共に部屋の外へと出た。
父の後ろについて王宮の廊下を歩く。
その途中で何人かの兵士たちとすれ違ったが、不思議なことに彼らが私に敵意を向けてくることはなかった。
しばらく歩いて、王宮の隅にある一室に辿り着いた。
私はその中へと通された。
「………………お母様?………それにみんな!」
中にいたのはお母様と公爵家の騎士たちだった。
「マルガレーテ!」
お母様はお父様と同じように私を力強く抱きしめた。
「お母様……」
「マルガレーテ……本当に……本当にごめんなさい……」
そう言ったお母様の瞳からは涙が零れていた。
「お母様、どうして……」
「私は……あなたが辛い目に遭っているのを知っていて……助けてあげられなかった……」
お母様の言葉に、お父様が同意するように拳を握りしめて言った。
「こんなことになるならマルガレーテを王家に嫁がせなければよかった……!」
「本当に、その通りだわ……」
二人の激しい後悔が伝わってくる。
「お父様……お母様……仕方がないですよ……この結婚は王命だったのですから……」
「だが……!」
私はお父様の言葉を遮って言った。
「いいえ、私はお父様とお母様がそう思ってくれるだけで本当に嬉しいです」
二人の優しい言葉に胸が温かくなる。
お父様とお母様の元に生まれてきて本当に良かったと、心の底からそう思えた。
そうして私たちはしばらくの間、家族の再会を喜び合った。
状況を理解することが出来ず、ただポカンとお父様のことを見つめた。
「マルガレーテ!!!」
お父様は私の姿を見るなり、泣きそうな顔でこちらへと駆け寄った。
そして、そのまま私をギュッと抱きしめた。
「!」
お父様に抱きしめられるのは随分と久しぶりだ。
結婚する前以来だろうか。
そもそも王妃になってからはほとんど家族と会えていない。
「マルガレーテ……本当にすまなかった……!」
私を抱きしめた父は、ただただ私に対して謝罪の言葉を繰り返した。
声は震え、目から涙が零れた。
父のそのような姿は生まれて初めて見る。
「お父様……どうしてここに……?」
私は抱きしめられたままお父様に尋ねた。
「ああ、それに関しては後で話そう。長くなりそうだからな」
「……」
お父様はそう言うと私から体を離した。
「マルガレーテ、とりあえず外へ出よう。皆待っている」
「え、だけど外には反乱軍が……」
私がそう口にすると、お父様は安心させるかのように言った。
「大丈夫だ、彼らがマルガレーテに危害を加えることはないから」
「どういうこと……?」
(私に危害を加えることはない……?どうして……?私は王妃なのよ……?)
お父様の言っていることの意味が分からない。
しかし、このような状況でお父様が嘘をついているとも思えない。
「詳しくは後で話す。さぁ、行こう」
「は、はい」
私はお父様に腕を引かれて共に部屋の外へと出た。
父の後ろについて王宮の廊下を歩く。
その途中で何人かの兵士たちとすれ違ったが、不思議なことに彼らが私に敵意を向けてくることはなかった。
しばらく歩いて、王宮の隅にある一室に辿り着いた。
私はその中へと通された。
「………………お母様?………それにみんな!」
中にいたのはお母様と公爵家の騎士たちだった。
「マルガレーテ!」
お母様はお父様と同じように私を力強く抱きしめた。
「お母様……」
「マルガレーテ……本当に……本当にごめんなさい……」
そう言ったお母様の瞳からは涙が零れていた。
「お母様、どうして……」
「私は……あなたが辛い目に遭っているのを知っていて……助けてあげられなかった……」
お母様の言葉に、お父様が同意するように拳を握りしめて言った。
「こんなことになるならマルガレーテを王家に嫁がせなければよかった……!」
「本当に、その通りだわ……」
二人の激しい後悔が伝わってくる。
「お父様……お母様……仕方がないですよ……この結婚は王命だったのですから……」
「だが……!」
私はお父様の言葉を遮って言った。
「いいえ、私はお父様とお母様がそう思ってくれるだけで本当に嬉しいです」
二人の優しい言葉に胸が温かくなる。
お父様とお母様の元に生まれてきて本当に良かったと、心の底からそう思えた。
そうして私たちはしばらくの間、家族の再会を喜び合った。
712
お気に入りに追加
1,580
あなたにおすすめの小説
結婚式の日取りに変更はありません。
ひづき
恋愛
私の婚約者、ダニエル様。
私の専属侍女、リース。
2人が深い口付けをかわす姿を目撃した。
色々思うことはあるが、結婚式の日取りに変更はない。
2023/03/13 番外編追加
【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
【完結】王太子妃の初恋
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。
王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。
しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。
そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。
★ざまぁはありません。
全話予約投稿済。
携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。
報告ありがとうございます。
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
【完結】義妹に婚約者を取られてしまい、婚約を解消することに……傷心の私はお母様の国に亡命することに致します。二度と戻りませんので悪しからず。
つくも茄子
恋愛
公爵令嬢のマリアンヌは婚約者である王太子殿下から婚約解消を言い渡されてしまった。
マリアンヌの義妹リリーと恋仲になったせいで。
父と再婚した義母の連れ子であるリリーは、公爵家の養女でもある。つまり、実子並みの権利を持っているのだ。そのため、王家と公爵家との縁組を考えればどちらの令嬢と結婚しても同じこと。
元婚約者がいては何かと都合が悪いからと、マリアンヌは自ら母国を去る。行先は、亡き実母の祖国。祖父や伯父たちはマリアンヌの移住を喜んで受け入れる。
彼女を皇女に!と思うも、本人に拒否されてしまい、仕方なく「女公爵」に。
マリアンヌとしては小国の公爵令嬢が、大国の皇女殿下になる訳にはいかなかった。優しい伯父たち(大国の王族)のため、「女公爵」として、新しい母国のために奮闘してゆく。王太子妃としての教育がこのような形で活かされていく。
一方、元婚約者の王太子殿下には暗雲が立ち込めていた。
彼は王太子位を剥奪され一介の王子になっていたのだ。妻のリリーは、妃として落第点を押される程の不出来さ。
リリーは高位貴族の教育さえ受けていなかったことを元婚約者は知らなかったよう。彼女の母親は下位貴族出身。当然、その娘であるリリーも下位貴族の教育しか受けていない。
内政も外交も上手くいかない。
経済さえも危うくなってきた。
彼らの未来はどうなるのか???
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる