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本編
6 反乱
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そして、ついにそのときはやってきた。
「王妃陛下、大変です!」
一人の侍女が慌てた顔で私の元へとやって来た。
「ああ……ついに来たのね……」
「王妃陛下……」
聞かなくても分かる。
反乱が起こったのだろう。
こうなることは誰よりも分かっていたから冷静でいられた。
ただ思ったより早くて驚いただけだ。
あれからも何度か陛下を説得しようと試みたが、結果全て失敗に終わった。
やはり人はそう簡単に変わるものではないらしい。
彼はリリーに盲目で何を言っても聞かなかった。
(反乱が起きたということは……あの二人はもちろん私も処刑されるのよね……)
別にかまわない。
こんな人生に未練など無かったからだ。
少し前までは死ぬことが怖かったが、今ではもう何とも思わない。
私は逃げない。
ここで処刑されるのを待つだけだ。
(いつになったら来るのかしら……)
あの馬鹿な二人の泣き喚く顔が見れるのだと思うと少しだけ胸がすいた。
どうやら私もなかなか性格が悪かったようだ。
今、王宮には怒れる民たちが次々と押し寄せてきている頃だろう。
(……私が殺されるのは確定していることだけれど、戦況は少し気になるわね)
そう思った私は部屋にいた侍女に尋ねた。
「今戦況はどうなっているの?」
「そ、それが……」
私の問いに、侍女は言いにくそうに言葉を詰まらせた。
(何かしら……?)
何か良くないことが起こっているのだろうか。
別に王国軍に勝利してほしいとは思わないからどうだって良いが。
「王宮を守っていた騎士の方たちのほとんどが反乱軍側に寝返ったそうです……」
「まぁ……」
どうやら王家に仕える騎士たちは愚王に嫌気が差して全員寝返ってしまったらしい。
あんな王の下にいれば当然の話か。
(……だけど、むしろその方が彼らにとっては良かったと言えるでしょうね)
それを聞いて、安心している自分がいた。
だって彼らは何も悪いことなんてしていない。
ただ国のために働き、王に忠誠を誓っていただけである。
そんな人間があんな愚王のせいで死ぬのは間違っている。
(そろそろ捕まる準備をしなければいけないわね。ここに兵が来るのも時間の問題でしょうから)
覚悟を決めた私は部屋にいた侍女に向かってキツく言い放った。
「あなたも早く逃げなさい。もし反乱軍に捕まっても王妃に酷い扱いを受けていたと言えばいいわ」
「王妃陛下……」
しかし、彼女はいつまでもその場から動かず心配そうな顔でずっとこちらを見つめていた。
(もしかして……こんな私を心配してくれているの……?)
何だか胸が熱くなった。
久々に誰かに優しくしてもらえたような気がする。
その気持ちは嬉しかったが、彼女をこのままにしておくわけにはいかない。
なかなか出て行こうとしない侍女に私は声を荒らげて叫んだ。
「貴方、私のことはいいから早く逃げ――」
そう言いかけたそのとき、突然部屋の外からけたたましい足音が聞こえた。
「「!?」」
聞こえてくる足音は複数人のもので、どうやらこちらに向かってきているようだ。
(嘘……もう来たの!?ダメよ、まだ彼女が部屋にいるのに!)
このときの私はの頭の中はどうすれば侍女を守れるか、それでいっぱいだった。
頭をフル回転させて考えるも、焦っていたせいか何も思い浮かばない。
その間にも足音はどんどん大きくなる。
「……!」
「お、王妃陛下……」
そして、ついに部屋の扉が開けられた。
――ドンッ!
終わったと思った。
自分が死ぬのはかまわない。
しかし、彼女を逃がすことが出来なかったという自責の念にとらわれる。
そんな自分に不甲斐なさを感じた。
最後の最後まで誰一人救えないとは、何と情けない王妃なのか。
しかし、扉を開けた先にいたのは意外な人物だった。
「………………………………お父様?」
「王妃陛下、大変です!」
一人の侍女が慌てた顔で私の元へとやって来た。
「ああ……ついに来たのね……」
「王妃陛下……」
聞かなくても分かる。
反乱が起こったのだろう。
こうなることは誰よりも分かっていたから冷静でいられた。
ただ思ったより早くて驚いただけだ。
あれからも何度か陛下を説得しようと試みたが、結果全て失敗に終わった。
やはり人はそう簡単に変わるものではないらしい。
彼はリリーに盲目で何を言っても聞かなかった。
(反乱が起きたということは……あの二人はもちろん私も処刑されるのよね……)
別にかまわない。
こんな人生に未練など無かったからだ。
少し前までは死ぬことが怖かったが、今ではもう何とも思わない。
私は逃げない。
ここで処刑されるのを待つだけだ。
(いつになったら来るのかしら……)
あの馬鹿な二人の泣き喚く顔が見れるのだと思うと少しだけ胸がすいた。
どうやら私もなかなか性格が悪かったようだ。
今、王宮には怒れる民たちが次々と押し寄せてきている頃だろう。
(……私が殺されるのは確定していることだけれど、戦況は少し気になるわね)
そう思った私は部屋にいた侍女に尋ねた。
「今戦況はどうなっているの?」
「そ、それが……」
私の問いに、侍女は言いにくそうに言葉を詰まらせた。
(何かしら……?)
何か良くないことが起こっているのだろうか。
別に王国軍に勝利してほしいとは思わないからどうだって良いが。
「王宮を守っていた騎士の方たちのほとんどが反乱軍側に寝返ったそうです……」
「まぁ……」
どうやら王家に仕える騎士たちは愚王に嫌気が差して全員寝返ってしまったらしい。
あんな王の下にいれば当然の話か。
(……だけど、むしろその方が彼らにとっては良かったと言えるでしょうね)
それを聞いて、安心している自分がいた。
だって彼らは何も悪いことなんてしていない。
ただ国のために働き、王に忠誠を誓っていただけである。
そんな人間があんな愚王のせいで死ぬのは間違っている。
(そろそろ捕まる準備をしなければいけないわね。ここに兵が来るのも時間の問題でしょうから)
覚悟を決めた私は部屋にいた侍女に向かってキツく言い放った。
「あなたも早く逃げなさい。もし反乱軍に捕まっても王妃に酷い扱いを受けていたと言えばいいわ」
「王妃陛下……」
しかし、彼女はいつまでもその場から動かず心配そうな顔でずっとこちらを見つめていた。
(もしかして……こんな私を心配してくれているの……?)
何だか胸が熱くなった。
久々に誰かに優しくしてもらえたような気がする。
その気持ちは嬉しかったが、彼女をこのままにしておくわけにはいかない。
なかなか出て行こうとしない侍女に私は声を荒らげて叫んだ。
「貴方、私のことはいいから早く逃げ――」
そう言いかけたそのとき、突然部屋の外からけたたましい足音が聞こえた。
「「!?」」
聞こえてくる足音は複数人のもので、どうやらこちらに向かってきているようだ。
(嘘……もう来たの!?ダメよ、まだ彼女が部屋にいるのに!)
このときの私はの頭の中はどうすれば侍女を守れるか、それでいっぱいだった。
頭をフル回転させて考えるも、焦っていたせいか何も思い浮かばない。
その間にも足音はどんどん大きくなる。
「……!」
「お、王妃陛下……」
そして、ついに部屋の扉が開けられた。
――ドンッ!
終わったと思った。
自分が死ぬのはかまわない。
しかし、彼女を逃がすことが出来なかったという自責の念にとらわれる。
そんな自分に不甲斐なさを感じた。
最後の最後まで誰一人救えないとは、何と情けない王妃なのか。
しかし、扉を開けた先にいたのは意外な人物だった。
「………………………………お父様?」
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