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本編
8 真実
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「それでお父様、お母様。一体これはどういうことなのですか?」
部屋の中にある椅子に座った私は、両親にこの状況を尋ねた。
「ああ、話すと長くなるんだがな……」
私の目の前に座ったお父様はポツリポツリとこれまでのことを話し始めた。
そこで父から聞かされた内容は衝撃的なものだった。
どうやら私が陛下に嫁いでからどのような扱いをされているのかを知ったお父様は、秘密裏に人を集めて謀反の準備をしていたらしい。
「元々リアム陛下は王の器ではなかった。ただ単に他に後継者がいないというそれだけの理由で王になれただけの男さ」
「それはよく存じています……」
それに関しては私も同意しかない。
彼はお世辞にも王として優秀とは言えなかった。
仮にリリーに出会っていなかったとしても、国民から慕われる王にはなっていなかっただろう。
結婚する前から陛下の素行の悪さは知っていたが、あそこまでだったとは。
「……私は、リアム陛下に他に愛する人がいるということを知っていた。だが、リアム陛下があそこまでお前を蔑ろにするとは思っていなかった。マルガレーテには本当に辛い思いをさせた。すまなかった」
お父様は悔しそうに唇を噛んでそう言った。
(お父様が気に病む必要なんて少しも無いのに……)
むしろ私を救うために尽力してくれて嬉しかった。
「先ほども言いましたが、私はそんなこと気にしていませんわ」
「マルガレーテ……」
「だけど全く気付きませんでした。お父様たちがそのようなことを考えていらしたなんて」
「リアム陛下に謀反のことを気付かれてはまずいからね。そこは徹底していたんだ」
「そうだったのですね……」
お父様は本当に優しい人だ。
私なら、誰かのためにそこまで出来るだろうか。
「それでは、外にいる彼らはお父様の味方ということですか?」
「ああ、そうだな。あの馬鹿な王がかなりやらかしてくれたおかげで人は集めるのは随分と簡単だったよ。王宮にいる騎士たちも皆寝返った。謀反はもうすぐ終わる。王家に勝ち目はないさ」
(……リアム陛下は滅茶苦茶な政治をしていたもの。国民たちが怒るのも無理ないわ)
お父様が楽しそうにニヤリと笑った。
「――あとは、王と全ての元凶となった寵姫を処刑するだけだ」
「……!」
(そうだわ……まだそれが残っている……)
あの二人を処刑することこそが反乱軍の一番の目的だろう。
この状況を作り出した元凶である二人を、絶対に生かしておくわけにはいかない。
(処刑……か)
長くリアム陛下の妻としてここにいたというのに、それを聞いても何とも思わなかった。
彼らはそれだけのことをしてきた。
処刑されて当然だ。
(同情は出来ないわね)
そんなことを考えていたそのとき、こちらに近付いてくる激しい足音に気が付いた。
「――公爵閣下!大変です!」
突然、部屋の扉が勢いよく開けられた。
入ってきたのは顔面蒼白になった騎士だった。
「一体何事だ?」
お父様は険しい顔で尋ねた。
「……………お、王と寵姫がどこにも見当たりません!!!」
「…………………何だと?」
部屋の中にある椅子に座った私は、両親にこの状況を尋ねた。
「ああ、話すと長くなるんだがな……」
私の目の前に座ったお父様はポツリポツリとこれまでのことを話し始めた。
そこで父から聞かされた内容は衝撃的なものだった。
どうやら私が陛下に嫁いでからどのような扱いをされているのかを知ったお父様は、秘密裏に人を集めて謀反の準備をしていたらしい。
「元々リアム陛下は王の器ではなかった。ただ単に他に後継者がいないというそれだけの理由で王になれただけの男さ」
「それはよく存じています……」
それに関しては私も同意しかない。
彼はお世辞にも王として優秀とは言えなかった。
仮にリリーに出会っていなかったとしても、国民から慕われる王にはなっていなかっただろう。
結婚する前から陛下の素行の悪さは知っていたが、あそこまでだったとは。
「……私は、リアム陛下に他に愛する人がいるということを知っていた。だが、リアム陛下があそこまでお前を蔑ろにするとは思っていなかった。マルガレーテには本当に辛い思いをさせた。すまなかった」
お父様は悔しそうに唇を噛んでそう言った。
(お父様が気に病む必要なんて少しも無いのに……)
むしろ私を救うために尽力してくれて嬉しかった。
「先ほども言いましたが、私はそんなこと気にしていませんわ」
「マルガレーテ……」
「だけど全く気付きませんでした。お父様たちがそのようなことを考えていらしたなんて」
「リアム陛下に謀反のことを気付かれてはまずいからね。そこは徹底していたんだ」
「そうだったのですね……」
お父様は本当に優しい人だ。
私なら、誰かのためにそこまで出来るだろうか。
「それでは、外にいる彼らはお父様の味方ということですか?」
「ああ、そうだな。あの馬鹿な王がかなりやらかしてくれたおかげで人は集めるのは随分と簡単だったよ。王宮にいる騎士たちも皆寝返った。謀反はもうすぐ終わる。王家に勝ち目はないさ」
(……リアム陛下は滅茶苦茶な政治をしていたもの。国民たちが怒るのも無理ないわ)
お父様が楽しそうにニヤリと笑った。
「――あとは、王と全ての元凶となった寵姫を処刑するだけだ」
「……!」
(そうだわ……まだそれが残っている……)
あの二人を処刑することこそが反乱軍の一番の目的だろう。
この状況を作り出した元凶である二人を、絶対に生かしておくわけにはいかない。
(処刑……か)
長くリアム陛下の妻としてここにいたというのに、それを聞いても何とも思わなかった。
彼らはそれだけのことをしてきた。
処刑されて当然だ。
(同情は出来ないわね)
そんなことを考えていたそのとき、こちらに近付いてくる激しい足音に気が付いた。
「――公爵閣下!大変です!」
突然、部屋の扉が勢いよく開けられた。
入ってきたのは顔面蒼白になった騎士だった。
「一体何事だ?」
お父様は険しい顔で尋ねた。
「……………お、王と寵姫がどこにも見当たりません!!!」
「…………………何だと?」
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