上 下
8 / 27
本編

8 真実

しおりを挟む
「それでお父様、お母様。一体これはどういうことなのですか?」


部屋の中にある椅子に座った私は、両親にこの状況を尋ねた。


「ああ、話すと長くなるんだがな……」


私の目の前に座ったお父様はポツリポツリとこれまでのことを話し始めた。
そこで父から聞かされた内容は衝撃的なものだった。


どうやら私が陛下に嫁いでからどのような扱いをされているのかを知ったお父様は、秘密裏に人を集めて謀反の準備をしていたらしい。


「元々リアム陛下は王の器ではなかった。ただ単に他に後継者がいないというそれだけの理由で王になれただけの男さ」
「それはよく存じています……」


それに関しては私も同意しかない。
彼はお世辞にも王として優秀とは言えなかった。
仮にリリーに出会っていなかったとしても、国民から慕われる王にはなっていなかっただろう。


結婚する前から陛下の素行の悪さは知っていたが、あそこまでだったとは。


「……私は、リアム陛下に他に愛する人がいるということを知っていた。だが、リアム陛下があそこまでお前を蔑ろにするとは思っていなかった。マルガレーテには本当に辛い思いをさせた。すまなかった」


お父様は悔しそうに唇を噛んでそう言った。


(お父様が気に病む必要なんて少しも無いのに……)


むしろ私を救うために尽力してくれて嬉しかった。


「先ほども言いましたが、私はそんなこと気にしていませんわ」
「マルガレーテ……」
「だけど全く気付きませんでした。お父様たちがそのようなことを考えていらしたなんて」
「リアム陛下に謀反のことを気付かれてはまずいからね。そこは徹底していたんだ」
「そうだったのですね……」


お父様は本当に優しい人だ。
私なら、誰かのためにそこまで出来るだろうか。


「それでは、外にいる彼らはお父様の味方ということですか?」
「ああ、そうだな。あの馬鹿な王がかなりやらかしてくれたおかげで人は集めるのは随分と簡単だったよ。王宮にいる騎士たちも皆寝返った。謀反はもうすぐ終わる。王家に勝ち目はないさ」


(……リアム陛下は滅茶苦茶な政治をしていたもの。国民たちが怒るのも無理ないわ)


お父様が楽しそうにニヤリと笑った。


「――あとは、王と全ての元凶となった寵姫を処刑するだけだ」
「……!」


(そうだわ……まだそれが残っている……)


あの二人を処刑することこそが反乱軍の一番の目的だろう。
この状況を作り出した元凶である二人を、絶対に生かしておくわけにはいかない。


(処刑……か)


長くリアム陛下の妻としてここにいたというのに、それを聞いても何とも思わなかった。
彼らはそれだけのことをしてきた。
処刑されて当然だ。


(同情は出来ないわね)


そんなことを考えていたそのとき、こちらに近付いてくる激しい足音に気が付いた。


「――公爵閣下!大変です!」


突然、部屋の扉が勢いよく開けられた。
入ってきたのは顔面蒼白になった騎士だった。


「一体何事だ?」


お父様は険しい顔で尋ねた。


「……………お、王と寵姫がどこにも見当たりません!!!」



「…………………何だと?」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。

音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。 格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。 正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。 だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。 「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。

(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!

青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。 図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです? 全5話。ゆるふわ。

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。

Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。 二人から見下される正妃クローディア。 正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。 国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。 クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。

【完結】私より優先している相手が仮病だと、いい加減に気がついたらどうですか?〜病弱を訴えている婚約者の義妹は超が付くほど健康ですよ〜

よどら文鳥
恋愛
 ジュリエル=ディラウは、生まれながらに婚約者が決まっていた。  ハーベスト=ドルチャと正式に結婚する前に、一度彼の実家で同居をすることも決まっている。  同居生活が始まり、最初は順調かとジュリエルは思っていたが、ハーベストの義理の妹、シャロン=ドルチャは病弱だった。  ドルチャ家の人間はシャロンのことを溺愛しているため、折角のデートも病気を理由に断られてしまう。それが例え僅かな微熱でもだ。  あることがキッカケでシャロンの病気は実は仮病だとわかり、ジュリエルは真実を訴えようとする。  だが、シャロンを溺愛しているドルチャ家の人間は聞く耳持たず、更にジュリエルを苦しめるようになってしまった。  ハーベストは、ジュリエルが意図的に苦しめられていることを知らなかった。

【完結】旦那に愛人がいると知ってから

よどら文鳥
恋愛
 私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。  だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。  それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。  だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。 「……あの女、誰……!?」  この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。  だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。 ※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。

誤解なんですが。~とある婚約破棄の場で~

舘野寧依
恋愛
「王太子デニス・ハイランダーは、罪人メリッサ・モスカートとの婚約を破棄し、新たにキャロルと婚約する!」 わたくしはメリッサ、ここマーベリン王国の未来の王妃と目されている者です。 ところが、この国の貴族どころか、各国のお偉方が招待された立太式にて、馬鹿四人と見たこともない少女がとんでもないことをやらかしてくれました。 驚きすぎて声も出ないか? はい、本当にびっくりしました。あなた達が馬鹿すぎて。 ※話自体は三人称で進みます。

【完結】愛することはないと告げられ、最悪の新婚生活が始まりました

紫崎 藍華
恋愛
結婚式で誓われた愛は嘘だった。 初夜を迎える前に夫は別の女性の事が好きだと打ち明けた。

処理中です...