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第三章
3-28 祭の誘い
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眞瀬木家を出ると少し薄暗くなっていた。
「ただいまー」
「あ!梢賢くん!良かった、帰ってきた」
雨都の家に戻ると楠俊が珍しく慌てて四人を出迎える。
「なんや、ナンちゃん。慌てて」
「いいから急いで入って!皆も!」
「どうかしたんですか?」
永が聞くと楠俊はさらに大慌てで言った。
「康乃様がいらしてるんだよ、君達に会いにね!」
「えええっ!」
それを聞いた梢賢は腰が抜けそうなほどに驚いて奇声を上げた。
雨都の家で一番格式の高い奥座敷へと急いだ四人は、梢賢を筆頭に恐る恐る襖を開けた。
「失礼しますぅ……」
「遅いぞお前達!里の門限は三時だろうが!」
息子の顔を見るやいなや、柊達が怒鳴った。普段なら愛想笑いで揶揄うくらいはする梢賢も、康乃の眼前ではそうはいかない。
「すいません、お客人達は慣れない道なもんで……」
「……だったら三時に帰れって言ってくれねえと」
「ライくん、シー!」
小声で文句をたれる蕾生を永はさらに小声で制して康乃に一礼した。
「遅くなって申し訳ありません」
それを受けていち早く鈴心が跪いて正座し、手をついて頭を下げた。それに永と蕾生も続くと、上座に座る康乃は笑って答える。
「あら、いいのよ。若い人達は元気に遊ぶのも大事だもの。それにいきなり来てしまった私達が悪いんだし」
「そんな、滅相もないことです!お前達、早く康乃様と剛太様の前に」
恐縮しきりの柊達に逆らえるはずもなく、四人は康乃と剛太に相対して座った。すると康乃はまず隣の剛太を紹介する。
「皆さんにはまだ紹介していませんでしたね、孫の剛太です」
「藤生剛太です。初めまして。よろしくお願いします」
礼儀正しく一礼する姿は先日見た時よりも大人びて見えた。
「ははっ!」
慌てて土下座する梢賢に続いて永達も挨拶をする。
「これはどうもご丁寧に。周防永です」
「唯蕾生……ッス」
「御堂鈴心と申します」
鈴心が顔を上げると、剛太は目を丸くして顔を赤らめた。だが鈴心には伝わっていなかった。
「今日はね、お誘いをしに来たの」
「お誘い、ですか?」
「せっかく里に来ていただいたのに、うちの墨砥が堅物だからろくなおもてなしができなくて──ごめんなさいね?」
康乃はかなり気安く接してくる。その雰囲気に少々面くらいながら永は慌てて答えた。
「ああ、いえ、そんな!僕らこそ図々しくご厄介になってますから」
「もうすぐ里でお祭があるのだけど、ご存じ?」
「あ──、いえ……」
ついさっき聞いたばかりだが、隣の梢賢が目で訴えてくるので永は素知らぬ振りをした。
「織魂祭って言って、お盆のようなものなんだけどね、それに貴方がたをご招待したいと思ってるの」
「ええええっ!!」
「あなた!」
先に驚いて奇声を上げたのは柊達で、横で座っていた橙子に叱責された。
「も、申し訳ない……。ですが御前、彼らは部外者ですよ!眞瀬木殿はなんと?」
「あら、いちいち墨ちゃんの許しを取らなくちゃいけないの?当主は私ですよ」
「は、はあ……」
簡単に柊達をあしらった後、康乃はにこにこしながら話を進めた。
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「ただいまー」
「あ!梢賢くん!良かった、帰ってきた」
雨都の家に戻ると楠俊が珍しく慌てて四人を出迎える。
「なんや、ナンちゃん。慌てて」
「いいから急いで入って!皆も!」
「どうかしたんですか?」
永が聞くと楠俊はさらに大慌てで言った。
「康乃様がいらしてるんだよ、君達に会いにね!」
「えええっ!」
それを聞いた梢賢は腰が抜けそうなほどに驚いて奇声を上げた。
雨都の家で一番格式の高い奥座敷へと急いだ四人は、梢賢を筆頭に恐る恐る襖を開けた。
「失礼しますぅ……」
「遅いぞお前達!里の門限は三時だろうが!」
息子の顔を見るやいなや、柊達が怒鳴った。普段なら愛想笑いで揶揄うくらいはする梢賢も、康乃の眼前ではそうはいかない。
「すいません、お客人達は慣れない道なもんで……」
「……だったら三時に帰れって言ってくれねえと」
「ライくん、シー!」
小声で文句をたれる蕾生を永はさらに小声で制して康乃に一礼した。
「遅くなって申し訳ありません」
それを受けていち早く鈴心が跪いて正座し、手をついて頭を下げた。それに永と蕾生も続くと、上座に座る康乃は笑って答える。
「あら、いいのよ。若い人達は元気に遊ぶのも大事だもの。それにいきなり来てしまった私達が悪いんだし」
「そんな、滅相もないことです!お前達、早く康乃様と剛太様の前に」
恐縮しきりの柊達に逆らえるはずもなく、四人は康乃と剛太に相対して座った。すると康乃はまず隣の剛太を紹介する。
「皆さんにはまだ紹介していませんでしたね、孫の剛太です」
「藤生剛太です。初めまして。よろしくお願いします」
礼儀正しく一礼する姿は先日見た時よりも大人びて見えた。
「ははっ!」
慌てて土下座する梢賢に続いて永達も挨拶をする。
「これはどうもご丁寧に。周防永です」
「唯蕾生……ッス」
「御堂鈴心と申します」
鈴心が顔を上げると、剛太は目を丸くして顔を赤らめた。だが鈴心には伝わっていなかった。
「今日はね、お誘いをしに来たの」
「お誘い、ですか?」
「せっかく里に来ていただいたのに、うちの墨砥が堅物だからろくなおもてなしができなくて──ごめんなさいね?」
康乃はかなり気安く接してくる。その雰囲気に少々面くらいながら永は慌てて答えた。
「ああ、いえ、そんな!僕らこそ図々しくご厄介になってますから」
「もうすぐ里でお祭があるのだけど、ご存じ?」
「あ──、いえ……」
ついさっき聞いたばかりだが、隣の梢賢が目で訴えてくるので永は素知らぬ振りをした。
「織魂祭って言って、お盆のようなものなんだけどね、それに貴方がたをご招待したいと思ってるの」
「ええええっ!!」
「あなた!」
先に驚いて奇声を上げたのは柊達で、横で座っていた橙子に叱責された。
「も、申し訳ない……。ですが御前、彼らは部外者ですよ!眞瀬木殿はなんと?」
「あら、いちいち墨ちゃんの許しを取らなくちゃいけないの?当主は私ですよ」
「は、はあ……」
簡単に柊達をあしらった後、康乃はにこにこしながら話を進めた。
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