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第1章 悪役令嬢の帰還
10、わたくし、呆れました
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バーナードが積み上げた書類を物凄い勢いで読み込んでいくクローディアは暫くするとドンドン顔色が悪くなってきた。
「ク、クローディア様、あのお加減が悪いのでしょうか?」
流石のバーナードでさえ、遠慮がちに話しかけてきた。
「そうね、、、。気分が悪くもなるわ。ここまで国の財政状況が悪いだなんて、、、。」
クローディアが確認した書類だけでも既に辻褄の合わない支出があったり、不必要な事業への投資、過度な恩賞、、、、不正のオンパレードだった。
これではあと二年も持たないレベルだ。
そして、クローディアはこの国があの出来事で滅亡する土台がこの国力の無さなのだと悟った。確かにこれでは国としての大事に対応するほどの余裕がない事が容易に想像ができた。
そして、大体の書類に目を通すとそのままソファの背に深く沈んだ。
前王が元気な時はまだマシだった。
しかし、前王が体調を崩した一年前から徐々に財政は悪化していったように見える。クローディアはこの十年で身につけた知識を総動員して分析していた。
そして、その結果はやはりローレンスが無能な王なのだと結論づけるしかなかった。
多分あの男も十年前から何も変わっていないのだ。いつも父親の言う事ばかりを聞いてきたローレンスは父親の指示が無くなるとどうすればいいのかがわからなかったのだ。
クローディアが前王の側近が前王亡き後悉く王宮を去った本当の意味を理解した。これは若手に譲ったいうよりも見捨てたのだ。
「いかがでしょうか?」
バーナードがクレアから渡されたティーセットをクローディアの目の前に手際よく並べながら確認してきた。
「そうね、、。国を滅ぼす為に何をすべきかというえば、このまま此処を去れば近い将来この国は潰れるわ。というよりこんな直ぐに分かる事が今この王宮で誰も分かっていない事に驚くわ。」
「これから、いかがいたしましょう?」
そう、それが問題だった。
個別に制裁するまでこの国は持たないかもしれないのだ。
クローディアの頭の中では直ちにやめるべき公共事業が最低でも十個は頭に浮かぶ。確かにこの国の王、貴族には怒りを感じているが、国民まで巻き込みたくはなかった。
クローディアはこの国の貴族として国民を守る義務はよくわかっているのだ。しかも、今は王太子、、、見過ごすわけにはいかない。
「、、、、、。王と話すわ。先触れを出して、正式な謁見を申し込んで頂戴。出来れば、財政大臣、建設大臣、外交大臣そして流通大臣にも声をかけて。」
「はい。」
「来るのを渋るなら王太子権限を振りかざしてもいいわ。」
「はい、わかりました。して、いつがよろしいでしょうか?」
「今よ!今すぐに使いをやって30分後に謁見の間に連れてきて頂戴。」
そう指示を出してクローディアは、白紙の紙を用意するとスラスラと資料の作成を始めたのだった。
(復讐するはずが、助けなければならないなんて、、、最悪だわ。)
そう思いながらも幼い頃からの王妃教育もあり、国民を見捨てることは出来なかった。
トン、トン、トン
クローディアの指先が資料を作っていたテーブルの上をいっていのリズムで叩く音が響く。クローディアが思考に沈んでいる時の癖だった。
「ダルトリー子爵とアボット伯爵、ウィルビー伯爵にオマリー男爵ね。」
クローディアは一旦制裁リストとは別に国民生活を立て直す為に必要な人材リストの作成も始めていた。
資料や嘆願書などを読み解くとこの貴族達は何とかローレンスの方針を改めようとしているのがよくわかる。提案や要望も的を射ている内容でこの者達は貴族でなく、国民を見ている事がよくわかった。
「バーナード、この召喚状を今の四人に渡して謁見の間に連れてきて頂戴。」
「はい。」
バーナードが出て行くとクローディアは立ち上がりクレア達を呼んでから自室に戻り謁見に相応しい身支度を整えてから昨日も行った謁見の間に向かった。その手には制裁リストならず復興リストが握られていた。
「一体全体なんなのだ!!」
クローディアが謁見の間に現れると挨拶もなしにローレンスが不満そうに口火を切った。
クローディアは呆れながらもこの男に本気で惚れていた自分自身にも呆れていた。それでもクローディアは謁見の作法通りの礼を取ってからその場に集まった者を確認した。
王座にほど近い場所にはクローディアも見覚えがあるローレンスの側近が集まっていた。全てサオリの取り巻きだった連中だ。このメンバーで正しいのなら能力ではなく、忖度で大臣を任命したとしか考えられない人事だった。
それ程仲良くないクローディアでさえ大臣の器ではない事がわかるメンバーだ。
「あなた達が財政大臣、建設大臣、外交大臣そして流通大臣なのですか?」
クローディアが確認するとそれぞれが頷いた。
クローディアは頭を抱えたくなるのを我慢して王座の方まで歩き上座に立った。
そしてその大臣達を見下ろしてから扉近くにいるクローディアが自ら集めたメンバーを近くに呼び寄せた。
「ダルトリー子爵とアボット伯爵、ウィルビー伯爵にオマリー男爵。こちらに来なさい。」
「「「「はい。」」」」
「まずは王太子権限においてこの者達を大臣補佐に任命します。」
「な!何を勝手に!」
ローレンスが身を乗り出して否定する。
「勝手にですって?ローレンス王は、本当にこの国の法律を学ばれたら?」
「なんだと!」
「王太子はその権限において大臣補佐を任命する事が出来るのです。そして王太子が直に任命した補佐とは大臣に対しての意見や大臣命令の修正と王太子への報告が義務付けられています。もちろん最終決定は大臣ですが、あまり邪険にすると諮問機関の審査と投票を持って補佐と大臣の入れ替わりを決定できますわ。」
ローレンスは悔しそうに口を噤んだ。
「ダルトリー子爵は外交大臣補佐、アボット伯爵は財政大臣補佐、ウィルビー伯爵は建設大臣補佐でオマリー男爵が流通大臣補佐に任命します。」
突然に任命された四人は顔を見合わせたがここで異議は唱えられるはずもなく頷いた。
「それでは、早速いくつかの事業について質問させて頂きます。」
そう言ってクローディアは用意していた資料に沿ってそれぞれの大臣に質問を試みるが大臣の中にクローディアへの回答を持っている者は誰もいなかった。
カツン
クローディアは自らのヒールを鳴らして苛立ちを隠さなかった。
そして、最後の質問までまともな答えがない大臣達に叱責を飛ばした。
「ねぇ、貴方達は本当に大臣なのですか?こんな簡単な質問にもまともに答えられないとは流石に思いませんでしたわ。恥を知りなさい。」
大臣達の顔が怒りと羞恥で赤くなる。
「さぁ、それでは新大臣補佐、貴方達の回答を聞かせて頂戴。」
「はい!」
クローディアが話を振ると今まで懸命にメモを取って聞いていたアボット伯爵から順番に今クローディアが知りたかった答えをスラスラと答えたのだ。
それには各大臣だけではなくローレンスでさえ目を見開いた。なぜならクローディアが指名した者達は今まで別に目立った功績もない者たちで自分達がわからなかったことを知っているようには見えなかったのだ。
「よくわかったわ。ありがとう。」
クローディアは新補佐達に満足そうに頷くとローレンスを見た。
「ぐ、、そなた達ご苦労だった。これからも励むが良い。」
「「「「は!」」」」
ここにいるメンバー全員はこの新メンバーに不満を言う事は出来なかった。そして王からも正式に許可を受けた形でこの謁見が終了したのだった。
クローディアはもう用はないと扉に向かったが呆然としているローレンスと大臣達に振り向いて婉然と笑った。
「そうそう、ローレンス王、わたくしが正式な王太子となった事を国内外に広めたいと思いますの。来月には前王の喪が明けますので、お披露目のパーティを開きますわ。」
クローディアは、ローレンスの返事も待たずにそのまま退出していった。
そのクローディアの後を新補佐となった者達が続いていったのだった。
これが新体制と旧体制がはっきりと別れた瞬間となった。
「ク、クローディア様、あのお加減が悪いのでしょうか?」
流石のバーナードでさえ、遠慮がちに話しかけてきた。
「そうね、、、。気分が悪くもなるわ。ここまで国の財政状況が悪いだなんて、、、。」
クローディアが確認した書類だけでも既に辻褄の合わない支出があったり、不必要な事業への投資、過度な恩賞、、、、不正のオンパレードだった。
これではあと二年も持たないレベルだ。
そして、クローディアはこの国があの出来事で滅亡する土台がこの国力の無さなのだと悟った。確かにこれでは国としての大事に対応するほどの余裕がない事が容易に想像ができた。
そして、大体の書類に目を通すとそのままソファの背に深く沈んだ。
前王が元気な時はまだマシだった。
しかし、前王が体調を崩した一年前から徐々に財政は悪化していったように見える。クローディアはこの十年で身につけた知識を総動員して分析していた。
そして、その結果はやはりローレンスが無能な王なのだと結論づけるしかなかった。
多分あの男も十年前から何も変わっていないのだ。いつも父親の言う事ばかりを聞いてきたローレンスは父親の指示が無くなるとどうすればいいのかがわからなかったのだ。
クローディアが前王の側近が前王亡き後悉く王宮を去った本当の意味を理解した。これは若手に譲ったいうよりも見捨てたのだ。
「いかがでしょうか?」
バーナードがクレアから渡されたティーセットをクローディアの目の前に手際よく並べながら確認してきた。
「そうね、、。国を滅ぼす為に何をすべきかというえば、このまま此処を去れば近い将来この国は潰れるわ。というよりこんな直ぐに分かる事が今この王宮で誰も分かっていない事に驚くわ。」
「これから、いかがいたしましょう?」
そう、それが問題だった。
個別に制裁するまでこの国は持たないかもしれないのだ。
クローディアの頭の中では直ちにやめるべき公共事業が最低でも十個は頭に浮かぶ。確かにこの国の王、貴族には怒りを感じているが、国民まで巻き込みたくはなかった。
クローディアはこの国の貴族として国民を守る義務はよくわかっているのだ。しかも、今は王太子、、、見過ごすわけにはいかない。
「、、、、、。王と話すわ。先触れを出して、正式な謁見を申し込んで頂戴。出来れば、財政大臣、建設大臣、外交大臣そして流通大臣にも声をかけて。」
「はい。」
「来るのを渋るなら王太子権限を振りかざしてもいいわ。」
「はい、わかりました。して、いつがよろしいでしょうか?」
「今よ!今すぐに使いをやって30分後に謁見の間に連れてきて頂戴。」
そう指示を出してクローディアは、白紙の紙を用意するとスラスラと資料の作成を始めたのだった。
(復讐するはずが、助けなければならないなんて、、、最悪だわ。)
そう思いながらも幼い頃からの王妃教育もあり、国民を見捨てることは出来なかった。
トン、トン、トン
クローディアの指先が資料を作っていたテーブルの上をいっていのリズムで叩く音が響く。クローディアが思考に沈んでいる時の癖だった。
「ダルトリー子爵とアボット伯爵、ウィルビー伯爵にオマリー男爵ね。」
クローディアは一旦制裁リストとは別に国民生活を立て直す為に必要な人材リストの作成も始めていた。
資料や嘆願書などを読み解くとこの貴族達は何とかローレンスの方針を改めようとしているのがよくわかる。提案や要望も的を射ている内容でこの者達は貴族でなく、国民を見ている事がよくわかった。
「バーナード、この召喚状を今の四人に渡して謁見の間に連れてきて頂戴。」
「はい。」
バーナードが出て行くとクローディアは立ち上がりクレア達を呼んでから自室に戻り謁見に相応しい身支度を整えてから昨日も行った謁見の間に向かった。その手には制裁リストならず復興リストが握られていた。
「一体全体なんなのだ!!」
クローディアが謁見の間に現れると挨拶もなしにローレンスが不満そうに口火を切った。
クローディアは呆れながらもこの男に本気で惚れていた自分自身にも呆れていた。それでもクローディアは謁見の作法通りの礼を取ってからその場に集まった者を確認した。
王座にほど近い場所にはクローディアも見覚えがあるローレンスの側近が集まっていた。全てサオリの取り巻きだった連中だ。このメンバーで正しいのなら能力ではなく、忖度で大臣を任命したとしか考えられない人事だった。
それ程仲良くないクローディアでさえ大臣の器ではない事がわかるメンバーだ。
「あなた達が財政大臣、建設大臣、外交大臣そして流通大臣なのですか?」
クローディアが確認するとそれぞれが頷いた。
クローディアは頭を抱えたくなるのを我慢して王座の方まで歩き上座に立った。
そしてその大臣達を見下ろしてから扉近くにいるクローディアが自ら集めたメンバーを近くに呼び寄せた。
「ダルトリー子爵とアボット伯爵、ウィルビー伯爵にオマリー男爵。こちらに来なさい。」
「「「「はい。」」」」
「まずは王太子権限においてこの者達を大臣補佐に任命します。」
「な!何を勝手に!」
ローレンスが身を乗り出して否定する。
「勝手にですって?ローレンス王は、本当にこの国の法律を学ばれたら?」
「なんだと!」
「王太子はその権限において大臣補佐を任命する事が出来るのです。そして王太子が直に任命した補佐とは大臣に対しての意見や大臣命令の修正と王太子への報告が義務付けられています。もちろん最終決定は大臣ですが、あまり邪険にすると諮問機関の審査と投票を持って補佐と大臣の入れ替わりを決定できますわ。」
ローレンスは悔しそうに口を噤んだ。
「ダルトリー子爵は外交大臣補佐、アボット伯爵は財政大臣補佐、ウィルビー伯爵は建設大臣補佐でオマリー男爵が流通大臣補佐に任命します。」
突然に任命された四人は顔を見合わせたがここで異議は唱えられるはずもなく頷いた。
「それでは、早速いくつかの事業について質問させて頂きます。」
そう言ってクローディアは用意していた資料に沿ってそれぞれの大臣に質問を試みるが大臣の中にクローディアへの回答を持っている者は誰もいなかった。
カツン
クローディアは自らのヒールを鳴らして苛立ちを隠さなかった。
そして、最後の質問までまともな答えがない大臣達に叱責を飛ばした。
「ねぇ、貴方達は本当に大臣なのですか?こんな簡単な質問にもまともに答えられないとは流石に思いませんでしたわ。恥を知りなさい。」
大臣達の顔が怒りと羞恥で赤くなる。
「さぁ、それでは新大臣補佐、貴方達の回答を聞かせて頂戴。」
「はい!」
クローディアが話を振ると今まで懸命にメモを取って聞いていたアボット伯爵から順番に今クローディアが知りたかった答えをスラスラと答えたのだ。
それには各大臣だけではなくローレンスでさえ目を見開いた。なぜならクローディアが指名した者達は今まで別に目立った功績もない者たちで自分達がわからなかったことを知っているようには見えなかったのだ。
「よくわかったわ。ありがとう。」
クローディアは新補佐達に満足そうに頷くとローレンスを見た。
「ぐ、、そなた達ご苦労だった。これからも励むが良い。」
「「「「は!」」」」
ここにいるメンバー全員はこの新メンバーに不満を言う事は出来なかった。そして王からも正式に許可を受けた形でこの謁見が終了したのだった。
クローディアはもう用はないと扉に向かったが呆然としているローレンスと大臣達に振り向いて婉然と笑った。
「そうそう、ローレンス王、わたくしが正式な王太子となった事を国内外に広めたいと思いますの。来月には前王の喪が明けますので、お披露目のパーティを開きますわ。」
クローディアは、ローレンスの返事も待たずにそのまま退出していった。
そのクローディアの後を新補佐となった者達が続いていったのだった。
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