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未知の生命体との遭遇

159併合の限度

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 鹿島とマーガレットは、
ジョージ軍によって平定された地区の教会で司祭長の接待を受けていた。

「資金援助をして頂き、感謝します。」
「孤児院と学校の設立への協力です。」

「それにつきましては、テテサ教皇様より指導されたことです。
間もなく、教鞭をとれる司祭も来て下さるとの事を承っています。」

「この地区では、多くのインデアンエルフが、
奴隷とされていたようですが、ここに来る途中の商店では、
多くのインデアンエルフも買い物をしていましたね。」

「この教会では、席には座らせません。
席に座れるのは、人種だけです。入り口も違います。」
と、
司祭長はにこやかな顔で愛想笑いをしたのは、
鹿島がインデアンエルフを暗に批判してると、
勘違いしたようである。

「この地区では、まだアパルトヘイト法は、継続しているのですか?」

「市民法は残っています。
ですので、新しい支配者よりも、
誰もが以前の支配者を懐かしんでいます。」
と、多額の寄付信者である鹿島とマーガレットに、
司祭長は安心しろとの意味なのか微笑んだ。

 これまでの経過では、多くの寄付をしてくれるのは、
奴隷農奴を所有している農地所有者であったためのようである。

 鹿島とマーガレットは、
司祭長の笑顔を無視するように教会を出ていった。

「酷い場所だわ。」
と、鹿島の操る馬車の操縦席隣で、マーガレットは憤慨している。

「マーガレットでも、暫くかかりそうだね。」
と、他人事のように、無責任に鹿島が返答すると、

「閣下の仕事でしょう!」
と、鹿島はマーガレットに思いっ切り太ももを叩かれた。

 鹿島は近衛師団の中隊長以上を集めると、
人権保護警官編成を告げて、各地に分散し始めた。

 近衛師団の動きに合わせるようにジョージ軍編成も行われて、
ジョージ.ワシントンが首席行長官になり、
実務を担当する副首席行政長官にはリンカーンが決まった。

 ジョージ軍が正式に人権法を発令すると、
多くの北新大陸移住者は反発しだした。

 浄化法執行軍は再び勢力を盛り返しだした。

 北新大陸は再び混沌としだすのかと思えたとき、
ジョージ将軍からマーガレット首席行政長官への面会要請がなされた。

「で、エゲレス国とは、人権法では同意をしたと?」
「独立も認めるとの、裏取引もあります。」

「その条件は?」
「エゲレス国と亜人協力国の仲介です。」

我が国からの、エゲレス国植民地への攻撃をやめろと?」
「本音はそうでしょう。」

「この北新大陸からエゲレス国軍が引き上げた場合、
人権法は継続できますか?」
「エゲレス国軍からの援助がなくなれば、
浄化法執行軍は自然壊滅しだすでしょう。」

「では、浄化法執行軍壊滅後は、亜人協力国に併合できますか?」
「亜人協力国の国是に従う準併合として、
われらには独立共和国憲法を認めて頂きたい。」
と、ジョージ将軍とリンカーンは詰め寄った。

 マーガレットは、
北新大陸内移民者の根深い人種差別問題を感じさせられたと同時に、エゲレス国内においても、
多くの植民地から本国に移り住んだ人種問題は、
軍に所属している多くの部族の反感を誘い起こさせる悩みの種のようでもあると知らされた。

 各国では、北新大陸での人種問題がいろんな場所で、
突然に地下の水脈が噴き出したかのような混乱が起こった。

 北新大陸の人種差別を掲げた浄化法執行軍は、
徐々に資金源が細くなりだすと、
援助金の減少に並行して衰退しだしてきた。

 テテサ教皇は北新大陸に仮本部を移して、北、中、南新大陸への影響を推し進めだした。

 北新大陸では、ジョージ将軍とリンカーンの対決選挙が行われると、人種問題を取り上げたリンカーンは、
首席行長官に指名されると、強行独裁政治へと進みだした。

 リンカーン首席行長官による区画分割政策は、
強硬な行動を伴いながらも、
インデアンエルフや流浪の民の希望に沿った形は出来上がり、
豊富な資源と絶え間ない移民によって工業化が進み、
その潜在的な自力は、西大陸の国々をも凌駕する勢いとなった。

 北新大陸の工業化の陰の立役者は、
流浪の民の資本でありかなりの額になっていた背景は、
ほかの国々への税を納めずに多くの資本貨幣を北新大陸に送っていた。

 最も税の収入が著しく落ちた国はドドンパ国であったが為に、
流浪の民への風当たりは強くなり、
ドドンパ国内の貨幣の減少に加えて、
技術と人材の流失はほかの国よりも際立って多かった。

 ドドンパ国においては些細な事でも、
国を持たない流浪の民の束縛と財産没収が行われ始めた。

 当然これに怒った北新大陸に住んでいる流浪の民組織は、
リンカーン首席行長官に掛け合って、敵の敵は味方だと主張しだした。

 エゲレス国との同盟がなされると、
敵の味方は敵だと言って、オスマス国に対しても戦線布告させた。

 流浪の民組織の持つ資金は、運営委員会の想像を遥かに超えていた。

 その総額は、亜人協力国の国家予算をも上回っていた。

 豊富な資本等と多くの工場がフル活動を始めると、
たちまちに蒸気パイプエンジンを組み入れた、
かなりの戦艦を建造してしまった。

 北新大陸軍の戦艦と輸送艦の行き先は、南大陸であった。

 南大陸では、ドドンパ国とオスマス国相手に、
北新大陸軍は豊富な武器と装備によってかなりの速さで進撃しだしていた。

 西大陸での前線では戦闘膠着状態であったが、
北新大陸軍の参戦により、戦況は科学変化するように動き出してきた。

 北新大陸軍とエゲレス国軍は、
サバンナ地帯を制してドドンパ国軍を敗走させると、
砂漠地帯の彼方にオスマス国軍を追いやった。

 砂漠地帯から追い出されたオスマス国軍を待っていたのは、
亜人協力国軍であった。

 オスマス国国境では亜人協力国との戦闘がなされたが、
ドドンパ国の援護のないオスマス国は既に戦闘意欲はなかった。

 既にトーマス元帥も南大陸での戦闘を横目でにらみながら、
ドドンパ国に攻め込んでいた。

 亜人協力国軍は、
ドドンパ国に併合されていた国々を次々と開放していき、
西大陸を制覇する勢いを見せ始めた。

 ヤン海軍元帥も、
東の島々と樹海裏山脈を越えた東大陸の植民地であった南側全てを、亜人協力国に併合していた。

 中新大陸では、
いろんな国の移民が入り込んではいるが、
国としてのまとまりはまだなされてはいなかった。

 人種原住民は小さな集落国家を形成してはいたが、
文字も鉄器類もない未だ青銅器時代であったために、
簡単に亜人協力国に併合できた。

 南新大陸においてはどの国においては、
厄介な風土病と家族単位で移動するヒョウ柄猫亜人種に悩まされたために、移住をあきらめていた。

 北新大陸は亜人協力国の影響下には入ったが、
政治的には別の国家となってしまい、
ただ宗教的にだけテテサ教皇の支配下にはなっていた。

 北新大陸の政治体制は、
選挙によって大きく変動する政策であった。

 インデアンエルフや約束の地をもらった民族は、
亜人協力国には友好的であった。

 西大陸からの移民集団は、エゲレス国との関係を強化すべきとの、
三つ巴の対立意見飛び交う国となってしまった。

 エゲレス国においても、
かなりの植民地からの流入者に悩まされながらも、
選挙権を与えることになっていたが、
この国にだけはテテサ教皇の影響下には入らなかった。

 亜人協力国では、
いまだに鎖国しているカントリ国の処置を決めかねていて、
悩みの刺となっていた。

 三つの勢力園はたがいに大きなとげを刺したままの状態で、
外交関係は安定していた。

 

 亜人協力国軍とドドンパ国での市街戦が行われたが、
ドドンパ国は指導者の自決によって自然消滅した。

 惑星の大まかな勢力園が固定された。

 南半球のほとんどが亜人協力国の海軍によって制圧された。

 南大陸は亜人協力国とエゲレス国が二分し合い、
東大陸と西大陸に北大陸は亜人協力国となった。

 カントリ国は樹海の中に封鎖されて状態で残っている。

 神降臨街の輸送艦戦略作戦室では、
元銀河連合航宙軍の陸戦隊が集まり、
現状報告とこれからの方針が話し始められていた。

 臨月を迎えている第二子をおなかに宿したマーガレットは、
世界地図にレーザー光線を当てつつ、

「世界の四分の三は、手中に収めたが、
すべてを併合することは、困難になったが、工業化は進んだ。
先ずは、これから残っている中新大陸と南新大陸の併合に本腰を入れる。」
と、マーガレットの説明を終わると、
シーラーの夫であるマークが手を挙げて、

「銀河連合への帰還のめどは、まだ絶望でしょうか?」
と、質問しだすと、
隣の脳筋娘シーラーは、
有無をも言わさないとの素振りで、
マークの口を手で押さえたまま羽交い絞めにした。
「何度も説明したでしょう。それは禁句だ。
同じ事を子供の前で言ったら、口をきけないようにしてやる。」
と、本気怒り顔で叫んだ。

「何度も説明したが、
この世界と銀河連合の世界は同じ三次元であるが、
違う次元世界なのだ。

 私たちの世代では解明できないが、
子供や孫の時代には移動手段を見つけられると期待している。
故に今は無理だ。

だからと言っては弁明に聞こえるが、
この惑星でやりたいことの希望を言ってほしい。
可能な限り希望に沿いたい。」
と、
マーガレットは凛として咲く花の如く満面笑顔になったが、
直ぐにお腹を押さえて産気づいた。

 マーガレットの産んだ第二子は男の子であった。
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