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国興し
67 ノロノア王子傷害事件
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ボーボアが出たとの報告で鹿島達も聖騎士団の馬を借りて、タイガー聖騎士隊を追って門を駆け抜けた。
タイガー聖騎士隊が起こした土埃モヤの先から、二十人ぐらいの騎馬隊が鹿島達の方へ向かってきた。
「俺らの行く手を阻むな!」
と叫ぶ先頭の若者の目が血走っていた。
「止まれ!何事が起きた!」
と、ホルヘ公爵が先頭の若者の進行線上に、行く手を遮るように馬を停止させた。
先頭の若者は剣を振り回して、
「無礼者どけ!」
と叫んでホルヘ公爵に迫った。
先頭の若者の剣がホルヘ公爵に迫った瞬間、
「風圧!」と鹿島が叫ぶと、先頭の若者は、馬ごと道横の用水路に吹き飛んだ。
「あ!」と、ホルヘ公爵とイザベラ王女が叫んだ。
二人は慌てて用水路に落ちて、気を失っている若者を介抱しだした。
ヒカリ王女も介抱に加わり、回復魔法を唱えだした。
若者が正気に返ると、
「何があったのだ!」
とホルヘ公爵は怒鳴るが、
若者は恐怖の為かろれつが回らない様子で、言っている言葉を聞きとれないほどパニック状態であった。
イザベラ王女は、若者の後ろから付いて来ていた、二十人ぐらいの甲冑姿の集団に声がけした。
二十人ぐらいの甲冑姿の男たちは互いに顔を見合わせ合い、返答するのを譲り合っていた。
「お前説明しろ!」
と先頭にいた男を指名した。
先頭にいた男はうつむいたまま、渋々と口を開いた。
「沼地での演習中に、突然ボーボアが現れて、みんなは混乱しました。」
「で、兵たちは?」
「おそらく戦っているかと。」
「おそらく?とわ!」
「逃げるので精一杯でした。」
「お前たちは、兵を残して、お前らだけ逃げたと!」
「撤退です!」
と、甲冑姿の集団の中から声がした。
「今、発言したのは誰だ!名を名乗って前に出てこい!」
発言したと思われる男の周りにいた甲冑姿の集団は、発言した男を残して左右に散った。
発言した男は仕方ないと観念した様子で、騎乗したままイザベラ王女の前に進み出てきた。
「お前たちの作法は、王族の前でも騎乗したまま話すのか?」
甲冑姿の集団は慌てて馬から降りて膝をついた。
「私は、トンズラコ伯爵爵の次男エンテコといいます。我々はノロノア王子を護衛するため、やむを得ず演習場から撤退しました。馬上からの対応は、非常事態であり、失礼にはならないと思います。」
「お前たちの羽織服装からしたら、全員が大隊長以上であるが、残った兵の指揮は誰がとっている。」と、
イザベラ王女の後ろからホルヘ公爵が声がけするが、全員が無口になった。
返事がない事ですべてを理解したホルヘ公爵は急ぎ馬に騎乗すると、
「サッサとノロノア王子を連れていけ!」
と叫んで駆け出していった。
「指揮する者がいないだと、無能者どもが!」
と慌ててイザベラ王女も馬にまたがり駆け出した。
サニーはまだ治療中のヒカリ王女に声がけした。
「ヒカリちゃん、行きましょうか。」
鹿島は馬から降りて、用水路にいるヒカリ王女に手を差し出した。
「まて、きちんと治せ!」と、
エンテコが叫ぶが、鹿島は無視してヒカリ王女を馬に乗せた。
ヒカリ王女を引き留めようと、足をつかんだエンテコの腕が胴体から離れた。
ヒカリ王女から見ても、女性の足を掴む行為は腕を切られて当然の無礼ごとであり、鹿島が自分を守っているとも実感出来た事で、腕を切られたエンテコに同情の一欠けらも無かった。
転がり叫ぶエンテコを無視して、三人はイザベラ王女たちの後を追った。
「おい。今あいつが、剣を抜いたのが見えたか?」
「刃が瞬時に通り過ぎたような気はしたが、確信はない。」
「俺も、刃が瞬時に、通り過ぎたような気がした。」
「何者だ?」
と、誰もが転がり叫ぶエンテコを無視して、遠ざかる鹿島を見つめて震えていた。
「けが人の回収を急げ、ドストエフ!治療師たちを呼びに行け!」
とタイガーの怒鳴る声が沼地に響いていた。
沼地に着いたホルヘ公爵は、国都の飲み水源泉の一つが真っ赤に染まっているの唖然とした。
「ボーボアが潜んでいるだろうから、気を付けながら、怪我人を安全な場所に移動しろ!」
沼地を走り回る水音は、各方面から聞こえてきていた。
ホルヘ公爵は倒木を握っている手を見つけると、沼に飛び込んで倒木を目指した。
「しっかりしろ!」
と言って手を持ち上げたが、異常な軽さに悪寒が走った。
倒木を握っていた手は、肩から先がすでに無くなっていた。
「ボーボアがいたぞ!」
と遠くから怒鳴る声がすると、水面を叩く足音が其処ら中で始まった。
「第一班から二班はボーボアに迎え!三班から五班は救助を続けろ!」
とタイガーの声が沼地の奥から響いてきた。
ホルヘ公爵は生存者を探そうと沼中を駆けずり回った。
イザベラ王女は「ボーボアがいたぞ!」との声を遠くから聞いていたが、沼地から這い上がってくる兵の集団に遭遇していた。
兵たち全員はかなりの傷を負っていた。
「皆、こちらの草地に寝ころべ。もうすぐ助けが来る。」
と言って、水際で力なくうずくまっている兵たちを順次岸に引き上げると、鎧の継ぎ手のひもを切り取り鎧を脱がしだした。
鹿島達三人は、治療師たちを呼びに帰るドストエフに遭遇した。
「ボーボアはいたのか?」
「まだ見つかりませんが、多くのけが人がいるので、万能傷薬の追加と、治療師たちを呼びに帰るところです。」
「シンデレラに伝えろ!こっちを優先して来いと、タローが言っていたと伝えろ。」
と鹿島は怒鳴りながら馬に鞭を当てた。
鹿島たちは、イザベラ王女が下着姿で、兵たちを介抱している現場に遭遇した。
「従兄弟殿!何で下着姿なの!」
「包帯がないので、仕方がないでしょう!」
と、イザベラ王女振り返りもしないで、兵の足傷から流れ出る血を、止血する様に布の切れ端で固く結んでいた。
「ここは私に任せて、甲冑だけでも着なさい。」
とヒカリ王女は言って、回復薬を一気飲みした。
鹿島はイザベラ王女の方を見ないよう沼を見回しながら、
「ボーボアはまだ見つからないのか?」
と独り言のように話し出した。
「見つけたようよ。あっちの方角から声が聞こえたわ。」
と、甲冑を身につけながらイザベラ王女は沼の奥を指さした。
イザベラ王女の声に振り向くと、イザベラ王女がかがんだ拍子に、胸の奥まですべてを見てしまった。
鹿島は胸のピンク色に見入ってしまった様子で固まった。
「行くわよ!」
とサニーのげんこつが鹿島の頭を襲った。
鹿島とサニーは、持っているだけの回復薬をヒカリ王女に渡した。
「イザベラ。ボーボアと戦ってみたい?」
「もちろんです。」
「ではまた憑依するね。」
と言って、サニーはイザベラ王女の中に消えていくと、黒い鱗甲冑に翅模様を浮かび上がらせた。
ヒカリ王女は羨ましそうに、黒い鱗甲冑の翅模様を見つめていた。
タイガー聖騎士隊が起こした土埃モヤの先から、二十人ぐらいの騎馬隊が鹿島達の方へ向かってきた。
「俺らの行く手を阻むな!」
と叫ぶ先頭の若者の目が血走っていた。
「止まれ!何事が起きた!」
と、ホルヘ公爵が先頭の若者の進行線上に、行く手を遮るように馬を停止させた。
先頭の若者は剣を振り回して、
「無礼者どけ!」
と叫んでホルヘ公爵に迫った。
先頭の若者の剣がホルヘ公爵に迫った瞬間、
「風圧!」と鹿島が叫ぶと、先頭の若者は、馬ごと道横の用水路に吹き飛んだ。
「あ!」と、ホルヘ公爵とイザベラ王女が叫んだ。
二人は慌てて用水路に落ちて、気を失っている若者を介抱しだした。
ヒカリ王女も介抱に加わり、回復魔法を唱えだした。
若者が正気に返ると、
「何があったのだ!」
とホルヘ公爵は怒鳴るが、
若者は恐怖の為かろれつが回らない様子で、言っている言葉を聞きとれないほどパニック状態であった。
イザベラ王女は、若者の後ろから付いて来ていた、二十人ぐらいの甲冑姿の集団に声がけした。
二十人ぐらいの甲冑姿の男たちは互いに顔を見合わせ合い、返答するのを譲り合っていた。
「お前説明しろ!」
と先頭にいた男を指名した。
先頭にいた男はうつむいたまま、渋々と口を開いた。
「沼地での演習中に、突然ボーボアが現れて、みんなは混乱しました。」
「で、兵たちは?」
「おそらく戦っているかと。」
「おそらく?とわ!」
「逃げるので精一杯でした。」
「お前たちは、兵を残して、お前らだけ逃げたと!」
「撤退です!」
と、甲冑姿の集団の中から声がした。
「今、発言したのは誰だ!名を名乗って前に出てこい!」
発言したと思われる男の周りにいた甲冑姿の集団は、発言した男を残して左右に散った。
発言した男は仕方ないと観念した様子で、騎乗したままイザベラ王女の前に進み出てきた。
「お前たちの作法は、王族の前でも騎乗したまま話すのか?」
甲冑姿の集団は慌てて馬から降りて膝をついた。
「私は、トンズラコ伯爵爵の次男エンテコといいます。我々はノロノア王子を護衛するため、やむを得ず演習場から撤退しました。馬上からの対応は、非常事態であり、失礼にはならないと思います。」
「お前たちの羽織服装からしたら、全員が大隊長以上であるが、残った兵の指揮は誰がとっている。」と、
イザベラ王女の後ろからホルヘ公爵が声がけするが、全員が無口になった。
返事がない事ですべてを理解したホルヘ公爵は急ぎ馬に騎乗すると、
「サッサとノロノア王子を連れていけ!」
と叫んで駆け出していった。
「指揮する者がいないだと、無能者どもが!」
と慌ててイザベラ王女も馬にまたがり駆け出した。
サニーはまだ治療中のヒカリ王女に声がけした。
「ヒカリちゃん、行きましょうか。」
鹿島は馬から降りて、用水路にいるヒカリ王女に手を差し出した。
「まて、きちんと治せ!」と、
エンテコが叫ぶが、鹿島は無視してヒカリ王女を馬に乗せた。
ヒカリ王女を引き留めようと、足をつかんだエンテコの腕が胴体から離れた。
ヒカリ王女から見ても、女性の足を掴む行為は腕を切られて当然の無礼ごとであり、鹿島が自分を守っているとも実感出来た事で、腕を切られたエンテコに同情の一欠けらも無かった。
転がり叫ぶエンテコを無視して、三人はイザベラ王女たちの後を追った。
「おい。今あいつが、剣を抜いたのが見えたか?」
「刃が瞬時に通り過ぎたような気はしたが、確信はない。」
「俺も、刃が瞬時に、通り過ぎたような気がした。」
「何者だ?」
と、誰もが転がり叫ぶエンテコを無視して、遠ざかる鹿島を見つめて震えていた。
「けが人の回収を急げ、ドストエフ!治療師たちを呼びに行け!」
とタイガーの怒鳴る声が沼地に響いていた。
沼地に着いたホルヘ公爵は、国都の飲み水源泉の一つが真っ赤に染まっているの唖然とした。
「ボーボアが潜んでいるだろうから、気を付けながら、怪我人を安全な場所に移動しろ!」
沼地を走り回る水音は、各方面から聞こえてきていた。
ホルヘ公爵は倒木を握っている手を見つけると、沼に飛び込んで倒木を目指した。
「しっかりしろ!」
と言って手を持ち上げたが、異常な軽さに悪寒が走った。
倒木を握っていた手は、肩から先がすでに無くなっていた。
「ボーボアがいたぞ!」
と遠くから怒鳴る声がすると、水面を叩く足音が其処ら中で始まった。
「第一班から二班はボーボアに迎え!三班から五班は救助を続けろ!」
とタイガーの声が沼地の奥から響いてきた。
ホルヘ公爵は生存者を探そうと沼中を駆けずり回った。
イザベラ王女は「ボーボアがいたぞ!」との声を遠くから聞いていたが、沼地から這い上がってくる兵の集団に遭遇していた。
兵たち全員はかなりの傷を負っていた。
「皆、こちらの草地に寝ころべ。もうすぐ助けが来る。」
と言って、水際で力なくうずくまっている兵たちを順次岸に引き上げると、鎧の継ぎ手のひもを切り取り鎧を脱がしだした。
鹿島達三人は、治療師たちを呼びに帰るドストエフに遭遇した。
「ボーボアはいたのか?」
「まだ見つかりませんが、多くのけが人がいるので、万能傷薬の追加と、治療師たちを呼びに帰るところです。」
「シンデレラに伝えろ!こっちを優先して来いと、タローが言っていたと伝えろ。」
と鹿島は怒鳴りながら馬に鞭を当てた。
鹿島たちは、イザベラ王女が下着姿で、兵たちを介抱している現場に遭遇した。
「従兄弟殿!何で下着姿なの!」
「包帯がないので、仕方がないでしょう!」
と、イザベラ王女振り返りもしないで、兵の足傷から流れ出る血を、止血する様に布の切れ端で固く結んでいた。
「ここは私に任せて、甲冑だけでも着なさい。」
とヒカリ王女は言って、回復薬を一気飲みした。
鹿島はイザベラ王女の方を見ないよう沼を見回しながら、
「ボーボアはまだ見つからないのか?」
と独り言のように話し出した。
「見つけたようよ。あっちの方角から声が聞こえたわ。」
と、甲冑を身につけながらイザベラ王女は沼の奥を指さした。
イザベラ王女の声に振り向くと、イザベラ王女がかがんだ拍子に、胸の奥まですべてを見てしまった。
鹿島は胸のピンク色に見入ってしまった様子で固まった。
「行くわよ!」
とサニーのげんこつが鹿島の頭を襲った。
鹿島とサニーは、持っているだけの回復薬をヒカリ王女に渡した。
「イザベラ。ボーボアと戦ってみたい?」
「もちろんです。」
「ではまた憑依するね。」
と言って、サニーはイザベラ王女の中に消えていくと、黒い鱗甲冑に翅模様を浮かび上がらせた。
ヒカリ王女は羨ましそうに、黒い鱗甲冑の翅模様を見つめていた。
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