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国興し
68 ボーボアに挑むイザベラ王女
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鹿島はサニーが憑依したイザベラ王女の案内で、沼地の倒木を利用して義経舟渡をしながらまっすぐに進んでいくと、多くの兵たちに交じってホルヘ公爵は指揮をしながらも、ケガ人を沼にある倒木に運んでいた。
「ホルヘ公爵殿!けが人を街道わきまで運んでください。間もなく介護人が到着します。俺らはボーボアを退治してきます。」
「おお、そうか助かる。みんな聞いたか、自分で沼地を歩けるものは街道そいで待っていろ。歩行困難者に手を貸せる者は、頼む。」
皆の顔が明るくなったことで、鹿島達は再度倒木を義経舟渡しながらその場を後にすると、
「王女様気を付けて、無理をしないで!」
とホルヘ公爵から心配する声が後ろから響いた。
鹿島達は深い沼地に差し掛かると、水面を叩く音と罵声が聞こえてきた。
「隊組を崩すな!」
「一人だけになるな!」
「はぐれるな!」
「尾刃が来るぞ!」
「口の毒液もそろそろ来るぞ!」
「沼の奥に追い込め!」
「とぐろを巻かせるな!」
と、足場の悪さが聖騎士団の連携を拒んでいた。
倒木がなくなった沼地で鹿島の身体はすでに胸下まで水の中に浸かっていたが、イザベラ王女は水面上を歩いていた。
『イザベラ。タローを掴んで飛ぶわよ。』
『合点承知。』
とサニーとイザベラ王女は体の中で会話しだした。
「タロー殿、腕を上げてください!」
イザベラ王女は鹿島の手を握って叫換する方向へ向かった。
「イザベラ!尾の部分上に降ろせ!サニー!頭部は任せた!」
「合点承知!」と、鹿島の耳の中と、頭の中で二人の応えがコダマした。
ボーボアの尾刃の動きは活発で、鹿島の降り立った場所から尾刃の根元を攻撃するには遠かった。
鹿島が尾刃の動きを観察している状態で、サニーとイザベラは飛翔しながら作戦会議中であった。
『イザベラ。ボーボアの目を狙うわよ。』
『方法は?』
『連続氷のやり穂先と同時に、尾刃剣で突っ込む。』
『合点承知の助。』
イザベラは太陽を背にして、青く発動させた尾刃剣を左手に持って右手をかざし、にぎにぎを三度繰り返した。
「氷のやり穂先連発!」
五本の氷のやり穂先は段々と大きくなりながら、三列連続してボーボアの頭部に向かっていった。
イザベラは翅を背中の中央でぴたりと合わせ、一本の翅にさせて急降下していった。
イザベラは背中の翅の角度を変えて方向転換しながら、身を隠せるほどに大きくなった氷のやり穂先に隠れて、ボーボアの目を見据えていた。
ボーボアは突然空から光を反射する氷の攻撃に戸惑ったが、十五本のやり穂先は直線に飛来すると見切ったようで、素早く頭を大きく横にずらした。
ボーボアは十五本のやり穂先をぎりぎりで交わした、と思う間もなく左眼に激痛を感じた。
イザベラの尾刃剣は、ボーボアの眼球中央につばの根元まで刺さった。
イザベラは尾刃剣を大きく横に振り切り、眉間までをも切り裂いた。
ボーボアは激痛と顔にたかるイザベラを振り払うように大きく首を振った。
イザベラは首の反動を利用して翅をひろげると、ボーボアの左側から口元横に切り込んで、顎を使えないよう攻撃しだした。
イザベラは常にボーボアに目えない左側で飛翔していたが、横合いから尾刃が自分の方へ向かって来るけはいを感じた。
尾刃の線上先は確実に、自分に向かってきていた。
鹿島は尾刃の不規則な動きに手間取っていた。
尾刃は多くの聖騎士隊各集団を個別に攻撃する為か、その動きを予想できなかった。
だが一瞬尾刃の動きが止まり、刃の部分がびくりと動いたのを鹿島は見逃さなかった。
尾刃の向かう先は、イザベラ王女だと見抜いた鹿島は、その線上に飛び上がった。
鹿島の向かった線上に、ピタリと尾刃の根元が向かってきた。
鹿島はとっさに三本の尾刃を同時に切り落とすのは無理だと判断し、二本を切り落とす剣筋を思い描いた。
最初の尾刃からの攻撃をかわし、中央の尾刃根元に向かって上段から切り込んだ。
返す刃で隣の尾刃根元にも切りかかった。
返す刃で隣の尾刃も確実に切り落としたと思ったが、衝撃を受けたボーボアの尾は反射的に横へ逃げた為に、骨は切断していたが表皮部は残っていた。
残った尾刃はだらりと下がった尾刃と共に、飛翔中のイザベラ王女に向かっていった。
『イザベラ!尾刃が来る。避けきれないので力を込めて受け止めろ!』
イザベラは翅を強く速く羽ばたかせながら、青く輝く尾刃剣で迫ってくる尾刃を受け止めた。
イザベラと尾刃は刃を合わせ合い力比べとなったが、イザベラは力比べでは負けると判断したが、逃げるすべを思い描けないでいた。
そんな状況で、だらりと下がっていた尾刃の刃先がイザベラに向かってきた。
「サニー様!」
とイザベラが鳴き声をあげた。
鹿島は、尾刃がだらりと下がった尾刃と共に、イザベラ王女に向かって行くとその後を追った。
鹿島はイザベラが刃を受け止めたのを確信してほっとしたが、だらりと下がった尾刃が空中に持ち上がりイザベラに向かうと、
「瞬間移動!」叫ぶと、空中に持ち上がり飛び出す尾刃に、体当たる様に神剣で尾刃を地面方向に押し付けた。
イザベラは向かって来る尾刃に鹿島の体がぶっつかったのを見て驚いたが、横合いから攻撃してきた尾刃の危険はないと判断した。
そして、合わせ合った尾刃の力が弱まったと感じ、そのまま地面方向に押した。
ボーボアは鹿島の押しに負けて、イザベラ王女との力比べ中の尾刃も共に地面近くまで押し込まれだした。
「王女様!ここは引き受けた!ボーボアの首を頼む!」
と言って黒甲冑の男がイザベラ王女の押さえこんでいる尾刃に、青く輝かせた尾刃剣を合わせてきた。
『イザベラ、行くよ。』
との声で地面に押し付けた尾刃から離れて飛び上がった。
イザベラは翅を強く羽たかせて空中に停止すると、翅を合わせて急降下した。
「蛇の分際で!くそったれ野郎!」
と、言ってボーボアの首を両断して落とした。
イザベラが地面に着地するとすでに、力合わせした尾刃も鹿島によって切り落とされていた。
「手助け、かたじけない。」
と、イザベラはタイガーの手を握った。
「なんの、助けられたのは、我々でした。」
と言ってタイガーは頭を下げた。
「イザベラ殿。私へのお礼は?」
と、鹿島が叫ぶと、サニーが現れて、
「イザベラ!タローにお礼を言う必要は無い!逆に尾刃をこちら側に向かわせただけでなく、切り落とし損ねた責任を謝りなさい。」
と、かなりのご立腹に、イザベラは気負い負けして返答に困った。
「力及ばず、申し訳なかった。」
と、鹿島は素直に頭を下げた。
イザベラは鹿島がボーボアの尾刃に体当たりをした前後を思い出し、受けた恐怖と感動に心音が速くなりだしたのを感じた。
「こちらこそ、もう駄目だと思った時に、助けていただき有り難うございました。」
「だから、その泣き出すぐらい恐怖の原因は、タローだろう。」
「はい、確かに危機に陥らせた責任は、私です。」
「イザベラ。タローはイザベラに借りを作ったわ。還してもらいなさい。」
とサニーまだご立腹中である。
鹿島がサニーにやりこめられて小さくなっていることで、タイガーは苦笑いしながら、
「イザベラ王女様が首を落したボーボアを沼原から出し、草原まで撤収する。各自手分けしてけが人に手を貸して行動しろ!」
と、タイガーが沼中に響き渡る大声で叫ぶと、あちらこちらで声が反復した。
「ホルヘ公爵殿!けが人を街道わきまで運んでください。間もなく介護人が到着します。俺らはボーボアを退治してきます。」
「おお、そうか助かる。みんな聞いたか、自分で沼地を歩けるものは街道そいで待っていろ。歩行困難者に手を貸せる者は、頼む。」
皆の顔が明るくなったことで、鹿島達は再度倒木を義経舟渡しながらその場を後にすると、
「王女様気を付けて、無理をしないで!」
とホルヘ公爵から心配する声が後ろから響いた。
鹿島達は深い沼地に差し掛かると、水面を叩く音と罵声が聞こえてきた。
「隊組を崩すな!」
「一人だけになるな!」
「はぐれるな!」
「尾刃が来るぞ!」
「口の毒液もそろそろ来るぞ!」
「沼の奥に追い込め!」
「とぐろを巻かせるな!」
と、足場の悪さが聖騎士団の連携を拒んでいた。
倒木がなくなった沼地で鹿島の身体はすでに胸下まで水の中に浸かっていたが、イザベラ王女は水面上を歩いていた。
『イザベラ。タローを掴んで飛ぶわよ。』
『合点承知。』
とサニーとイザベラ王女は体の中で会話しだした。
「タロー殿、腕を上げてください!」
イザベラ王女は鹿島の手を握って叫換する方向へ向かった。
「イザベラ!尾の部分上に降ろせ!サニー!頭部は任せた!」
「合点承知!」と、鹿島の耳の中と、頭の中で二人の応えがコダマした。
ボーボアの尾刃の動きは活発で、鹿島の降り立った場所から尾刃の根元を攻撃するには遠かった。
鹿島が尾刃の動きを観察している状態で、サニーとイザベラは飛翔しながら作戦会議中であった。
『イザベラ。ボーボアの目を狙うわよ。』
『方法は?』
『連続氷のやり穂先と同時に、尾刃剣で突っ込む。』
『合点承知の助。』
イザベラは太陽を背にして、青く発動させた尾刃剣を左手に持って右手をかざし、にぎにぎを三度繰り返した。
「氷のやり穂先連発!」
五本の氷のやり穂先は段々と大きくなりながら、三列連続してボーボアの頭部に向かっていった。
イザベラは翅を背中の中央でぴたりと合わせ、一本の翅にさせて急降下していった。
イザベラは背中の翅の角度を変えて方向転換しながら、身を隠せるほどに大きくなった氷のやり穂先に隠れて、ボーボアの目を見据えていた。
ボーボアは突然空から光を反射する氷の攻撃に戸惑ったが、十五本のやり穂先は直線に飛来すると見切ったようで、素早く頭を大きく横にずらした。
ボーボアは十五本のやり穂先をぎりぎりで交わした、と思う間もなく左眼に激痛を感じた。
イザベラの尾刃剣は、ボーボアの眼球中央につばの根元まで刺さった。
イザベラは尾刃剣を大きく横に振り切り、眉間までをも切り裂いた。
ボーボアは激痛と顔にたかるイザベラを振り払うように大きく首を振った。
イザベラは首の反動を利用して翅をひろげると、ボーボアの左側から口元横に切り込んで、顎を使えないよう攻撃しだした。
イザベラは常にボーボアに目えない左側で飛翔していたが、横合いから尾刃が自分の方へ向かって来るけはいを感じた。
尾刃の線上先は確実に、自分に向かってきていた。
鹿島は尾刃の不規則な動きに手間取っていた。
尾刃は多くの聖騎士隊各集団を個別に攻撃する為か、その動きを予想できなかった。
だが一瞬尾刃の動きが止まり、刃の部分がびくりと動いたのを鹿島は見逃さなかった。
尾刃の向かう先は、イザベラ王女だと見抜いた鹿島は、その線上に飛び上がった。
鹿島の向かった線上に、ピタリと尾刃の根元が向かってきた。
鹿島はとっさに三本の尾刃を同時に切り落とすのは無理だと判断し、二本を切り落とす剣筋を思い描いた。
最初の尾刃からの攻撃をかわし、中央の尾刃根元に向かって上段から切り込んだ。
返す刃で隣の尾刃根元にも切りかかった。
返す刃で隣の尾刃も確実に切り落としたと思ったが、衝撃を受けたボーボアの尾は反射的に横へ逃げた為に、骨は切断していたが表皮部は残っていた。
残った尾刃はだらりと下がった尾刃と共に、飛翔中のイザベラ王女に向かっていった。
『イザベラ!尾刃が来る。避けきれないので力を込めて受け止めろ!』
イザベラは翅を強く速く羽ばたかせながら、青く輝く尾刃剣で迫ってくる尾刃を受け止めた。
イザベラと尾刃は刃を合わせ合い力比べとなったが、イザベラは力比べでは負けると判断したが、逃げるすべを思い描けないでいた。
そんな状況で、だらりと下がっていた尾刃の刃先がイザベラに向かってきた。
「サニー様!」
とイザベラが鳴き声をあげた。
鹿島は、尾刃がだらりと下がった尾刃と共に、イザベラ王女に向かって行くとその後を追った。
鹿島はイザベラが刃を受け止めたのを確信してほっとしたが、だらりと下がった尾刃が空中に持ち上がりイザベラに向かうと、
「瞬間移動!」叫ぶと、空中に持ち上がり飛び出す尾刃に、体当たる様に神剣で尾刃を地面方向に押し付けた。
イザベラは向かって来る尾刃に鹿島の体がぶっつかったのを見て驚いたが、横合いから攻撃してきた尾刃の危険はないと判断した。
そして、合わせ合った尾刃の力が弱まったと感じ、そのまま地面方向に押した。
ボーボアは鹿島の押しに負けて、イザベラ王女との力比べ中の尾刃も共に地面近くまで押し込まれだした。
「王女様!ここは引き受けた!ボーボアの首を頼む!」
と言って黒甲冑の男がイザベラ王女の押さえこんでいる尾刃に、青く輝かせた尾刃剣を合わせてきた。
『イザベラ、行くよ。』
との声で地面に押し付けた尾刃から離れて飛び上がった。
イザベラは翅を強く羽たかせて空中に停止すると、翅を合わせて急降下した。
「蛇の分際で!くそったれ野郎!」
と、言ってボーボアの首を両断して落とした。
イザベラが地面に着地するとすでに、力合わせした尾刃も鹿島によって切り落とされていた。
「手助け、かたじけない。」
と、イザベラはタイガーの手を握った。
「なんの、助けられたのは、我々でした。」
と言ってタイガーは頭を下げた。
「イザベラ殿。私へのお礼は?」
と、鹿島が叫ぶと、サニーが現れて、
「イザベラ!タローにお礼を言う必要は無い!逆に尾刃をこちら側に向かわせただけでなく、切り落とし損ねた責任を謝りなさい。」
と、かなりのご立腹に、イザベラは気負い負けして返答に困った。
「力及ばず、申し訳なかった。」
と、鹿島は素直に頭を下げた。
イザベラは鹿島がボーボアの尾刃に体当たりをした前後を思い出し、受けた恐怖と感動に心音が速くなりだしたのを感じた。
「こちらこそ、もう駄目だと思った時に、助けていただき有り難うございました。」
「だから、その泣き出すぐらい恐怖の原因は、タローだろう。」
「はい、確かに危機に陥らせた責任は、私です。」
「イザベラ。タローはイザベラに借りを作ったわ。還してもらいなさい。」
とサニーまだご立腹中である。
鹿島がサニーにやりこめられて小さくなっていることで、タイガーは苦笑いしながら、
「イザベラ王女様が首を落したボーボアを沼原から出し、草原まで撤収する。各自手分けしてけが人に手を貸して行動しろ!」
と、タイガーが沼中に響き渡る大声で叫ぶと、あちらこちらで声が反復した。
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