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国興し
ホルヘ公爵の思案
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馬車が西門に着くと、馬車から降りたホルヘ公爵は人だかりと建物に啞然とした。
建物の後ろには、さらに大きいと思える建物があり、高いとがった屋根には白地に金色鳥居を描いた旗を掲げていた。
「おい!衛士兵長!」
と、ホルヘ公爵は門を警備している衛士兵を呼んだ。
「あ、公爵様も病院へいらしたのですか?だけど公爵様でも列に並ばないと、入れてはいただけませんよ。」
「そうなのか?ではない!この場所に何で建物があるのだ!」
「王子様の許可で、ここから北門まで、チンジュ女神教会の敷地になったのです。奥の方は傭兵隊の鍛錬所になっています。あ、三日ぐらい前に、、、傭兵隊は聖騎士団と名前が付いたようです。」
「こんなところに建物など建てたら、防衛時、兵の集結と移動機能が損なう事は、明らかだろう!それに、北門までのすべてが譲渡されたのであれば、戦時下、兵の移動が困難になるだろう!」
「私に言われましても、、、、。王子様の許可が出たのですから、当然、国王様の許可も、、、出たのではないでしょうか。」
「叔父上様。抗議する相手が違うのでは?」
と馬車から降りるサニーを、手伝う様に手を取っていたイザベラ王女が声がけした。
ホルヘ公爵の身体はわなわなと震えていたが、イザベラ王女の声で冷静さを取り戻した様子で、改めてこぶしを握り締めて息を大きく吸って吐き出ししながら、
「くぞバカ!ノロノア王子め!」
と叫んだ。
「公爵様、、、、、。不敬罪で、、、いいえ!何も聞こえませんでした!」
と言って衛士聖騎士長は門の方へ逃げ去った。
サニー達三人は、人だかりが雑然としている建物に向かうと、虹色に輝く鱗甲冑姿の聖騎士が駆け寄ってきた。
「大精霊様!団長様は鍛錬場にいます。ご案内致します。」
と若い鱗甲冑姿の聖騎士は顔を高揚させ、満面の笑顔でサニーを見つめて踵を返した。
病院との看板がかかった建物入り口扉には、金色の鳥居が描いてあった。
「病院とは、何ぞや?」
とホルヘ公爵がポツリとつぶやくと、
「治療院のことです。」
と、若い鱗甲冑姿の聖騎士は振り向いて自慢顔をした
金色の鳥居が描いてある建物前では、鱗甲冑姿の聖騎士が雑然としている人々を整列させていた。
「病人はこちらから入れ!」
「けが人はこっちに来てくれ!けがの度合いを見せてもらう!」
と叫ぶ二人の位置は一段高い場所であった。
サニー達が病院内の広い通路を歩いていくと、薬瓶を渡している列があり、さらにその先にも多数の列が並んでいた。
「広範囲治療!」
と叫ぶヒカリ王女の声が通路に響いた。
「え~。広範囲治療魔法は、理論上は可能だと聞いていたが、ヒカリちゃんは出来るのだ!」
と言ってサニーは広い講堂室に飛び込んだ。
サニーは歓喜の声でざわめいている人だかりをかき分けて、講堂室のステージ場所にいるヒカリ王女のもとへ走り寄った。
ヒカリ王女の隣テーブルには緑色の回復薬が並んでいた。
「広範囲治療魔法を使える、ヒカリちゃんは凄い!」
「サニー様にいただいた、木の実のスープのおかげです。」
「あ、あ~れ~ね。木の実のスープのことは忘れて。」
「え~。何か理由があるのですか?」
「あの木の実、、、、多用すると依存度が高いらしいの。」
「あの木の実は危険なの?」
「効果抜群だったようなので、再度取り寄せようとしたら、依存度が高いらしいと精霊薬師ババ~から知らせが来たのよ。」
ヒカリ王女は隣テーブルに目をやり、空になった回復薬瓶を数えだすと、
「五本か。今日はここまでにしようかな。」
と言って、ステージを降りてイザベラ王女のそばに行った。
「従兄弟殿、二人っきりでお話がしたいです。時間を作ってください。」
とヒカリ王女はイザベラ王女にささやいた。
サニーたちは合流したヒカリ王女と共に教会に入っていくと、全開に開いた扉の奥には、神社を模写した破風板付きの、そり上がり切り妻造り屋根の正殿が設置してあった。
正殿には丁寧に向拝階段もついていて、その前にはお賽銭箱が置いてあった。
正殿脇では、シンデレラの護衛五人がお参りの仕方を教えていた。
サニーとヒカリ王女にイザベラ王女は駆け出していき、シンデレラの護衛からお参り方法を聞いていた。
お賽銭箱上の天井には金色の鈴を下げていて、大きな縄が垂れていた。
お賽銭箱の前では、
「サニー様、今金貨を投げたよね。」
「銅貨幣でいいと言っていたよ。」
「銅貨も銀貨も持っていないから、仕方がないわ。」
と言って鈴を鳴らし、二礼二拍手一礼を始めた。
ホルヘ公爵も見様見まねで参拝しだした。
「叔父上様も、チンジュ女神教信者になったの?」
「必要なことは、すべてやる。」
と、問いに応えることなく、ぶっきらぼうに答えるだけであった。
「願いが叶うかな?」
とヒカリ王女はつぶやくと、全員が注目した。
「何の願いをしたの?」
とイザベラ王女が問うと、
「人に話してはいけないのでしょう。話すと願いが消えてしまうわ。」
と満面笑顔だけを返した。
若い鱗甲冑姿の聖騎士の案内で、サニー達は鹿島とタイガー達のいる鍛錬場に着いた。
鹿島は十人の鱗甲冑聖騎士の槍を相手に、木刀で次々と容赦ない打撃を与えていた。
タイガーは次の相手であろう十人に、手ぶり素振りで指示をしていた。
「つぎ!」と鹿島が叫ぶと、
手ぶり素振りで指示を受けていた鱗甲冑聖騎士達は、槍を構えて鹿島を取り囲んだ。
前後左右方四本の槍穂先が鹿島に襲い掛かってきた。
鹿島は四本の槍穂先を払いのけようと順次叩き合わせようとしたが、木刀は空を切っただけであった。
前後左右方四本の槍穂先は囮であった様子で、叩き合わせ寸前に素早く引き寄せたようである。
鹿島は木刀が空を切ったことで若干体制を崩した。
残りの六人は鍛錬高い聖騎士だったらしく、鹿島の体制が崩れたのを見逃さなかった。
聖騎士達と鹿島の声で、防護壁から反射した声がこだまとなった。
コダマを追うように六本の槍は空中に飛んでいき、最初に突き出た四本の槍は再度鹿島に向かったが、鹿島の足元の地面を刺していた。
六人の聖騎士は、攻撃を弾く力の鱗甲冑腕部分に痛みを感じている様子で腕を抑えていた。
地面を刺している四人も肩に衝撃を受けていた。
「何で?鱗甲冑の弾く力が機能しないのだ!」
と、腕を抑えている男が叫んだ。
「鱗甲冑の弾く力以上で攻撃すれば、例え鱗甲冑であってもただの鎧だ。」
と、鹿島は微笑んだ。
「鱗甲冑は最強ではないと?」
「最強者が出たら、次はもっと強い奴が現れる。鱗甲冑を着けているだけで不死身にはなれない。」
と、鹿島が諭すと、
「わかっただろう。鱗甲冑を身に着けただけでは、最強軍とはならない。鍛錬を行ってこそわれらは最強だ!」
とタイガーが叫ぶと、鍛錬中の聖騎士達から怒涛の声が響いた。
「何なのだ!この兵士たちは!いつの間に、、、塀の中に知らない軍隊がいるのだ?」
と、ホルヘ公爵はまたもや怒り出した。
「これが聖騎士団?」
とイザベラ王女が異様な数の聖騎士を見て驚いたのは、小規模聖騎士団を想像していたからであった。
ホルヘ公爵は軍用敷地の買収と、鍛錬中の聖騎士兵を維持するのには、とてつもない額の金が必要だろうと思え、その目的を、鹿島に問いたださなければならないと感じた。
「鎮守聖王陛下に尋ねたい、疑問点があります。」
「あれ~。俺の身分、もうばれたの?」
「私は愚か者ではありません。この元軍用敷地を買収し、ここで多くの聖騎士兵を養う理由を知りたい。」
「全てはチンジュ女神様の御意志だと答えたいが、これまでに行ってきた備えとこれからの行動は、ヒカリ王女をチンジュ女神様は家族と思っているので、ヒカリ王女を守るための備えです。」
「ヒカリ王女様を守るために、我等が国を戦乱に巻き込むと?」
「逆じゃないかな。この国で戦乱が起きると、ヒカリちゃんが取り乱して悲しむから。それを防ぐために、私達はチンジュ様に派遣されたと思うわ。」
と、横からサニーが口を開いた。
「王座に就いたアクコー兄は、必ずこの国に攻め込んでくると私も思うわ。チンジュ女神様が友好条約を結ぶ理由は、アクコー王子の反乱を見越していたのね。」
とヒカリ王女はアクコーに憤慨しだした。
ホルヘ公爵は姉であるヒカリ王女の母親の言葉を想い出していた。
「娘には、ビクトリー王国にとって、不利益になる行動は取るなと教えています。ですから、もし娘が頼って来たら力になってください。」
との遺言と思える言葉をかみしめていた。
「鎮守聖国のためでなく、ヒカリ王女様の為にだけのことで、かなりの大金を使ったと?」
「ですから、ヒカリ王女を守るだけなら、鎮守聖国内にいるだけで安全だし、ゴールドル領地への援助や、ビクトリー王国を陰から支えるのは、全てヒカリ王女のためだけのことだ。」
「チンジュ女神教聖騎士団が、われらの国に牙をむくことはないと?」
「そんなことをヒカリ王女が望むと、ありえないことだ。ビクトリー王国が手出ししない限り、絶対にありえない。断言しよう。」
「私は、チンジュ女神教聖騎士団と、ビクトリー王国がにらみ合うなど、まっぴらだわ。」
「私もヒカリちゃんとイザベラが好きだし、二人が悲しむのは嫌だわ。」
とサニーはヒカリ王女とイザベラ王女に微笑んだ。
ホルヘ公爵は、ヒカリ王女が鎮守聖国に於いて、どの様な出来事が原因で家族と名指したのかを調べる必要があると判断し、そこにイザベラ王女をも押し込めるのではと再度判断した訳は、二人の王女が大精霊猊下様と友好な関係と確認していたからであった。
そして、イザベラ王女が、チンジュ女神教と一心同体である鎮守聖国での立場がどの様になるか判明するまで、軍用敷地の買収責任追及をやめ、チンジュ女神教聖騎士団の存在を隠し通すと決断した。
鹿島はイザベラ王女相手に木刀を打ち合わせていた。
鹿島は、周りで鍛錬中の聖騎士団が騒がしくなりだしたことに気が付くと、
「何があった?」
と走り回っている聖騎士に尋ねた。
「警備を残して、全員完全武装での招集です。」
タイガーが鹿島に駆け寄ってきて、
「沼地街道にボーボアが出たらしい。われら騎士団は討伐に向かいます。」
と、報告し終えるとタイガーは駆け出していった。
建物の後ろには、さらに大きいと思える建物があり、高いとがった屋根には白地に金色鳥居を描いた旗を掲げていた。
「おい!衛士兵長!」
と、ホルヘ公爵は門を警備している衛士兵を呼んだ。
「あ、公爵様も病院へいらしたのですか?だけど公爵様でも列に並ばないと、入れてはいただけませんよ。」
「そうなのか?ではない!この場所に何で建物があるのだ!」
「王子様の許可で、ここから北門まで、チンジュ女神教会の敷地になったのです。奥の方は傭兵隊の鍛錬所になっています。あ、三日ぐらい前に、、、傭兵隊は聖騎士団と名前が付いたようです。」
「こんなところに建物など建てたら、防衛時、兵の集結と移動機能が損なう事は、明らかだろう!それに、北門までのすべてが譲渡されたのであれば、戦時下、兵の移動が困難になるだろう!」
「私に言われましても、、、、。王子様の許可が出たのですから、当然、国王様の許可も、、、出たのではないでしょうか。」
「叔父上様。抗議する相手が違うのでは?」
と馬車から降りるサニーを、手伝う様に手を取っていたイザベラ王女が声がけした。
ホルヘ公爵の身体はわなわなと震えていたが、イザベラ王女の声で冷静さを取り戻した様子で、改めてこぶしを握り締めて息を大きく吸って吐き出ししながら、
「くぞバカ!ノロノア王子め!」
と叫んだ。
「公爵様、、、、、。不敬罪で、、、いいえ!何も聞こえませんでした!」
と言って衛士聖騎士長は門の方へ逃げ去った。
サニー達三人は、人だかりが雑然としている建物に向かうと、虹色に輝く鱗甲冑姿の聖騎士が駆け寄ってきた。
「大精霊様!団長様は鍛錬場にいます。ご案内致します。」
と若い鱗甲冑姿の聖騎士は顔を高揚させ、満面の笑顔でサニーを見つめて踵を返した。
病院との看板がかかった建物入り口扉には、金色の鳥居が描いてあった。
「病院とは、何ぞや?」
とホルヘ公爵がポツリとつぶやくと、
「治療院のことです。」
と、若い鱗甲冑姿の聖騎士は振り向いて自慢顔をした
金色の鳥居が描いてある建物前では、鱗甲冑姿の聖騎士が雑然としている人々を整列させていた。
「病人はこちらから入れ!」
「けが人はこっちに来てくれ!けがの度合いを見せてもらう!」
と叫ぶ二人の位置は一段高い場所であった。
サニー達が病院内の広い通路を歩いていくと、薬瓶を渡している列があり、さらにその先にも多数の列が並んでいた。
「広範囲治療!」
と叫ぶヒカリ王女の声が通路に響いた。
「え~。広範囲治療魔法は、理論上は可能だと聞いていたが、ヒカリちゃんは出来るのだ!」
と言ってサニーは広い講堂室に飛び込んだ。
サニーは歓喜の声でざわめいている人だかりをかき分けて、講堂室のステージ場所にいるヒカリ王女のもとへ走り寄った。
ヒカリ王女の隣テーブルには緑色の回復薬が並んでいた。
「広範囲治療魔法を使える、ヒカリちゃんは凄い!」
「サニー様にいただいた、木の実のスープのおかげです。」
「あ、あ~れ~ね。木の実のスープのことは忘れて。」
「え~。何か理由があるのですか?」
「あの木の実、、、、多用すると依存度が高いらしいの。」
「あの木の実は危険なの?」
「効果抜群だったようなので、再度取り寄せようとしたら、依存度が高いらしいと精霊薬師ババ~から知らせが来たのよ。」
ヒカリ王女は隣テーブルに目をやり、空になった回復薬瓶を数えだすと、
「五本か。今日はここまでにしようかな。」
と言って、ステージを降りてイザベラ王女のそばに行った。
「従兄弟殿、二人っきりでお話がしたいです。時間を作ってください。」
とヒカリ王女はイザベラ王女にささやいた。
サニーたちは合流したヒカリ王女と共に教会に入っていくと、全開に開いた扉の奥には、神社を模写した破風板付きの、そり上がり切り妻造り屋根の正殿が設置してあった。
正殿には丁寧に向拝階段もついていて、その前にはお賽銭箱が置いてあった。
正殿脇では、シンデレラの護衛五人がお参りの仕方を教えていた。
サニーとヒカリ王女にイザベラ王女は駆け出していき、シンデレラの護衛からお参り方法を聞いていた。
お賽銭箱上の天井には金色の鈴を下げていて、大きな縄が垂れていた。
お賽銭箱の前では、
「サニー様、今金貨を投げたよね。」
「銅貨幣でいいと言っていたよ。」
「銅貨も銀貨も持っていないから、仕方がないわ。」
と言って鈴を鳴らし、二礼二拍手一礼を始めた。
ホルヘ公爵も見様見まねで参拝しだした。
「叔父上様も、チンジュ女神教信者になったの?」
「必要なことは、すべてやる。」
と、問いに応えることなく、ぶっきらぼうに答えるだけであった。
「願いが叶うかな?」
とヒカリ王女はつぶやくと、全員が注目した。
「何の願いをしたの?」
とイザベラ王女が問うと、
「人に話してはいけないのでしょう。話すと願いが消えてしまうわ。」
と満面笑顔だけを返した。
若い鱗甲冑姿の聖騎士の案内で、サニー達は鹿島とタイガー達のいる鍛錬場に着いた。
鹿島は十人の鱗甲冑聖騎士の槍を相手に、木刀で次々と容赦ない打撃を与えていた。
タイガーは次の相手であろう十人に、手ぶり素振りで指示をしていた。
「つぎ!」と鹿島が叫ぶと、
手ぶり素振りで指示を受けていた鱗甲冑聖騎士達は、槍を構えて鹿島を取り囲んだ。
前後左右方四本の槍穂先が鹿島に襲い掛かってきた。
鹿島は四本の槍穂先を払いのけようと順次叩き合わせようとしたが、木刀は空を切っただけであった。
前後左右方四本の槍穂先は囮であった様子で、叩き合わせ寸前に素早く引き寄せたようである。
鹿島は木刀が空を切ったことで若干体制を崩した。
残りの六人は鍛錬高い聖騎士だったらしく、鹿島の体制が崩れたのを見逃さなかった。
聖騎士達と鹿島の声で、防護壁から反射した声がこだまとなった。
コダマを追うように六本の槍は空中に飛んでいき、最初に突き出た四本の槍は再度鹿島に向かったが、鹿島の足元の地面を刺していた。
六人の聖騎士は、攻撃を弾く力の鱗甲冑腕部分に痛みを感じている様子で腕を抑えていた。
地面を刺している四人も肩に衝撃を受けていた。
「何で?鱗甲冑の弾く力が機能しないのだ!」
と、腕を抑えている男が叫んだ。
「鱗甲冑の弾く力以上で攻撃すれば、例え鱗甲冑であってもただの鎧だ。」
と、鹿島は微笑んだ。
「鱗甲冑は最強ではないと?」
「最強者が出たら、次はもっと強い奴が現れる。鱗甲冑を着けているだけで不死身にはなれない。」
と、鹿島が諭すと、
「わかっただろう。鱗甲冑を身に着けただけでは、最強軍とはならない。鍛錬を行ってこそわれらは最強だ!」
とタイガーが叫ぶと、鍛錬中の聖騎士達から怒涛の声が響いた。
「何なのだ!この兵士たちは!いつの間に、、、塀の中に知らない軍隊がいるのだ?」
と、ホルヘ公爵はまたもや怒り出した。
「これが聖騎士団?」
とイザベラ王女が異様な数の聖騎士を見て驚いたのは、小規模聖騎士団を想像していたからであった。
ホルヘ公爵は軍用敷地の買収と、鍛錬中の聖騎士兵を維持するのには、とてつもない額の金が必要だろうと思え、その目的を、鹿島に問いたださなければならないと感じた。
「鎮守聖王陛下に尋ねたい、疑問点があります。」
「あれ~。俺の身分、もうばれたの?」
「私は愚か者ではありません。この元軍用敷地を買収し、ここで多くの聖騎士兵を養う理由を知りたい。」
「全てはチンジュ女神様の御意志だと答えたいが、これまでに行ってきた備えとこれからの行動は、ヒカリ王女をチンジュ女神様は家族と思っているので、ヒカリ王女を守るための備えです。」
「ヒカリ王女様を守るために、我等が国を戦乱に巻き込むと?」
「逆じゃないかな。この国で戦乱が起きると、ヒカリちゃんが取り乱して悲しむから。それを防ぐために、私達はチンジュ様に派遣されたと思うわ。」
と、横からサニーが口を開いた。
「王座に就いたアクコー兄は、必ずこの国に攻め込んでくると私も思うわ。チンジュ女神様が友好条約を結ぶ理由は、アクコー王子の反乱を見越していたのね。」
とヒカリ王女はアクコーに憤慨しだした。
ホルヘ公爵は姉であるヒカリ王女の母親の言葉を想い出していた。
「娘には、ビクトリー王国にとって、不利益になる行動は取るなと教えています。ですから、もし娘が頼って来たら力になってください。」
との遺言と思える言葉をかみしめていた。
「鎮守聖国のためでなく、ヒカリ王女様の為にだけのことで、かなりの大金を使ったと?」
「ですから、ヒカリ王女を守るだけなら、鎮守聖国内にいるだけで安全だし、ゴールドル領地への援助や、ビクトリー王国を陰から支えるのは、全てヒカリ王女のためだけのことだ。」
「チンジュ女神教聖騎士団が、われらの国に牙をむくことはないと?」
「そんなことをヒカリ王女が望むと、ありえないことだ。ビクトリー王国が手出ししない限り、絶対にありえない。断言しよう。」
「私は、チンジュ女神教聖騎士団と、ビクトリー王国がにらみ合うなど、まっぴらだわ。」
「私もヒカリちゃんとイザベラが好きだし、二人が悲しむのは嫌だわ。」
とサニーはヒカリ王女とイザベラ王女に微笑んだ。
ホルヘ公爵は、ヒカリ王女が鎮守聖国に於いて、どの様な出来事が原因で家族と名指したのかを調べる必要があると判断し、そこにイザベラ王女をも押し込めるのではと再度判断した訳は、二人の王女が大精霊猊下様と友好な関係と確認していたからであった。
そして、イザベラ王女が、チンジュ女神教と一心同体である鎮守聖国での立場がどの様になるか判明するまで、軍用敷地の買収責任追及をやめ、チンジュ女神教聖騎士団の存在を隠し通すと決断した。
鹿島はイザベラ王女相手に木刀を打ち合わせていた。
鹿島は、周りで鍛錬中の聖騎士団が騒がしくなりだしたことに気が付くと、
「何があった?」
と走り回っている聖騎士に尋ねた。
「警備を残して、全員完全武装での招集です。」
タイガーが鹿島に駆け寄ってきて、
「沼地街道にボーボアが出たらしい。われら騎士団は討伐に向かいます。」
と、報告し終えるとタイガーは駆け出していった。
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