非上場化で伊藤忠がセブン&アイとファミマ両者の株主に浮上か…想定デメリット

 ただ、株主にとっては逆です。もともと買収騒動が起きる前のセブン&アイHDの時価総額は4兆6000億円で停滞していました。それが2者からの買収提案が起きたことで6兆3000億円まで企業価値が上昇しています。買収実現なら最終的に7兆円を超えるでしょうから、株主は何らかの買収決着を望むはずです」

 一方、ACTによる買収を回避して株式非公開化を選択した場合のセブン&アイHDのメリットは何か。

「仮にMBOが成立した場合は、創業家や現在の経営陣とは立場が異なる新たな株主が経営に加わるでしょう。これは資金調達が巨額になるため、事業会社かファンドが加わらないと買収資金が集まらないと予想されるからです。現在の創業家の提案をベースに考えると、伊藤忠がその新たな株主になる可能性があります。その場合、伊藤忠はファミマの大株主なので、現在の経営陣とは方向性が対立することになるかもしれません。結果として、新たな経営の不協和音といったデメリットが生じるリスクは考えておかなければならないでしょう」

上場を維持するメリットは大きいといえるのか

 ここ数年、高い上場維持コスト負担や他社による買収リスク、株主の意向を受けての経営的自由度の低下などを回避する目的で株式を非公開化する企業が増加傾向にある。2024年は、上場企業の数が2013年の取引所統合以来初めて前年比で減少に転じる可能性も出ている。たとえばソフトバンクグループ会長の孫正義氏がしばしば公の場で上場維持に疑問を感じる旨の発言をするように、デメリットの大きさも認識されるようになりつつある。今、上場を維持するメリットは大きいといえるのか。

「上場の最大のメリットは、資金調達力が格段に増すことです。市場から資本を吸い上げてM&Aによって企業規模を大きくしていく戦略をとることができます。ただしデメリットとして、株式が流動化するので、こちらが逆に買収されるリスクも生じるし、望まない株主たちから経営に口を出されることにもなります。

 非上場化に魅力を感じる経営者が多いのは事実ですが、大企業をさらに成長させていくことを目指すのであれば、上場のメリットのほうが大きいと考えられます」

(文=Business Journal編集部、協力=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)