今回、事故に遭って全損となったバイクは、本田技研工業(ホンダ)がかつて製造・販売していた「CBX1000」とのことで、車体やカスタム費用等を合わせて100万円と超えるという。だが、いくら人気があるとはいえ、古い車体のため、損害額でもめることが多いという。
「バイクはファンの間ではプレミアが付いて高額で取引されますが、減価償却で計算されると0円になったりすんですよね。なんとか、市場価格で賠償してもらえるように弁護士を立てて交渉するしかないですね」
この保険会社について、ある特定の会社ではないかと推測する向きが少なくないが、なぜそのような声が上がるのか。
「今回の事故担当の保険会社がどこか、今のところは明らかになっていないので、むやみに邪推するべきではないと思います。ただ、業界内では某社について、“支払いが渋い”というのは知られており、それがネット上の憶測につながっているのでしょう。
実際に私も某社との保険交渉を何度も行っていますが、毎回、過失割合でもめます。とんでもない理屈を持ち出し、自分の顧客側の過失を低くしようとしてくるので、交渉が長引くんです。毎回、『自分の顧客が被害者側だったとしたら、その理屈と過失割合で納得できるのか』と文句を言いたくなるくらいです」
弁護士の見解は、止まっているクルマに追突といったケースでない限り、「10対0」は難しいというものだったが、保険会社側の見解としてはどうか。
「必ずしも止まっていなくても、『10対0』になることはあります。動いていた場合でも、急ブレーキをかけたなど無理な運転をしていない限り、追突は『10対0』となるケースが珍しくありません。ただ、横からぶつかって横転とかであれば、『10対0』にはなりにくいかなと思います。いずれにしても、どのような状況で事故に遭ったかをドライブレコーダーなどの動画で録画していれば、確認がとれるので、今の時代は必須ですね。仮に全方向でなくて前だけを録画するタイプのレコーダーでも、追突された際の状況はわかるので、必ずしも相手車両が映っていなくても証拠になります」
今回の事故の被害者が、仮に一定程度の過失があるとされた場合、どのような対処をすることがよいだろうか。
「まずは自分が加入している保険会社にも確認することが重要です。仮に『9対1』になったとして、その1割の損害をまかなうために保険を使うのか、という点で十分な検討が必要です。保険を使えば、その際には自身の出費は抑えられますが、保険の等級が上がってしまい、翌年以降の保険料が高くなります。しかし、一部の損害保険会社の商品では、その保険会社の鑑定で『10対0』と判断されれば、車両保険などの保険金を使っても、翌年以降の等級が上がらないという特約が付いているケースもあります」
今回の事故の被害者は、事故に遭った苦しみとともに、その後の保険会社の対応にも悩まされるという“ダブルの被害”に遭っている。保険会社には保険金の出し渋りではなく、被害者の心身ケアにも心を割いてほしいものである。
(文=Business Journal編集部)