バンダイナムコHD、「200人を追い出し部屋・100人が退職」報道を否定

バンダイナムコ
バンダイナムコHD公式サイトより

 バンダイナムコホールディングス(HD)で、衝撃の人員削減を行っているとの報道がある。その内容は、約200人が“追い出し部屋”に配置され、すでに100人近くが退社したというもの。一方で、この報道に疑問を呈する向きも少なくなく、同社も報道内容を否定している。

 バンダイナムコHDは、日本屈指のアミューズメント企業集団であるバンダイナムコグループを統括する存在で、総従業員数は1万人を超える。玩具などを取り扱うバンダイ、キャラクター版権を扱うバンプレスト、ゲームソフト開発などを行うバンダイナムコエンターテインメント、テーマパークやアミューズメント施設を展開するバンダイナムコアミューズメントなど、さまざまなアミューズメント産業を手掛けている。

 一部メディアの報道によると、バンダイナムコHDの子会社で約1300人の従業員を擁するバンダイナムコスタジオが、4月に3つのスタジオに専用の部屋を設置し、そこにこれまで約200人が配置され、すでに100人近くが退社したという。

 これは、コロナ禍の在宅時間が長くなった期間に業績を大きく伸ばしたゲーム業界が、感染収束に伴って低迷を続けており、同社もゲーム開発のプロジェクトが中止になるなど、規模縮小を余儀なくされているためだ。2月には、2023年4-12月累計で210億円の評価損や処分損を計上したと発表している。

 バンダイナムコのビデオゲーム開発部門であるバンダイナムコスタジオは、Nintendo Switch向けの『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』や「ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT」、『New ポケモンスナップ』などを開発。さらに『ELDEN RING』や『鉄拳8』、『ドラゴンボール Sparking! ZERO』など、爆発的人気を誇るゲームも販売しているが、スマートフォン向けの「テイルズ オブ ザ レイズ」や大型予算を投じたオンラインゲーム「ブループロトコル」のサービス終了を予定するなど、業績の見通しは明るくない。さらに複数の稼働中スマホゲームや開発中の未発表タイトルについても、中止または開発中断が決まっているという。

犯人探しが行われている、など告発が続々

 この記事は、9月に立ち上げられた匿名のウェブサイトで追い出し部屋の存在が告発されたとしている。そのサイトでは、「フルリモート業務から、移行期間を設けずに出社を強制された」「サービス終了するタイトルが続出し、待機人員が多発している」「非正規雇用スタッフを次々に雇止めしている」「正社員を“待機部屋”に配置し、長期間仕事を与えない」といった告発が相次いでいる。

 Business Journal編集部はバンダイナムコHDの広報部に、この記事に書かれている“追い出し部屋”が存在するのか、「約200人が配置され、100人近くが退社」した部署は存在するのか、また、表立って人員整理せずとも、仕事を与えないなど、暗に退職を迫るような対応はしていないのかなどについて問い合わせをしたが、「記事に記載されている内容につきましては事実ではないと認識しております」との回答のみだった。

 そこで、現在は他社でゲーム開発を行っている、元バンダイナムコスタジオ社員に話を聞いた。

「追い出し部屋の存在は、眉唾ものの噂話のように思えます。ただ、待機期間が長くなっている社員が増えているという報道はあり得るでしょう。実際にゲーム業界全体で、サービス終了や開発中止となっているタイトルは多くなっています。また、業務委託の契約を終了されたというフリーランスの方や、契約社員で雇止めされた方の話は業界で話題になっているので、『100人近くが退社』という報道は、そういった方も含まれているのではないでしょうか」

 ちなみに、前出の「匿名のウェブサイト」では、その後も「退職が決まった社員の転職活動を邪魔している」「追い出し部屋をリークした“犯人探し”が行われている」といった告発が相次いでいる。その真偽のほどは確かではないが、バンダイナムコグループが揺れていることは間違いない。

(文=Business Journal編集部)