ChatGPTなどAI(人工知能)の普及により人がプログラミングする機会が減るため、プログラマーが大量に失職するという説は以前からいわれているが、現実的にそのような事態が生じる可能性は高いのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
現在、国内では2000年頃に構築されたシステムが老朽化して一斉に更新の時期を迎える「2025年の崖」問題もあり、IT業界ではエンジニア不足が進むといわれている。また、AIやデータサイエンスといった高度なITスキルを持つ人材への需要の高まりを受けて、企業間で人材の争奪戦が起き、給与が上昇するという事態も進行している。三菱UFJ銀行は高度なIT知識を持つ大学新卒に対しては年給与1000万円となる可能性もある給与体系をすでに導入済みで、サイバーエージェントは23年春の新卒入社の初任給を42万円に引き上げ。GMOインターネットグループは23年春入社から一部の専門人材について初任給を年収710万円(月額換算で約59万円)に引き上げている。
中堅IT企業でも賃金引き上げ競争が起きており、レバレジーズは昨年9月、25年卒の新卒採用より初任給をこれまでの28万円から35万円へ25%も引き上げると発表。固定賞与と業績連動賞与を合わせた初年度年収は500万円を超える。クラウドサービスを手掛けるドリーム・アーツは今年4月入社の新入社員の初任給をこれまでより44%引き上げ月収36万円、年収504万円とした。
そんな需要が旺盛なITエンジニアだが、なかでもプログラマーは「AIに仕事を奪われる職種」の一つともいわれている。たとえば米マイクロソフトの子会社GitHub(ギットハブ)は、OpenAIのGPTを使用してプログラミングにまつわる各種作業を支援する「GitHub Copilot」の一般提供を開始。ユーザが記述したコメントの内容などから最適なコードをAIが提案してくれる。 米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)も22年6月、AI により生成されたコードを提案・自動挿入できるツール「Amazon CodeWhisperer」を発表。米グーグルも23年5月、プログラムのソースコードを生成するAIとして「Codey」「Duet AI for Google Cloud」を発表。
このように世界では、AIがプログラミングそのものを行う、もしくはユーザのプログラミングを支援して大幅に業務の効率化を向上させる技術の開発が進んでいる。こうした動きは、将来的に必要となるプログラマーの絶対数の減少につながり、多くのプログラマーが仕事を奪われるという流れになっていくのか。
たとえば8月22日付「Business Insider」記事によれば、AWSのマット・ガーマンCEOは6月、社内向けに「エンジニアのコーディング作業は間もなく不要になる」と発言していたという。
データアナリストで鶴見教育工学研究所の田中健太氏はいう。
「他の人が作成した要件定義や設計の内容に従って、単純にコードを書くだけのプログラマーというのは、AIに置き換えられて減っていくかもしれません。一方で、企業におけるデジタル化の動きは今後も強まっていくので、ITエンジニア全体へのニーズは高まっていきます。ですので、企業がやりたいことをどのようにシステムとして実現するのか、新技術をどのように具体的な業務に落とし込んで効率改善を実現していくのかを検討・企画して実装できる、付加価値の高いスキルや問題解決能力を身につける必要があります」