今回、任天堂が法的手段に踏み込んだことには驚きの声もある。
「確かに『パルワールド』のキャラクターは『ポケモン』にそれに近い部分があるのは確かですが、この程度似ていることはゲームの世界ではよくある。特に『ポケモン』のような人気タイトルは、似たようなキャラクターのタイトルが数多くつくられる傾向があり、いちいち法的手段を取ったりはしないケースが大半で、よほど酷いケース以外は見過ごすというのが業界的な慣習になっている。なので今回も任天堂は提訴まではしないだろうという見方が強かった。『パルワールド』がソニーとJV(共同企業体)をつくってまで海外でIPビジネスをやっていくという動きを見せなければ、ここまで強硬な手段を取ることはなかったのではないか」(ゲーム業界関係者)
今回、任天堂は提訴の理由として、ポケットペアによる著作権侵害ではなく特許権侵害を主張しているが、山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。
「知的財産関係の訴訟に長けた弁護士(私は序の口程度です)の間でも、知的財産の中でも『著作権』侵害訴訟はやりにくいという考えがあります。なぜなら、著作権侵害は、ある人間が創作した表現に、どこまで似てるかどうかによるので、正直なところ、“何となく”のから離れられないからです。この“何となく”うちのキャラクターに似てる、“何となく”背景の絵が似てる、だけで数億円かけたゲームが判断されるのには、リスクが大きすぎます。
これに対し、『特許権』の場合、全て『文字』と『図』でその権利の範囲がわかりやすく特定されているので、パクったのかどうか、しっかりと裁判所に判断してもらえるのです。任天堂やポケモン社がどのような特許権を持ってるのか知りませんが、モンスターとのエンカウント関係、戦闘シーンに移る際のシームレス効果など、何かプログラム上の特許があるのでしょう」
任天堂は「侵害行為の差止及び損害賠償を求める」としているが、「パルワールド」が配信停止になる可能性はあるのか。また、損害賠償額はどれくらいになると考えられるのか。
「任天堂の知的財産の部隊はホントすごいので、確実にパラワールドの配信停止(侵害行為の差し止め)を狙ってるのでしょう。おそらくその通りの判断がされると考えます。また、特許法は、損害の立証について、権利者にものすごく優しい規定を設けており、裁判ではパラワールドが『儲けた』ことを示す資料を強制的に提出させることができ、さらにこの儲けた額そのものを損害金として認定してもらうことができます。
おそらく、ここに至るまで任天堂は徹底的にパラワールドのゲームを解析しているので、知的財産訴訟レベル3の私にも、裁判が始まった時点で任天堂の勝ちが見えてます。おそらく十数億円の損害金が認められるでしょう」
(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)