アマゾンの動きを受け、週5日出社の義務化は他の米IT企業でも広がっていくのか。前出・小久保氏はいう。
「米国のスタートアップなどではリモート勤務が多いようです。また、米国の大手IT企業としては、たとえばグーグルやメタは週3日出社の形態をとっていますが、アマゾンは他の大手ITとは異なり、物流施設など従業員の出社が必要な部門を数多く抱えており、その意味で現時点では他社とは一線を画す動きとなっています。また、アマゾンの経営陣は従業員によるストや労働争議が多いことに苦慮していますが、現場勤務が必須である倉庫従業員が週数日の出社だけでよいオフィス従業員に不公平感を抱かないようするという目的もあるかもしれません」
一方、国内では在宅勤務から出社勤務に戻す動きが広まりつつあるという。大手IT企業の人事部門管理職は言う。
「在宅勤務を継続してほしいという声がある一方、出社勤務のメリットを改めて認識して『出社したい』『メンバーを出社させたい』という声が強まっているのも事実です。やはり同じチームや部署のメンバーがオフィスにいて、すぐに対面で話し合えるというのは、業務効率的に非常にメリットが大きい。どうしても自宅だとだらけてしまったり仕事をする気が起きないので、出社したほうが気持ち的にメリハリが生じて仕事がはかどるという人も少なくない。また、在宅勤務ばかりだと仕事をサボる社員も一定数存在するので、管理職としては部下たちが出社してくれたほうが安心という面もあるだろう」
米アマゾン・ドット・コムは23年までに約2万7000人の削減を行い、今年に入って以降も会員向け動画配信サービス「Amazon Prime Video(アマゾン・プライム・ビデオ)」や映画・配信番組の製作スタジオで数百人、ゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」で500人強、薬局部門「Amazon Pharmacy」とヘルスケア部門「One Medical」で数百人を解雇した。
アマゾンのみならず、人員解雇の波は米国IT企業全体で広がっている。2022年以降、フェイスブックを保有するメタは1万1000人以上、マイクロソフトは約1万人、ネットフリックスは約450人を削減すると発表。X(旧Twitter)は22年10月にイーロン・マスク氏による買収後、解雇された人も含め全社員の約8割にあたる6000人以上が退職したとされる。
(文=Business Journal編集部、協力=小久保重信/ニューズフロントLLPパートナー)