斜陽産業といわれたカメラ・写真関連用品業界にあり、かつては経営危機に落ち込んだ「カメラのキタムラ」がV字回復を果たし、その後も安定した業績を残している。キタムラはなぜ復活できたのか。また、今後の展望はどうなのか。
カメラのキタムラは、1934年に高知県高知市で創業したキタムラ写真機店を祖とし、1943年に法人化、1970年4月に株式会社キタムラとなった。2004年にJASDAQに上場し、翌05年には東証2部上場を果たした。
キタムラが運営する店舗のブランドが「カメラのキタムラ」で、店舗ではカメラ及び関連商品の販売、そしてフィルムの現像・焼き付け(DPE)・デジタルカメラからのプリントサービスとなっている。カメラを祖業とするビックカメラやヨドバシカメラが総合家電量販店となった一方で、キタムラはカメラ・写真に特化し続けたところが特徴といえる。
だが、スマートフォンの普及でカメラの売れ行きが低迷しはじめたほか、プリンターの高性能化や価格下落を受けてデジタルカメラ等で撮影した写真も自宅でプリントする人が増えたことなどもあり、プリント業界も市場は急速に縮小した。
そして2017年、上場以来初の最終赤字に転落し、カメラのキタムラは全店舗の約1割にあたる129店舗の閉鎖を発表。翌年、キタムラはカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の子会社となり、上場廃止となった。
業界自体も斜陽といわれ、キタムラの復活は厳しいようにみられていた。だが、そこから奇跡のV字回復。売上高こそ頭打ち傾向にあるものの、営業利益や経常利益、当期純利益は増え続けている。バランスシート上でも、総資産は右肩下がりだが、負債も着実に減らしており、利益剰余金は大幅に増加し、純資産比率も急上昇している。カギを握っているのは、カメラやスマホのリユース事業だ。さまざまなリユース、リサイクルショップがあるなか、専門性の高さを売りに、買い取りや販売において優位性を確保している。
上場廃止から5年、ホールディングス化したキタムラは2023年3月にプライム市場へ上場。表向きは新規上場だが、業界では「キタムラが再上場」と話題になった。さらに今年4月、株式会社カメラのキタムラを設立し、店舗運営機能を分社化した。つまり、カメラのキタムラの店舗に将来性をみいだしたからにほかならない。
キタムラは写真撮影スタジオの運営や、スポーツイベントの撮影など、フォトイメージング事業も展開しているが、市場全体は縮小傾向にある。利益率は高いといわれているが、急速な市場縮小には抗えない。
日本フォトイメージング協会の調査によると、デジタルカメラの出荷数は2019年に231万台、2020年に129万台、2021年に115万台、2022年に92万台と大きく減少している。その一方、スマホでの「写真撮影の保存枚数」は一人当たり、2020年に2589枚、2021年に2757枚、2022年に3193枚と急増しており、プリント需要を喚起できるかどうかがポイントになるとみられている。現状ではSNSに投稿するために撮影するものの、プリントはしない人が多い。
キタムラも、スマホからの写真年賀状発注システムのほか、フォトブック作成、出張型撮影ビジネスなどを展開してきたが、プリント需要の拡大が実現できたとはいいがたい。
そこで、力を入れているのが、先に挙げたリユース事業といえる。郵送での買取を行うほか、カメラの深い知識を有する専門家を増やし、AI(人工知能)による査定を導入するなど、DX化も推進している。
スマホの進化などで、急速に縮小した市場はカメラ業界に限らない。カメラのキタムラの取り組みは、多くの企業でも参考になるのではないだろうか。
(文=Business Journal編集部)