ゲームプロデューサーの岩崎啓眞氏はいう。
「一言でいってしまうと『人気が出なかったために終了となった』ということに尽きますが、では、なぜ人気が出なかったのかといえば、ヒーローシューターゲームのジャンルには『オーバーウォッチ 2』と『VALORANT』という2大人気コンテンツがあり、しかも2つとも基本プレイは無料のため、無名の新規タイトルに4000円も出す人がいなかったということです。
加えて、ヒーローシューターゲームとしては多数のタイトルが存在し、すでにあらゆるキャラクターのパターンが使われており、そのなかで新規タイトルは魅力のあるキャラクターをつくっていかなければならないという難しい課題をクリアする必要があるわけですが、CONCORDは既存のものとは違った“今までにないキャラクター”づくりを狙った結果、微妙なキャラクターばかりになってしまった面も影響しているかもしれません」
SIEほどの大手であれば、新規タイトルのリリースにあたっては十分なマーケティング・調査などを行い、一定程度売れるという見込みが立ったうえでリリースに踏み切るものではないのか。
「まず前提としてCONCORDはSIEが買収する前からFirewalk Studiosが開発を進めていたものですが、あくまで推察ですが、リリース前のテストの段階で社内外からの評価を受けて、SIE自身も『おそらく売れないだろう』と考えていたと見受けられます。それは、ほとんど宣伝らしい宣伝を行っていないことからもうかがえます。すでに長い期間とコストをかけてしまったのでリリースしないわけにもいかず、またヒーローシューターゲームは当たると大きいので、とりあえず出してみようという判断だったのではないでしょうか」(岩崎氏)
今回のケースは、非常に厳しい競争状況に置かれているゲーム業界の一面を映しているという。
「現在、AAAタイトルの開発体制は少なくても100人以上になるのが一般的です。開発従事者一人当たりのコストを月100万円だと仮定すると、開発者の人数が100人だと1年で12億円、8年だと96億円。そう考えるとCONCORDの開発費は100億円はかかっているでしょう。これだけ大規模なタイトルがリリースから2週間でサービス終了となるケースは多くはありませんが、たとえばスマートフォン向けゲームでそうしたケースは珍しくなく、スマホ向けタイトルでも開発費が20~30億円に上ることはザラにあります。今のゲームタイトルはどれもクオリティが非常に高いものばかりなので、クオリティが高いだけでは話題にならず、長い時間と多額のコストをかけて開発しても、それなりに売れて利益が出るというケースはほんの一握りです」(岩崎氏)
(文=Business Journal編集部、協力=岩崎啓眞/ゲームプロデューサー、ゲームライター)