だが、AIが人間を教育するという流れに対し、海外を中心に「まるでディストピアだ」といった拒否反応も出ている。AIが人間を管理、監督、指導することに漠然とした不安感を持つ人も多いのかもしれない。
また、海外メディアでは、笑顔を強要する接客そのものを「職場でのハラスメント、特にカスタマーハラスメントを増加させる可能性がある」と指摘するものや、「笑顔はコミュニケーションによって自然に生まれるものであるべき」として、AIによって画一的な笑顔をつくるように指導されることに疑念を示す声もある。
だが、日本ではそもそも“笑顔での柔和な態度”が接客の基本とする考えが根強く、コロナ禍でさえ、マスクを着用した状態での接客に批判する声は絶えなかった。特にイオンでは、新型コロナウイルス感染拡大直前の2019年に、従業員に対して接客時のマスク着用を原則禁止する旨の通達を出したことが大きな話題になった。
それは裏を返せば、従業員の接客態度や笑顔に対して、厳しく注文をつける客が多いことの証左なのではないだろうか。
従業員の笑顔レベルを向上させることで、お客が気持ちよく買い物をできるようになるのであれば、それもひとつのマニュアルのようなものといえるだろう。AIを活用して従業員の接客レベルの底上げを図ることは、海外の人には奇異に映るのかもしれないが、日本的接客においては今後、必須になってくるのかもしれない。
(文=Business Journal編集部)