前述のとおり青山は割安なイメージのある「ザ・スーツカンパニー」も展開しているが、「洋服の青山」との間で顧客の奪い合いが生じるなどのデメリットはないのか。
「ツープライス・スーツストアは他の大手スーツチェーンも運営していますが、基本的には若者層をターゲットにしており、価格帯をシンプルにすることで価格を抑え、都心店舗が多いです。なので『洋服の青山』のような従来型のスーツ店とはややニーズや客層が異なるため、現状では両方の業態を運営しても問題はないでしょう。
ちなみに2プライス・スーツストアは若者ターゲットで、洋服の青山は3世代顧客という話を聞いたことがあります。過去に、おじいさんがお父さんを連れて来店し、そのお父さんが息子を連れて来店。3世代にわたって利用するパターンもあるようです」(磯部氏)
では、青山の今後の課題とは何か。
「既存のスーツ販売チェーンの需要減少の主な理由は、職場環境の変化、ユニクロ・GUなどのファストファッションチェーンによるスーツ販売拡大、スーツのカジュアル化です。現在ではユニクロなどもオーダースーツを手掛けるなかで、青山がそれらとの差別化を図り、どれだけオーダースーツ事業を伸ばしていけるのかがポイントとなってきます。
また、青山は近年、レディース向けに注力していますが、需要を取り込めきれていません。ビジネスファッション市場はメンズ向けよりレディース向けのほうが大きいですが、女性の消費者はビジネス服を選ぶ際にフォーマルさに加えてファッション性など多岐にわたる視点と強いこだわりを持つ傾向があるので、『とりあえず着られればなんでもよい』という人も少なくないメンズ向けと比べて、ビジネスを展開する上では非常に難しい面があります。そのレディース需要をいかに多く取り込んでいけるのかも、今後の青山の成長を大きく左右するでしょう」(磯部氏)
(文=Business Journal編集部、協力=磯部孝/ファッションビジネス・コンサルタント)