また、夜勤もある仕事なので、それが『嫌だ』『諸事情でできない』ということで辞めたり、夜勤が特定の人に集中してしまうケースもあるので、それがつらくて辞めてしまう人もいるでしょう」(大島氏)
介護サービスを提供する法人はどのように採用活動を行っているのか。
「求人サイトやSNS、ハローワーク、人材紹介会社などの利用に加え、辞めた元職員に個別に声をかけるなど努力していますが、なかなか採用しにくい状況になっています。介護施設・拠点は法律で定められた人員基準を満たす必要があり、人が辞めるとその分を補充する必要があるため、採用基準を緩めて以前では採用しなかったような人材まで採用せざるを得ない状況になっています。勤務態度に問題がある職員がいても、辞められると困るので細かく注意できず、その結果、職場の人間関係が悪化したりというようなことも起きています。新人を教育・研修する時間も十分に確保できず、入って数週間で夜勤を任せたりすることもあります。
介護職を志望する若い人が少ないという問題もあります。大学の介護専門学科では定員の4割ほどしか埋まらないことも珍しくなく、そうした学科でも卒業生の大半が介護業界ではない一般企業に就職することは普通にあります。プロ野球のドラフトのように、法人側が学生にオファーするような制度も必要ではないでしょうか」(大島氏)
人材確保のためには、どのような施策が必要なのか。
「高校生が介護施設でインターンシップをする機会を設けるなど、行政が政策的に高校・大学と協力して取り組むことが大切だと感じます。一部の大学医学部で設けられている制度を参考にして、大学の介護専門学科を卒業後に一定期間、その自治体の介護施設で就労した場合は大学在学時に受給した奨学金の返済を免除したり、就労を条件に授業料を免除したりと、経済的な制度の整備も一定の効果が見込めるのではないでしょうか。このほか、社会福祉法人も一般民間企業の資金の流入を誘うような発想も必要だと思います」(大島氏)
(文=Business Journal編集部、協力=大島康雄/星槎道都大学准教授)