NTTドコモの楽天カード取り扱い停止が「楽天Gへの対抗」では絶対にない理由

 また、「他社クレジットカードを利用停止し自社の利益を守る」という発想が出てこないほど、携帯電話事業はひとつ上のフェーズに移行しているという。

「現在、携帯電話事業者は金融と強い結びつきを持ったビジネスを展開しています。代表的なところで言えば、KDDIはauじぶん銀行を、ソフトバンクはPayPay銀行を、楽天Gは楽天銀行を持っています。国内の携帯電話サービスはドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社が提供する体制になっており、業界を寡占する形となっていますが、これ以上携帯市場で収入を伸ばしていくことはほぼ不可能。したがって、各社は携帯電話事業で得たマネーでさらに増収が見込める金融事業へと手を伸ばしているワケです。NTTが携帯電話事業を実質的に独占していたときも銀行設立の構想はあったものの、当時は銀行の圧力が強く、設立に至りませんでした。しかし、現在は事業者が増えたことや、スマホユーザー数の増加によりインフラとしての価値が高まったことが要因となり、今後も携帯電話事業者が金融事業に進出していくことは容易に考えられます。

 通信インフラ事業は、今や人々の生活に欠かせない存在となっています。そのため、支払い手段が限られてくると、ユーザーの負担は増しますし、クレームも予想される。またクレジット決済を許可しないと、コンビニ支払いなどキャッシュでの決済が増加し、未支払いのリスクも出てきて、回収コストも増える可能性があります。加えて、近年の金融事業への参入を考えると、他社クレジットカードの利用停止を戦略的に行うとは考えにくいというわけです」(同)

(取材・文=文月/A4studio)